第5話 冒険者登録
ルベループに到着した俺は早速、冒険者ギルドへ向かうことにした。
場所が分からないので、露天商に場所を尋ねる
「いらっしゃい! 焼き鳥はいかがですかー!」
「あ、じゃあ1本下さい」
「まいどあり!」
「それとすみません、冒険者ギルドってどこにありますか?」
「冒険者ギルドなら、この道を真っ直ぐ行くと噴水のある広場に出るから、そこを右に曲がれば見えてくるはずだよ!」
「ふむふむ、ご丁寧にありがとうございます」
「これぐらい気にしなさんな! ほい、焼き鳥1本おまち!」
「ありがとうございますー」
俺は貰った焼き鳥を食べながら冒険者ギルドに向かう。
「美味しいな……焼き鳥」
すぐに焼き鳥を食べ終えてしまった。
串が1本手元に残る。
捨てたいな……あ、そうだ。
あれを使えば捨てることが出来るかも。
「《アイテムボックス》」
透明な箱が目の前に現れた。
これは自分用のアイテム収納空間だ。
そこに串を放り込む。
よしよし、これでゴミの処理が出来たぞ。
「……なぁ、今あいつ串を消してなかったか?」
「え? 見てねーよそんなもん。気のせいだろ」
「そ、そうかなぁ……」
後ろでそんな声が聞こえてきた。
古代魔法はあんまり人前で使わない方がいいかもしれないな。
一応、古代魔法は
現代魔法と古代魔法、どちらが上か、という優劣は付けられてはいないが、珍しいことには間違いないからね。
うん、使い方には気をつけよう。
◇
冒険者ギルドに到着した。
周りとは少し違う屋敷のような大きな建物だった。
どうやら2階建てのようだ。
扉を開けると、中の雰囲気は酒場と似ていた。
そして、実際に酒を飲んでいる人達も多かった。
もう少しで日が暮れるので、早めに活動を切り上げた人が多いのかもしれない。
冒険者ギルド内の中央には受付があり、その前に人が並んでいる。
冒険者登録はギルドの受付で行うことが出来るので、俺も同じように列に並ぶ。
しばらく待つと、列はどんどんと進んでいき、やっと俺の番に回ってきた。
もうそろそろ日が暮れるから、今日は冒険者登録するぐらいでいいかな。
この後は宿屋を探さないと。
「次の方どうぞー」
受付嬢がそう声をかけてきたときだった。
「た、大変だ!」
バタン、と勢いよく冒険者ギルドの扉が開かれた。
開いた人物は男性で、受付嬢と似たような制服を着ていた。
冒険者ギルドの職員だろう。
「先日、依頼されていたルベループ火山に現れた火竜の討伐クエスト……! あれは火竜じゃなくてS級モンスターのファフニールだったことが判明した!」
ギルド職員がそう言うと、ギルド内はざわめいた。
「なんだって!? ファフニールだと!?」
「どうするんだよ……! この街に攻めてきたらおしまいだぞ……!」
冒険者達は恐怖で怯えている様子だった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 今、該当クエストの受注者を確認したところA級冒険者のセレナさんが単独で引き受けているようです!」
「なんだと!? 今すぐ連れ戻さないと彼女の命が危ない!」
「しかし、セレナさんは仕事が早いことで有名です……! 既にファフニールと対峙している可能性も……」
「くっ……!」
どうやら緊急事態のようだ。
話を聞くところ一刻を争う状況なのは明白。
すぐに彼女を引き止めることが出来れば命は救える……。
……俺が《空間転移》を使えば、ここにいる誰よりも早くセレナという人物に合流する可能性が高い。
ルベループ火山の地理的な場所は理解している。
すぐにでも向かえるはずだ。
俺しか助けられないのなら俺が助けるしかない。
「あ、あの受付はよろしいのですか?」
「ええ。すぐにここから逃げようと思って」
「は、はぁ……」
受付嬢は少し呆れた表情をしていた。
だけど、これでいい。
セレナさんを助けに行くなんて言えば、引き止められるのは間違いないからな。
俺は受付の前から離れ、冒険者ギルドを後にした。
そして路地裏に移動して、《空間転移》を唱えた。
◇
ルベループ火山の麓に転移してきた。
かなりの距離を移動したため、魔力の消費が激しい。
だが、腐ってもアルデハイム家の血筋を引いている俺は常人よりも圧倒的に魔力の量が多い。
おかげでまだ古代魔法は使えそうだ。
さて、セレナさんは一体どこにいるかな。
「《魔力探知》」
周囲の魔力反応を探ってみることにした。
すると、山頂に大きな魔力反応が2つあった。
1つはファフニールで、もう1つは──。
「セレナさんだろうな……」
対峙する前に連れ戻したかったが、それは手遅れのようだ。
こうなったら俺に残された選択肢は二つだ。
・セレナさんを見捨てて、この場から離れる。
・山頂に《空間転移》をして、セレナさんを助ける。
セレナさんを助けるにはファフニールと戦う可能性がある。
S級モンスターは魔物の中でも規格外の強さを誇っていると聞く。
セレナさんを助けようとすれば、俺自身も命を落とすかもしれない。
だけど、答えは考えるまでもなかった。
助けられる命があるなら俺は助けたい。
それにウィンドタイガーを倒したときに思ったんだけど、俺って結構強いみたいだから。
「《空間転移》」
◇
転移先では、長い金髪の少女が地面に剣を刺し、片膝をついていた。
そして、目の前には巨大な竜の姿があった。
あれがファフニールか。
「だ、誰ッ!? どこから来たの!? っていうより、こんなところに来てバカじゃないの!? 早く逃げなさい!」
「えーっと、貴方がセレナさん?」
「そうよ! でもそんな呑気なことを言ってる暇はないの! 目の前の化物が見えないわけ!? 私が時間を稼いであげるから早く逃げなさいよ!」
そう言って、セレナさんは立ち上がろうと力を振り絞った。
「それには及びません。なにせ俺は貴方を助けに来ましたから」
「そんなの出来るわけ──ッ! 危ないっ!」
セレナさんは叫んだ。
ファフニールが俺に向けて、強靭で巨大な前足を振り落としていた。
「《魔力障壁》」
ファフニールの前足は俺の前に展開された結界によって、動きを止めた。
「すご……」
どうやらセレナさんは驚いている様子だった。
人前では古代魔法をあまり使わないようにしようと思った矢先だが、こればっかりは仕方ない。
さて、
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