第23話

 あれからしばらくたち、ついにネコランドへ行く日となった。

 結局平井さんの書いてくれた大量の予定はすべて白紙となり、今日の気分で行動することになった。

 流石に朝5時に起きるのは少し大変だったけれど……。


 最近のことを思い出していると、駅ビルが見えてきた。

 そういえば、あの駅のロータリーから俺の”人生”は始まったんだよなぁ……。

 そう思うと、なんだか考え深いものがあった。


 そんなことを思いながら信号待ちをしていると、聞き覚えたような声が聞こえてきた。


「もしかして川崎君じゃないですかぁ?」


「もしかして……」


 松がいなく平井さんの声だった。

 どこにいるのだろう……?

 そう思いながら周りを見たのだけれど、横断歩道の向こう川に彼女がいた。


 しかも、彼女は両手をものすごく大きく振ってきた。

 もしかして、深夜テンションのままなのか……?

 いや、もしかしたらお嬢様キャラは演技だった可能性もあるのか……?!


 いろいろな不安や心配が襲ってきたけれど、それとほぼ同時に信号が青色に変わったので、とりあえず急いで彼女のいるところまで向かった。

 早くしないと平井さんのヤバイ行動がいろいろな人に見られてしまう!


「なあ平井さん、何でそんなにテンション高いんだ?」


「川崎君何言ってるの~? いつも通りじゃない!」


 そうなのだろうか?

 まあ、どっちでもかわいいから別にいいかな。





「ここがネコランドですか~、あのお城とかものすごく大きいですね~」


 平井さんは移動中の電車の中でずっと寝ていた。

 そして駅に着くころにはすっかりいつもの平井さんに戻っていた。

 やっぱりあれはハイテンションだったんだ……


「なあ、今朝のこととか覚えてる?」


「今朝ですか? 夜更かししていたら何だかハッピーだったのは覚えているんですけど……何かご迷惑を……?!」


「あ、いや違うんだ。ちょっとだけいつもと違う雰囲気だったから。そんなことより早く中に入ろうよ!」


 今日の朝のことを思い出そうとしている平井さんの腕を引っ張り、駆け足で入場ゲートまで言った。

 思い出されたらいろいろ面倒なことになってしまう!




「はい、中学生二人ですね。あっ……楽しんでくださいね~」


 平井さんがスタッフさんにチケットを渡すと、スタッフさんは何かを察したかのように笑顔になって送ってくれた。

 これが夢の国なのか……?


 何でそんなことをされたのかわかっていないので困っていると、彼女が話しかけてきた。


「私あの大きなお城に行ってみたいです!」


 そう言いながら中央にそびえたつ青色に染まった城を指さした。

 あれはたしか……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る