第40夜 それ (約1650字)

変な夢を見た。


  ・・・・


そこで目が覚めた。


変な夢を見たのは確かだが、内容が思い出せなかった。

何か、嫌なことをしていたような気がする・・・。


時計を見ると、まだ、真夜中だった。

私は、もう一度、眠りにつくことにした。


変な夢を見た。


  ・・・・


そこで目が覚めた。


再び、変な夢を見た・・・だが、どうしても内容が思い出せない。

体が、妙に汗ばんでいた。


時計を見ると、さきほど眠りについてから、一時間もたっていない。

私は目をつむり、再び、眠りについた。


変な夢を見た。


  ・・・・


  女性が、私に向かって何かを叫んでいる。

  私は、その女性のもとに駆けより・・・。


  ・・・・  


そこで目が覚めた。


クソっ! ひどい夢だ・・・と、私は思った。

全部覚えているわけではない。

ただ、目が覚める直前、女性に対し、何かをしたような・・・そんな気がしていた。さっきよりも、寝汗がひどかった。動悸が早まっていた。


時計を見ると、先ほど眠りについてから、三十分もたっていない・・・。

引き続き、眠れるだろうか? 

疑問に思いながら、目をつむる。

心配する必要は、まったくなかった・・・つむった途端、眠りについた。


変な夢を見た。


  私は、どこかの部屋にいるようだった。

  部屋の中は、電気がついておらず、薄暗い。

  薄闇の中、目を凝らすと、ペンダントライトがぶら下がっていたので、その紐を

 一回、引っ張る。チッチッチという音とともに、部屋の中が照らされた。


  ここは、和室のようだ。布団が敷いてあったが、それ以外は、特になかった。

  明かりを消し、窓から外を眺めてみる。

  どうやら、この部屋は、二階にあるようだ。ここは、一軒家なのだろうか?


  部屋を出ると、狭い廊下。

  すぐ右手に部屋があり、左手には、部屋と階段があった。

  私は、右手の部屋に向かうことにした。


  部屋の扉をそっと、開け、中をのぞく。暗かったが、洋室だとわかった。

  中に入ってみると、机とベッドが見えた。この部屋は、シーリングライトだ。

  壁に指を這わせ、スイッチを探す・・・見つけた・・・スイッチを入れる。


  ベッドの上に・・・が、横たわっていた。

  ものすごい形相で、仰向けに倒れているといったほうが、よかった。

  目を見開き、口を大きく開けた状態で、は固まっていた・・・。

  首には、絞められたようなあとが、くっきりと残っている。


  私は、なぜか・・・冷静だった。

  特に驚きもせず、部屋を出ると、階段そばの部屋をのぞく。


  ここも、洋室のようだった。この部屋も暗い。

  先ほどの部屋同様、シーリングライトだったので、壁を探り、電気をつける。


  が・・・床に倒れていた・・・伏せた格好で倒れている。

  私は、そのそばにしゃがみ込むと、をオモテ側にひっくり返した。

  は、重々しく、ごろりと仰向けになった。

  も、やはり固まっていた。首には、絞められたあとがあった。


  私は、なぜか・・・冷静だった。

  とりあえず、この部屋を後にし、階段を下りることにした。


  階段を下りると、一つの部屋から、明かりが漏れていた。

  誰かの話し声と音楽のようなものも聞こえてくる。

  私は、その部屋に向かい、中をのぞいた。


  ここは、リビングのようだった。ソファとテレビが目についた。

  先ほど聞こえた話し声と音楽は、テレビだったようだ。

  私はこの部屋に入り、あたりを見回した。

  

  ・・・が、窓際にあった。


  大きな窓に、もたれるように、座った姿勢で固まっていた。

  私は近づき、をよく見た。

  首には、絞められたあとがあった。

  

  そして、には・・・見覚えがあった。

  あの夢の女性・・・私から逃げたから・・・追いかけて・・・そして・・・。


  両腕に・・・痛みが走った。

  どうして・・・今まで、気づかなかったのだろう?

  

  私の両腕には・・・無数のかきむしられた傷があった。


そこで目が覚めた。


とても、嫌な気分だった。

私は、重い気持ちでテレビをつけ、朝食を取り始めた。

その時、あるニュースが流れた・・・。


「殺人事件です。本日未明、○○市の住宅地に在住の一家三人が、何者かにより、

 殺害される事件が発生しました・・・」

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