第9話 襲撃
確実に出口へ向かっていると思うが、ソフィアの進みが遅いので、さほど進んだようには思えない。まだ出口までは遠いのだろうか。
怪物のものと思われる唸り声が近づいてきているようにも思える。何とか、なるべく早く坑道から脱出しなくては。
これまで通り、クリーガーは剣を抜いたまま前を先を歩く。その後をソフィアが魔術で炎を灯しながら続く。
しばらく進むとクリーガーが歩みを止め、ソフィアを制止した。
「待て」
クリーガーは少し先を進んで様子を確認する。ソフィアはその場で、しばらく待つ。クリーガーは戻って来ると言った。
「この先にどうやら怪物が複数いるようだ。しかし、君を守りながら戦うのは難しいと思う。少し戻って別の道を行こう」
ソフィアは言われるままに後ろを振り返り来た坑道を戻り始めた。クリーガーは励ますように声を掛ける。
「出口はさほど遠くないだろう。もう一頑張りだ」
「はい」
ソフィアは壁に手をつきながらゆっくりと歩いていく。
そして、クリーガーは指示を出し、適当なところで怪物が掘ったと思われる横穴へ入るように言った。
「もう、坑道か怪物の穴かどうかは構わない。何とか出口を目指そう」
クリーガーはそう言うと横穴に入って行った。
ソフィアもクリーガーの言葉を信じて横穴へ入る。怪物の堀った穴は少し小さいため頭をかがめなければならない。
かなり進んだだろうか、再び坑道に出ることが出来た。
「休もうか」
クリーガーはソフィアを気遣って提案した。
「はい」
ソフィアは息苦しそうに呼吸をしながらその場に座り込む。クリーガーはその隣に座る。
ソフィアは休むため、手のひらの炎も消した。魔術を使い続ける集中力もそろそろ限界だ。
しかし、気のせいか先ほどより少し呼吸がしやすくなったような気がした。出口が近いのだろうか。
二人とも無言でその場で休む。漆黒の闇と静寂があたりを包む。しかし、怪物の唸り声が聞こえることはなかった。怪物からは離れることが出来たのだろうか。どうやらクリーガーの言う通り進んだ道が正しかったようだ。
しばらく休んだ後、クリーガーが声を掛けて来た。
「ソフィア、もう一度風の方向を確かめてみなさい」
ソフィアは再び指をなめて掲げた。
「こっちです」
「暗闇ではどっちかわからんな」
「すみません…、私たちが進んできた穴の左方向です」
「わかった」
ソフィアが左方向を見るとはるか先に微かに灯りが見えた。それは揺らいでいるのでおそらく松明の灯りだ。坑道は当面は真っ直ぐのようだ。そして、火のついている松明があるということは落盤の救出作業をしている坑夫たちが居るのだろう。彼らに会うことができれば出口まではそう遠くはない。
クリーガーは立ち上がった。ソフィアも立ち上がろうとするが、ふらついて再び座り込んでしまった。
「大丈夫か?」
「もう少し休ませてください」
「いいだろう」
クリーガーも再びその場に座った。
それから、だいぶ時間が経ったであろうか、坑道の奥の方から例の怪物の唸り声が聞こえて来た。それも複数だ。そして少しずつ近づいてきているようにも聞こえる。
「まずいな」
クリーガーはそう言って立ち上がり剣を抜いた。
「ソフィア、あの松明の光は見えるな」
「はい」
「何とかあそこまで進めるか?」
「やってみます」
ソフィアはふらつきながら立ち上がった。今回、多めに休んだせいで何とか歩けそうだ。ゆっくりと歩きだした。
ソフィアは振り返ってクリーガーの様子を見た。
それに気が付いてクリーガーは言う。
「私に構わず行きなさい。怪物はここで私が食い止める」
「しかし…」
「私なら大丈夫だ。それに君が近くにいては十分に戦えない」
「わかりました」
ソフィアはそう言うと再び松明の光の方へ向かって歩き出した。
ソフィアは何とか進んで、もう少しで松明のあるところまでやってきた。そこで、坑道の奥で怪物の一層大きな唸り声とクリーガーの叫ぶ声が聞こえた。
ソフィアは思わずその場に崩れる様に倒れ気を失った。倒れる直前、すぐ近くに複数の人の声が聞こえた。
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