第3話 ラッチとリリカの友情 (前編)
「おはよう。馬君!」
「おはようラッチ。」
二人は顔を合わせて挨拶を交わした。ラッチの機嫌はいつもよりご機嫌。昨日はなんと初恋の人に告白をされたからだ。 (あの馬君の照れた表情!可愛かったなぁ・・・)とニヤニヤしていたら正面から誰かとぶつかった。「うわっ!」ラッチに勢いよくぶつかってきたのはこちらを睨んできた 白奈 だった。
「なにするの。・・・白奈ちゃん!」 「ちょっとぶつかっただけだけど?なにが悪いの?」ラッチにはもうお見通しだが、白奈は昨日のことを気味悪く思い、
ラッチに八つ当たりしていた。ラッチは白奈をまじまじと見つめながら冷静に言う。
「そうやって私に怒りをぶつけても変わらないよ。」
白奈はラッチにそう言われたことが悔しくなり、図星になる。
「今だけ幸せになれた気なんでしょうね。」
「そうよ。」
そうラッチは一言を残し、静かに立ち去って行った。
「ラッチィ~!おっはよーっ!」ラッチは驚いた。
(あっそうか・・・。リリカちゃんにはまだ伝えてなかったんだ。)
それでさーと話すリリカにラッチは大きい声で「ねえ!」と断ち切る。「なにっ!?」リリカは跳ね上がる。「私の話、聞いてくれる?大休みでも良いから・・・。」(何とでも言わないとっ・・・。リリカちゃんに悪く思われちゃう。そんなことは嫌だ!!)
「うん。大休みはクラブの大会練習で忙しいから。昼休みに聞くよ。」
「じゃあよろしくね!」
週一回の書写の授業は全員にとって貴重であり、雄一のトップを決める授業でもあった。
その中でラッチは今回もみんなの見本にされ、
学校の書写作品展で最優秀賞を飾った。
「はい。皆さん今日は 日進月歩 を書きますよ。四文字で大変だと思いますがコツを掴めば皆さんはできますよ!今回も先生に頼らず皆さんの自力で
書いてくださいね。」
先生の言葉から皆の熱気と対抗心がメラメラ燃える。声は出さないが隠せる程の無い自信が生徒の心を燃やしていた。
(わぁ…皆の自信がすごい!!私も頑張らないとっ!)
ラッチは無邪気だからか純粋だからかなのが、自分を高く上げることはしない。誰かを応援して前を向ける人だ。自分が学校一お金持ちだということを自覚しているので、自慢や他人を嘲笑うことは必ずしない。
馬と付き合っている事も・・・。
ー昼休みー
「で、ラッチ、聞きたいことって?」
「えっと屋上で話してもいいかな?」
「うん、いこっか。」
リリカは小さく首をかしげたが、頷いてくれた。
二人は早速屋上に向かい、風の強い外に出た。
今にも、ラッチの小さい体が吹き飛ばされそうだ。
「あのねリリカちゃん・・・。私っ・・・!!」
風の音にまぎれこまないようラッチは必死に叫ぶ。
「馬君と付き合っていて馬君のことが好きなの!」
心から伝えたかった。
ーしかしー
「ラッチ、どうゆうこと?」
ふいにリリカの声が冷たくなる。ラッチがびっくりして顔を上げると、そこには鋭く冷たい目をしたリリカが立っていた。さっきと違う雰囲気を出しており、ラッチを憎らしく見ている。
「リ、リリカちゃん・・・?」
「ウチも女子ほとんどが馬君のことが好きだったのに。ウチらを裏切ったの?噂のときもコソコソしやがってさぁ。ラッチらしくないよ。」
「う、噂の後に付き合ったんだよ!キスしちゃったのも噂の前で・・・。」
ラッチの言いかけた言葉にリリカは目を見開く。
「キス!!何それ!聞いてないんだけど!」
まさか、とリリカが言う。
「あたしにずっと隠してたの!?」
「か、隠そうと思ったわけじゃないよ!た、ただ言い忘れちゃって・・・・。」
(もう何でこうなるの!?確かに隠してるように見せた私も悪いけど、
リリカちゃんが納得しないのもダメでしょ!)
「ラッチはホントに子供ね。」
ラッチから怒りが湧き上がる。
リリカなら分かってくれると思っていた。
なぜか。
だってリリカはラッチの大切な親友だから。
ラッチのことを分かってくれているから。
なのに。
その期待は打ち破られた。
「リリカちゃんのバカ!!」
ラッチが涙ながらに叫ぶとすぐに屋上から出ていった。
階段を下りるたびに、はぁはぁと息を殺す。別に走ったわけじゃないのに。涙が頬を伝う。
苦しい、悲しい、寂しい・・・!
プリンセス風のベッドに寝転がり、ハングル文字辞典の本に顔を突っ込む。
ラッチのサラサラな茶髪がフリルの枕にかかる。
「はぁ~・・・・。初めてリリカちゃんと喧嘩しちゃったな。」
(あんなに私たち仲良しだったのに・・・・。馬君のことが好きだって言わなければ良かった・・・・。リリカちゃんにも秘密にした方が良かったのかな。)
だが、そうにはいかないのだ。
本当のことを言ってなかったらもっと怪しまれてしまう。
そしてリリカとは縁を切らなければいかなくなってしまう。
でも今日は、本当のことを言った。
そして喧嘩した。
「最悪っ・・・。」
明日、顔を合わせたくない。
あっちもそう思っているなら全然良い。
私は無視しようか。
お互い 変な 空気に ならないように
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