第9話

「……、寝てたのか」

どうやら俺は、作業をしている途中で寝落ちしてしまっていたようだ。

「やはり、下界に降りると神も睡眠欲求が出てくるのか……」

忘れないようにしないとな。

そうじゃないと、眠い時に無理をしてしまいそうで怖い。

「でも、まだ桜が起きていないのは少し驚きだな……」

俺は、起き上がり、寝室の扉の前に立った。

「着替え中だったり、着物がはだけていたらどうしよう……、なんか、怖いからちゃんとノックしよう!!」

俺は扉をコンコンっとノックした。

「どうぞ〜」という声が聞こえたため、俺は扉を開けた。

「桜、起きてい、た、のか?」

そこには、桜が立っていた。

立っていたのだが……

「着てみたんですが、似合いますか?」

「なぁ……、毎朝俺の朝食作ってくれよ」

「えっ!?」

桜は、キョトンとして、そして、状況を理解したのか、顔を赤く染めていた。

可愛すぎる。

可愛すぎて結婚して、一生守ってあげたい。

おっと、本音が漏れちまった。

「な、な、な、何を言ってるんですか!!私たちは、主従関係なんですよっ!!」

「いや、すまない。つい似合っていて本音が漏れちまった。だけど、本当に違和感無いし、サイズもピッタリだな。うん、上手く作れているな、さすがだな俺」

「むぅ、暁さんはやっぱり意地悪です……」

「何を根拠に!?」

「たまには素直に褒めて欲しいんですよ、私だって女の子なんですから……」

拗ねてる顔も可愛いとか、この子最高すぎるだろっ!!

まあ、それはともかく

「似合ってる。めちゃくちゃ可愛いよ、桜」

「えへへ、ありがとうございます、暁さん。お祭りが楽しみになってきました。」

「そうだな。まあ、俺はこの格好のまま行くんだがな」

「どうしてですかっ!!」

「俺の分を作る時間と、俺はこの格好以外は出来ないらしい」

「そうなんですね、見てみたかったな……」

「いつか出来るようになったら、見せてやるよ」

「楽しみにしてますねっ!!」

「あぁ、そうしてくれ」

こんな他愛のない会話ほど、楽しくて仕方ないものは無い事を、ココ最近の俺は学んでいるようだ。

「ところで、今日のお祭りって何のために行われるの?」

「それについては、私がお教えします」

「何故ノックもせずに入ってきているんだよ、ソフィア!!」

「申し訳ありません、祭りの為に一日開けていただいたお礼をと思いまして、部屋に入ってみれば、桜さんのこの世界の衣服姿を拝謁することが出来たのですから、私としては、もう結構満足です」

「何1人で納得してるんだよ」

「それで、祭りの内容を教えてください」

「そうでしたね、この国の祭り、建国祭は、かつてこの国ができた時に戦死した兵士、この1年間で亡くなった人々の魂を天へ送るための祭りなんです。なので、私たちは、この祭りを鎮魂祭とも呼んでいます」

なるほど、この世界にも、そういうものがあるのだな

「祭りの最後に、炎魔法のライトを空に飛ばすんです。この景色はとても絶景なんですよ」

「そうなんですね、それは楽しみですね。ねぇ、暁さん」

「そうだな、とてもこの祭りについてわかった。ありがとな、ソフィア」

「いえいえ、お祭り、楽しんでくださいませ」

そう言うと、ソフィアは去って行った。

「桜、祭り楽しもうな‼︎」

「はいっ‼︎」



















第9話 ひと時の幸せ  ー[完]ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る