【2-2】
準備が終わって時計を見ると夜7時を過ぎた頃。
「じゃぁ、出るか」
私たち四人は陽人先生が運転する車で出発した。
「もう、二人でなにを企みしてるのよ」
今回の詳しい話はあれだけ夫婦仲がいい結花先生にも秘密にされてしまっているみたい。
「まぁまぁ、向こうでゆっくり話すから」
大通りに合流すると、まだイルミネーションが点灯していて、大勢の人たちが繰り出している。
「懐かしいですね」
「花菜でもそう感じちゃうか?」
「それはそうですよ。あの時まだ私高校生だったんですからね?」
そう、今から3年前のこの日、まだ松本花菜だった高校2年生の私は担任の長谷川啓太先生に横浜港のナイトクルーズに誘われていた。もちろん学校は誰にも内緒だよ。
そしてその夜、幼なじみのお兄ちゃんでもあった啓太先生から私の左手薬指に誕生石のついた指輪を受け取った。
もちろん、今はマリッジリングをその指につけているから、エンゲージリングは大切な宝ものとして保管してある。
もうひとりじゃない。泣かなくていい。
いくら幼なじみとはいえ、いろいろと問題がある私と一緒に歩いてくれると決心してくれた人には私も感謝しかない。
学生と担任の先生という本来ならば許されることはない関係。学校では決して口に出すことは許されなかったにも関わらず、珠実園の先生たちはみんなで応援してくれた。
「そっか、3年かぁ。長かったのか短かったのか、あまり分からないね」
私たちの禁断の恋愛物語へ応援の先頭にいてくれたのが、私の隣に座ってくれている結花先生だった。
正直もし私がお父さんに続いてお母さんを亡くしたとき、市役所で紹介してくれたのが珠実園でなかったら、今の私はいなかったかもしれない。
そのくらい、私たちの人生はあの日から変わったんだもの……。
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