5話 言葉に出ないガールズトーク
【5-1】
半年前にご両親からの相談を受けて一時期入所していた中学2年生の子、立川
体は痩せているのに、まだまだ痩せないとダメだと食事を拒否してしまっていて、入院するかリハビリが必要と相談に来られた。
このままでは命だって危なくなってくる。調理場のメンバーで考えたり、雲雀ちゃんとも面談をした。
「誰かにいっぱい食べているところを見られたくないってのが根源なのね。間違った情報を信じてしまった若い女の子にありがち。本当は違うのにね」
ご両親の前でそれをすぐに見抜いた茜音さんと結花先生は、珠美園でのリハビリを約束し、彼女はその日から一緒に生活をするようになった。
すぐに里見先生と私が呼ばれて、少なくてもカロリーがあるものを流動食で用意するように宿題を出してきた。
それを最初はスプーン1杯。それも食堂ではなくて、茜音先生のいるお部屋に運んだ。二人きりにして欲しいと言われて、その先は茜音先生に託した。
それを味が偏らないように、しかも少しずつ量を増やしながら1週間くらい続けたときだろうか。
茜音先生から私に呼び出しがかかった。
「このお姉さんがあなたのために毎回作ってくれていたのよ?」
茜音先生の部屋にいた雲雀ちゃんに話を聞いたらやっぱりそうだった。ティーンズ誌などのモデルが可愛いと思ってしまったとき、自分の体型を否定して食事制限でストイックに追い込んでしまうんだ。
「あの……」
「うん……?」
彼女が小さな声で恥ずかしそうに私に顔を向けた。
「おいしかったです……」
「よかった……」
初めて、自分がこの園の中で誰かを助けられたと思った瞬間だった。
聞けば、少しずつだけど3食が楽しみになったそう。最初から流動食に近かったので、吐き出しなどもなくなった。
その後は雲雀ちゃんと相談をして少しずつ固形物を入れ、量も増やしていった。夏休みが終わってからは、学校のお弁当も彼女と一緒に、「無理に食べたように棄てなくていい。その時は遠慮なく残していい」という約束をして、食べきれる量で栄養を調整した。
夏休みが終わり、1ヶ月もする頃には、みんなと同じ空間での食事もとれるようになってきた。
戻ってきた体格を見ると、もともと細かったのに、無理な食事制限をしたものだから一気にやつれてしまったのだろう。
止まってしまっていた生理も戻って、先月にリハビリは無事に完了と自宅に戻っていった。
それでも雲雀ちゃんは私のごはんが食べたいと時々やってくる。もう偏食はしていないと言ってくれている。
そんな彼女の来訪は私も大歓迎なんだよ。
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