第2夜 卒業 (約600字)

変な夢を見た。


  その夢では、私は女性らしい。

  ここは、化粧室だろうか?

  鏡に映った女性は泣いていた。さめざめと・・・。


 「あやさん・・・スタンバイお願いします。」

  誰かに声をかけられる。


 「ハイ・・・」

 『彩』と呼ばれた女性は答える。

  私の意識は、この女性の中にあるものの、どうやら傍観する立場らしい。


 ・・・・


  彩は、再び、鏡を見つめる。

  涙をぬぐい、崩れた化粧を目立たぬよう、簡単に直す。

  これから、彩の最後の収録が始まるのだ。


  彩は、鏡に映った自分にむかって話しかける。

 「もう、泣いちゃダメ。これが、私の最後の仕事。しっかりするの。

  笑顔で・・・テレビの前の皆さんに伝えるのよ。」


 ・・・・


  彩は、今、テレビカメラの前に立っている。

  担当の予報コーナーが始まってから何年たったろう。

  でも、今日が最後。最後の仕事をしっかりやり遂げる・・・。

 

 (3・・・2・・・1・・・)


  彩は、とびきりの笑顔を作る。

  その笑顔は、今までの人生のなかで、最高の笑顔だったに違いない。


 「皆さん、おはようございます。

  の時間です。

  本日、超巨大隕石に押しつぶされ、地球は滅亡するでしょう・・・。

  皆さん、よい一日を!」


  予報コーナー終了後、彩は、顔を両手で覆い、激しく泣いた。

  彼女の人生最後の仕事が、無事終わった・・・。


そこで目が覚めた。


私は、出勤の準備をしつつ、テレビをつける。

画面に映し出されたのは、朝のニュースだ。

女性が映し出される。

あの夢の女性・・・。


彼女はにっこり微笑みながら言う。

「新コーナー『滅亡予報』を担当する・・・」

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