十章「霧介の溜息」
41. ボインボイン枕の話
やれやれ。クリオなんぞに真打ちは務まらん。ここはワシがビシっと締めねばなるまい。彼奴ときたら毎日ぶらぶらしおってからに。ワシが生きておったら、それこそ「アホンダラこのクソガキがぁー何やっとんじゃボケー」と怒鳴り付けてやるのに。
これでは冥王星で安らかに暮らしてはおれんわい。はあぁぁ~。
「おい
「お、
「はっはっは、まあ若いうちは色々やってみるのも好いからなあ」
「いやあ彼奴は根気がなくてな。まったく誰に似たのか」
「はははは。処で
「ああまあ悪くはない。じゃがまさか死後の世界が冥王星にあるとは思いもよらんかったわい」
「吾輩も十三回忌に娘から聞いて驚いた。小説の
「そうかあ。
素晴らしいお嬢さんじゃったのになあ……あれは本当に可哀想で残念なことじゃったわい。
「処で霧介。冥王星でも碁は打っておるのか?」
「おおおお、やっとるとも」
「そうか、それは結構結構。さぞかし級を上げたのであろうな」
「いやあ、
「はっはっは吾輩は六級だ。どうだ」
「へ、あっそうかそうか、さすがじゃなあ。あはは、はは」
ま負けた。二級も上だとは。以前は八級同士で互角じゃったのに。とほほほ。
「それで酒の方はどうだ?」
「いやあ医者から止められてなあ。はは、あはは」
「ふむ。それはいかんなあ」
「ああ。それがな、冥王星では金がなければ、医療費なんぞを星が全額負担してくれるんじゃ。しかしなあ、死んでからその分を働いて返さにゃあならん」
「何だとそうなのか!? それは初耳だ。詳しく聞かせろ。材料になりそうだ」
さすがは小説家。きっと普段からいろいろと話題を集めとるのじゃろう。
ワシはこの後、この幼なじみの飛高にいろいろ話してやった。
冥王星には国の区別がない。星が一つの国のようなものじゃ。冥王星で死ぬと、借金があったり悪事を働いた者は、海王星に行くこととなる。そこでは肉体労働が待っておるそうじゃ。まるで地獄とのこと。
その労働期間が終わると天王星に行ける。天王星には、おっぱいのおっきい美女や、おっぱいのちっちゃい美少女が大勢おるそうで、ボインボイン枕で寝ることもできるらしい。うひょひょひょ。
もちろん最初から天王星に行ける者もおるそうじゃ。ワシも是非そうなりたいわい。
で、天王星に飽きたら希望者は地球に戻れるらしい。じゃがどんな姿で戻るかは誰も知らんそうじゃ。ワシは戻らんぞ。ぢぇったい、ボインボイン枕を離してなるもんか。
とまあざっとこんな話じゃった。じゃがワシのこんな話で、はたして小説に使えるんじゃろうか?
「あなた、ボインボイン枕というのはなんのことですか?」
「ひょ!? ほぉへぇ。お前もきておったか」
「さあ、ちゃんと説明してください。あなた」
「いや、まあ、その……」
「はははは。お
「
「まあ吾輩は元気なのだが、実は家内が認知症になりましてな。少し話し相手になってやってくれませんか」
「まあそうだったんですか、お
ワシの妻の
「ふー、飛高が話を逸らしてくれたんで、なんとか助かったわい。じゃが借りができてしまったなあ」
「ふむ。お前が先に天王星に行ったら、おっぱいのちっちゃい美少女を何人か確保しておいてくれれば好い。それで貸し借りなしにしよう。ふぉふぉふぉ」
「だから嘘を言ってワシの窮地を救ったのか。相変わらず腹がくろぐろしておるなあ、お前は」
「お前こそ、頭がつるぴかしておるではないか」
「あははは、言ったなこの野郎!」
「はははは、云ったわこの野郎!」
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