ノンダクレ・クレーオ

目映いばかりに照らされた金色こんじきの髪の男、ノンダクレ・クレーオは朝から飲み屋でジョッキ片手に一気飲みするような、無類の酒好きである。


そんな彼は今日も、おてんとさんに照らされながらジョッキを傍らに置き、女友達と他愛ない話をしていた。


「えー、うそ。もう別れたの!?」


「んー、そうなの…彼との…あれがね」


「エッチの相性?」


「そう、こういっちゃ何なんだけど…その…」


耳元を寄せて聞いてみる


「ちっちゃくて…」


「ぶはぁはは。ちっちゃかったか、そりゃ災難」


「笑い事じゃないし、重大な問題なんだから」


「え、別れたんじゃなかったの?」


「未練はあるの。だから、セフレ関係からもう一度始めようかなって」


「セフレねー。不毛よ不毛。だっていくら大きくしたからってちっちゃいもんはちっちゃいんだから、その人の事をいくら好きかろうが満足はできないのよ」


「わかってるけど…それでも一緒に居たいっていうか、未練たらたらだって思うかもだけれど、惚れてたのよ」


「はぁ。そんなに好きなら、なんで別れちゃったかねー」


「求め過ぎたら、拒否られて、後は売り言葉に買い言葉で…」


「あんたのその性欲はいいけどね、相手が毎回同じ熱量で答えてくれるとは限らないわけじゃない、人と一緒になるってことは互いに歩み寄ってこそ成立すること、だからあんたも不満ばかりじゃなくて相手の気持ちも考えるべきなのよ」


「相手の、気持ちね。考えてないわけじゃないのよ、ただ遊び相手って楽なわけだし、それでも言いかなって思い始めちゃって」


「私は別れたいならキッパリ別れるけどね、中途半端に関係続けてても互いにしんどいだけじゃない」


「もし数日前に別れた彼氏からより戻さないって言われたら?」


「OKしちゃうね…」


「キッパリ別れるってのはどこ行ったのよ」


「ははは、まぁ時と場合にも寄るけどねー」


ノンダクレ・クレーオは溜め息をつく


「別れるって決めたんだしね、これ以上しつこく粘着してもしんどいだけってのはその通りだわ、エステでも行って一旦落ち着こうかなぁ」


「そういえばノンちゃん、もう少しで期限切れるんじゃないの?」


「私は腐敗しかけの食品じゃないのよ、まったく」


「不憫だよねー、勇者って、制約のせいで月に2日か3日しか町に帰れないなんて」


「それももう切れそうだけどね、はぁもう出ていかないと思うと憂鬱だわ」


「まぁ、冒険者続けてればまた会うこともあるかもだし、その時はまたよろしくねー」


「ええ、その時には魔王倒してる予定だし、酒でも奢ってあげるわ」


「期待しとく」


机には無数のビール瓶、店は昼時になり多くのサラリーマンが押し寄せてきている、私達は伝票を持って会計を済ませ、何気ない会話を終えるとその日は解散となった。


女友達と別れ、冒険に出かける前に武器を新調しようと鍛冶屋の方向に歩を進める


「まだ明るいわね」


街中の風景はいつもと変わらないけれども、日差しがいつもよりも熱い気がする、ノンダクレは空を見上げる。


「うぁああああああああああ」


「え?」


上を見上げ。驚愕の状況に目を見開く。裸の男の股間が上から迫っていたのだ。


私は驚いて、拳を握りしめ、上から迫ったそれに向かって振り上げた。


『きゃあああああああああああ』


『うぇえええええええええええ』


ピカーンと光る玉の感触と共に玉の中心点に光が伸びる。


私はその光に包まれ、やがて意識を失った。

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