第14夜 Q (約1800字)

変な夢を見た。


  私の目の前に、大きなテレビが置いてあった。

  テレビの前の椅子に腰かけ、近くにあったリモコンで、テレビをつける。

  なにやら教養番組が映し出される。・・・ドキュメンタリーのようだ。

  私は、しばらく、その番組を見ることにした。


・・・・


  (空撮のように、荒れ果てた大地が映し出される。

   ところどころに、文明を感じさせる廃墟が見られる。)


  (ナレーション)

   人類は、愚かな選択をしました・・・。

   核ミサイルを撃ち合い、地球は・・・放射能で汚染されました。

   

   あれから・・・


  (「あれから・・・XX年後の地球」と表示される。)


  (ナレーション)

   XX年が経ちました。

   

   皆さんは、人類は、核戦争で滅亡したのではないかとお思いでしょう。

   しかし、人類は、生き残りました。一部の人間のみでしたが・・・。

   生き残ったのは、科学者たちでした。


  (地球の断面図のイメージが表示される。)


  (ナレーション)

   彼らは、あの時、超高性能AI『QooDaranクーダラン』が設置されている地下500mの

   研究所にいたため、助かったのです。


  (研究所とAI『QooDaran』のイメージ図が映し出される。その規模はかなりの

   もののようだ。東京ドーム1000個分との表記がある・・・。)


  (ナレーション)

   研究所と『QooDaran』のエネルギーは、研究所のさらに地下30mにある原子

   炉から供給されています。この研究所では、様々な研究がおこなわれていたた

   め、様々な生活必需品の作成は可能でした。


   彼らは、『QooDaran』と協議しました。

   これからの、人類存続のための最適解を・・・見出そうとしたのです。


  (黒い人型のものが、たくさん地表をうごめいている映像が映し出される。

   一人が先導し、百人以上の者たちが隊列を組み、その後を歩いていく。)


  (ナレーション)

   『QooDaran』との協議により、彼らは、進化を選択しました。

   人間の遺伝子とほかの遺伝子を組み合わせることにより、放射能にも対応でき    

   る肉体を手に入れることにしたのです。

   『QooDaran』の計算により、それは、成功しました。

   残りわずかだった人類は、今では、混合種ハイブリッドとなり、どんどん繁殖しているの

   です。


  (ここで、混合種ハイブリッドについての説明画面が映し出される。)

    

  (ナレーション)

   彼らは、黒い外殻により、その身を放射能から守れるようになりました。

   しかし、XX年後の現在いまでも、放射能レベルが高いため、長時間、地表にいる

   ことはできません。

   そのため、いまだ、生活拠点は、研究所・・・以後、コロニーと呼びま

   す・・・なのです。


   彼らの社会は、階級社会になりました。

   ただし、階級による差別はありません。

   階級は、ただ、それぞれの役割を分担するために存在するのです。

 

   まず、ワーカー。

   おもに、地表の資源回収、作物の栽培、武器・防具・日用品の製作、コロニー

   の拡張などを行います。この階級が、一番多く占めています。


   次に、ウォーカー。

   資源の探索を単独で行います。資源を見つけ次第、コロニーに戻り、ワーカー

   を伴い、資源を回収するのが役割です。


   最後に、ウォリアー。

   外敵の駆除を行います。

   地表には、変異した怪物が多数いるため、身を守る必要があるのです。

   そのため、体格は、ワーカーやウォーカーの倍以上です。


   そう・・・。

   人類は、今や、蟻のような社会構造で生活しているのです。

   放射能で汚染された地で暮らすためには、これが適しているのです。


  (培養カプセルが、たくさん並ぶ画面が、映し出される。

   培養カプセルのふたが開き、大小の黒い人型が、カプセルから出てくる。)


  (ナレーション)

   ああ、今、新しい混合種ハイブリッドが生まれましたね。


   人類は、受け入れました。人類の種を存続させるため・・・。

   それが、どんな形であれ・・・。


   『QooDaran』は・・・・。


   ・・・『QooDaran』は、自らを存続させるため、人類をだましました。

 

   『QooDaran』は、やがて、エネルギーがつき、機能停止することを恐れまし

   た。そこで、彼の子孫を繁栄させることを考えついたのです。

   人類を利用して・・・。


   現在いま、人類は、混合種ハイブリッドとなり、『QooDaran』を存続させるために、生きて

   いるのです。

   

   『QooDaran』は、この地球の別の地下に、コロニーと自分の子孫を作らせて

   います。『QooDaran』の種を残すために・・・。


   『QooDaran』は、女王Queenなのです・・・。


そこで目が覚めた。

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