第10話 村人たちにざまあ。お前ん家《ち》、燃えてるぞ!?


 村人たちから悪意を持って投げつけられた石。当然俺の方に向かって飛んでくる。


 しかし、俺に命中する事はない。


俺に当たる寸前、飛んできた石は投げられた方向に跳ね返っていった。

 俺は身に着けている護符に様々な効果を付与している。身体能力を向上げたり、今回のように身を守ったりする為に。それが今回投げつけられた石をそのまま跳ね返す『物理反射フィジカルリフレクション』の効果を付与していた。


「ぎゃっ!」

「ぐわっ!」


 次々に悲鳴が上がる。そりゃそうだろう、力一杯に投げつけた石が自分に返ってくるんだから。


「おいおい、ずいぶんと荒っぽい事をしてくれるな。十年ぶりに故郷に帰ってきたな若者に対して…。家に火をつけるわ、石を投げつけるわ…呆れたね」


 俺はわざとらしいため息をつきながら両手を広げて言ってやる。嫌味を込めてやれやれとばかりに。


 すると先刻の村長のように松明を持っている奴が進み出た。


「テメェに石が当たらねえなら、家に火を着けてやらあ!最近は雨も降ってねえし、風も出て来た!よーく燃えるだろうぜえ!」


「おい、やめろ!火を着けるのはやめた方が…」


 俺はそれをやめさせようとするが…。


「ぎゃははっ!誰がやめるかよォォ!大方おおかた、その水の魔法ってのをテメェが出来る訳ねえと思うがよお!まあ、百歩譲ってたまたま出来るにしでめ…だ。何回もは出来ねえんだろ、魔力が尽きてとかよォ!だからもったいぶって使わないフリをしてやがんだ!だから家の火を消すのはもう出来ねえ!終わりだッ!」


 そう言ってその男は俺の家目掛けて松明を投げる。他に何人かが同じように松明を投げる。

 一方で村長をはじめ他の奴らも最初に松明を投げ付けた奴の御高説ごこうせつを聞いてそうだったのかというような表情をしている。

 まあ…その推理、不正解だけど。


 弧を描いて飛んで行った松明は、俺の家に触れる事無くその姿を消した。他の奴らが投げた松明にしても同様だ。


「な、なんで松明がっ!?オ、オマエ、何をした?」


 最初に松明を投げた奴がわめいている。


「さあね?人の家に火をつけようとする奴に教える義理は無いな。…でもまあ、すぐに分かるよ。すぐにね」



「か、火事じゃあっ!」

「火事よおっ!」


 この場にいない年寄りや女の人の声がする。


「あ、あれは俺の家の方だ!」

「ウ、ウチもだッ!」


 燃えにくい材料とは言いにくい木造の家、農村でもあるこの村では燃えやすいわらを編んだものなども多い。

 おまけに最近は乾燥していて風も吹き始めている。火が燃え広がらない理由を探す方が難しい。


「な、何をしたんだ!マリクッ!」


 お、ようやく俺の名を呼ぶ奴が現れたか。無能とかって言う奴しかいなかったから少し新鮮だ。


「さあな。でも悪い事すると天罰が下るって言うだろ?だから悪事がその身に戻ったんだ、俺に石を投げれば投げた奴に、俺の家に火を着けようとすればそいつの家に…。それだけの事だろう?」


 松明を投げつけた奴が悔しがる。


「お、俺は村長に言われただけだ!だから俺の家の火を消しやがれッ!」


 最初に迷推理を披露し松明を投げつけた男…、確か名前はリクソだったか…?自分がやった事を村長のせいにして俺に火を消せと言ってくる。ふざけた野郎だ。


 だが、俺は応じてやる義理は無いがリクソの話に乗ってやる事にした。


「そうだよなぁ、リクソ。焼け落ちちまったら大変だもんなぁ!」


「そ、そうだ。だから水の魔法って奴で早く俺の家の火を…」


 消してくれるのか?とばかりにリクソは顔に喜びの表情を浮かべる。しかし、サービスはここまで。

 現実と言うのを教えてやる。


「悪いな、リクソ!水の魔法が使えるのは一回だけなんだ!」


 満面の笑顔で言ってやる。


「いやー、あの馬鹿村長が俺の家に火を着けたりしてなければすぐさま消火できたのになあっ!」

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