フィリピンの話①
先日は、さっそく短編読んでくださりありがとうございます。
『パロルの街』https://kakuyomu.jp/works/16816700428931771648
このお話は、昔書いた短編小説の登場人物のその後を書いています。諸事情あって昔書いたものはお見せできないのですが(登場人物の詳細はかなりぼやかして書いたので、読者さまは読みにくかったと思います。ごめんなさい!)、どうしてもこの二人に会いたくて書いちゃいました。
しかし、一昨日思いついて調べて書いた突貫工事ですので、推敲も何も無い。特にフィリピンなんて知らないよ! という人にはちっとも親切でない風景描写の数々。フィリピンみんな知らないよね私も知らん!!!()
いい家が終わったあとに書き直……せるとは限らないので、できる限りここで、私が知っていることだけ補足しようと思います(いやちゃんと書き直せよ)。とても長くなりますが、登場人物がどうしてそう思うのか、その下地的なものが共有出来たら幸いです。
フィリピンは大きくわけて、ルソン島、ビザヤ諸島、ミンダナオ島に分けられます。
ルソン島は、首都マニラがある大きな島です(物語の舞台はマニラです)。
ビザヤ諸島はセブ島など、主にリゾート場所として取り上げられる場所が多いです。短期留学の場所としても最近取り上げれるようになりました。
ミンダナオ島は、フィリピンの代表=自然! The農民的で漁業的な東南アジア人! みたいなイメージでよくテレビのドキュメンタリーで取り上げられます。身も蓋もないように言えば「貧しい場所」「危険区域」として紹介されます。多分このイメージ強い人も少なくないんじゃないかなあ……。
なんでミンダナオ島がそんなイメージで語られるか。私が思うに、恐らく理由は二つ。
一つは、イスラム教を国教とする東南アジアでも、フィリピンは珍しくカトリック国なのですが、その中にもムスリムが5%ほどいると言われています。そのムスリムの多くが、ミンダナオ島に住む人、もしくは、ミンダナオ島出身なのです。
昔、フィリピンは多神教とムスリムが共存、というか共立した島々でした(何故ならフィリピンは多民族。宗教組織としてまとまっているわけじゃない)。そこにスペイン艦隊引き連れたマゼランがやって来たからさあ大変。
(この辺りは『素々子さんのカクヨムブログ』にもhttps://kakuyomu.jp/works/16816452219469998665/episodes/16816452219580644977 )
そんな訳で、フィリピンはスペインに侵略され、国教はカトリックになりました。多神教はカトリックに吸収される形です。
ただ、その中でも強く生き残ったムスリムの人達がいます。それがミンダナオ島にいる人々。スペインの侵攻に負けず、戦い続けた人々です。
同じフィリピンでも、カトリックとムスリムの溝は深い。ミンダナオ島最大の都市と呼ばれるダバオとか、スペイン文化が強く残る街サンボアンガとかでは、現在もカトリックとムスリムの抗争が起きます。フィリピンは聖母マリア崇敬が盛んで、奇跡を起こしたとして有名になったマリア像が多いのですが、その奇跡として語られる一つは、「攻撃してくるムスリムを撃退した」と言う話です。あとフィリピンでめでたい食べ物と言えばレチョン(子豚の丸焼き)なのですが、ムスリムは豚食べちゃいけなかったりと、慣習による違いもあります。
仕事先を求めてマニラにやって来た人の中には、ミンダナオ島出身というだけで差別される人も少なくありません。そもそも教会に属していないというのは、それだけで地域組織と関われないんです(親がカトリックじゃないと入れない学校もある)。
同時に、マニラの経済を握っているのは、ミンダナオ島出身のカトリックだったりします。極端に貧しい者がいるということは、同時に極端に富める者がいるということ。そこに宗教が絡むからまた複雑なんだなあ……。
もう一つは、こっちがどっちかというと本命。冷戦時代、共産主義の人と現地のムスリムの人々が手を組んで武装していたから。
スペインから独立した後、フィリピンはアメリカの植民地支配を受けました(その時代の真ん中に、日本が植民地支配していました)。
日本からフィリピンを奪還したアメリカは、第二次世界大戦が終わったあとはソ連と戦うことになります。しかし大国同士でぶつかるとやべぇなあ、ということで、代理戦争を世界各国でやりました。その中の一つがフィリピンです。
で、その中でアメリカと手を組んでやべぇことやったのが、フェルディナンド・マルコスっていう大統領。
当時のフィリピンって言うのは、東南アジアの中でもすっごい進歩を遂げていました。でもそれと同時に、貧富の差もやばかったんです。そこでマルコスは、コメの自給率を上げて、道路・学校・病院などのインフラ整備などを行いました。ーーここまではいいって思うじゃん?
ところがこれは、地方の労働者を都市に流入させることになってしまいます。ここで地方格差、そして急激な人の集まりによって高インフレと高失業率をたたき出してしまった。で、ミンダナオ島の農民は、労働者を重んじる共産党と手を組み始めたわけです。
相次ぐ爆弾テロや抗争、その制圧。その中でガンガンに開かれる都市と地方の格差。貧富の差。そこでマルコスがやったのは、ーー富の独占でした。
貧しい人達に分け与えるためにという名分で、中国系から財産を奪った後、その財産はマルコス一族の手によって独占されます。妻のイメルダ夫人は、3000足の靴を持っていたとか言う話で有名だったり。
で、これを批難した人達を、「共産主義の扇動者」としてマルコスは逮捕しました。昔からいるカトリック教会だろうと外国から来た司祭だろうと批難するやつは共産主義者ってことにして、ガンッガン逮捕していきます。
そんな中、マルコスの独裁政治を止めようとする人々が現れるのですがーーちょっと長くなるので今回はここまで。
フィリピンという文化は、関係が色々難しいところで成り立っていると理解していただけたら幸いです。今度はその上で成り立つ明るくて多様性あふれる文化の話をば。
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