第19話 村人ざまあ。クレクレと言うだけの奴ら。


「俺にはもう謝ったんだから許せ、だけど自分達は許さない…、同じ他人の家に火を着ける事をしといてそりゃあないよなあ?」


 ふん、と俺は鼻で笑って見せる。

 丁度、串揚げにしているジャガイモが頃合いになったようだ。串を油から引き上げて空いた左手の親指と人差し指をこすり合わせるようにして塩を振ってやる。

 うん。やはり美味い。油で揚げる、こんな単純な調理だが…。師匠によれば、『とうしつ、ししつ、えんぶん。この三つが絡むものは美味いらしい。

 しかし、すごく太りやすいとか。だから、なかなか口にする訳にいかないらしい。師匠も色々大変なのかも知れない。


「ちっ!なら村全部の家が焼け落ちた事は不問にしてやる」


「元々、お前らの放火つけびが自分達に戻っただけだ。俺は何の責任も罪悪感も感じない。分かったらさっさと帰れ」


 俺は串に差したジャガイモを油の中でゆらゆらと動かす。最初は爆発的とも言えるような指先への刺激が今はかなり軽い物になっている。


 見れば揚げているジャガイモの表面から上がっていたあぶくがかなり小さくなっている。そろそろ油から上げるタイミングか…。


「うん、良い色だ」


 揚がり具合を見てみると丁度良かったようだ。鍋のふちでトントンと叩いて余分な油を落とし塩を振ろうとするとまた連中が騒ぎ始めた。



「俺達は家を失って、食うモンも無えんだ!それを寄越せ!」

「そうだ!畑に強化術バフが無いせいで麦が枯れたんだ!お前のせいでこうなったんだ!」

「そのつぐないだ!早くしろ!」


 本当にイヤになるな、コイツらは。


「言ったよな、言葉は正確に使えってな!?ふざけるなっ!俺がいなければこの村で採れるのは芋がせいぜいだ!かろうじてライ麦がわずか!で小麦が採れていた!」


 怒気を込めて言ってやった。


「それになんだ?食い物を寄越せだ?違うだろ、分けて下さい…そう言うべきだろうがっ!それに食う物なら自宅の床下の地面にでも少しは埋めて隠してとってあるんだろう?まずはそれを降り起こせッ!それと同じ村人同士助け合ったらどうだ?互いに食べ物を融通ゆうづうし合うとかなあ!お前らはそれすらせずに来たんだろう!自分の事しか考えずにな!」


「な、なんだと!?俺達が助け合わなかっただと!?」


 村人たがザワついた。


「ああ、そうだ。助け合っていたならこうはなっていない。村の全ての家が燃えるなんてな!助け合っていたら上手くいけば五軒に一軒、悪くても十軒は全焼をまぬがれただろう」


 俺はそこでジャガイモの串揚げを食べた。熱々、ホクホクの食感と素朴なジャガイモの風味と塩味を楽しんでから俺は続けた。


「テメェら全員、自分の事しか考えてねえ!だから自分の家の消火だけしようとした。だから、協力さえしていれば消し止められた小火ボヤすら消し止められずに全焼した。自分の事だけ考えて家の金目の物だけでも運び出そうとした、そんな所だろ!?」


 俺は次のジャガイモ串を油に入れた。


「助け合うこともせず、自分の隠し持ってる食料を使う事もしない。自分は何もせずに俺に何かくれ何かくれと言うだけの奴を相手にすると思うか?金目を払わず飯屋で食おうとするようなものだ。まあ、今からでも何か畑にでも植えたらどうだ。分かったらさっさと帰れ」『


 そう言うと俺はもう用は無いと土地境に『障壁ウォール』の付与魔法エンチャントをかけた。


「目に見えるようにしておいた。俺は明日も朝から畑仕事だ。明日に備えて早くやすむから早く帰れ」


そう言って俺は再び村の奴らに『沈黙』の弱体化術デバフをかけた。


「さあ、早く帰れ。うるさくしても無駄だぞ」


 そう言って俺は村人たちから視線から外すと残っているジャガイモを揚げて食べた。


 無音の世界で村人達が喚いていたが、声が聞こえないので口をパクパクさせているに過ぎない。


 俺は家に入り寝る事にした。








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