第56話 のんびりLvUP


 迷宮街にも行きにくくなってしまったので、3日間ほどはのんびりと過ごしていた。


 途中でキャバクラ経営者の勝田さんから「入門コースじゃMPが追いつかない」とクレームの様な要望があってノアさんが緊急出動して行ったが、レベル9以下では小解毒だと使えて一日に一回か二回だ。さもありなんといったところだ。当然、アユミさんが「入門ですから」と突っぱねていた。


「中級コースがこちらとしても美味しいところですから。我々ものんびり行きましょう」


 そう言っていい笑顔を見せるアユミさんだったが、前言撤回。全然、のんびりとはしていなかった。9層までの200体狩り×人数分で「上げれそうな範囲のレベルを全員全部上げてしまおう作戦」が2チームに分かれて展開していた。


 1層と5層は特殊な位置付けとして、他の階層で4レベルずつ上げて全員レベル32で揃うことになる。ソロでもある程度と半端にスキルを取ってしまいSPがいまいち貯まっていない自分からすると4段目スキルを取れるほどのSP貯蓄量がちょっと羨ましい。


 ミーティも独りで家に置いておくのもなんなのでと随行しておりレベル24まで上がってしまっていた。まだスキルもないのに促成栽培パワーレベリングされてしまっている。


「ミーティ。大丈夫?」


「ミー、!ダイジョブ!」


 まだまだ本調子ではない体調を気づかってみるも異世界少女は若干の疲れをにじませながら健気に付いてきていた。買ってきてもらった運動靴も問題ないようだ。


「次!来ます!」


魔法矢ボルト魔法矢ボルト火属性魔法矢ファイヤーボルト


 8層のミイラの足とトンボの羽を撃ち抜き、動きを制限するとアユミさんとミーティが1体ずつ丁寧にとどめをさしていく。今はこの3人だ。敵の倒し方もアユミさんが教えてくれているので魔法を使って足止めをし周囲の警戒をしているだけで楽といえば楽な迷宮攻略である。倒す敵の数とそれに伴う移動距離が半端ではなかったが。


 また、魔法を使うところを見たミーティが「グラマン」と驚きながら呟いていたのでグラマンとは何かを聞いてみたのだが、多分魔法使いと偉くて怖い人が混じっているような雰囲気だった。もしかすると貴族などの支配階級のみが魔法を使うのかもしれない。取得条件的に神頼みな現地の人ではまず職の開放ができないはずだ。


 これも露見すると日本でも異世界でも面倒ごとの匂いがするなと思いつつ、ミーティの育成方針についても気になったのでアユミさんに聞いてみる。


「まだ身体もできていないので武闘家とシーフを伸ばして小技が多い手数重視のダメージディーラー、マイさん系統の物理アタッカーですかね。もしくはシーフ特化。ただシーフの3段目スキルでも罠解除系のスキルがなかったので、このダンジョンにはそもそも罠もないのかもと思っていたりします。今までもありませんでしたし。それであれば身体制御向上の器用さアップまでに留めて、手数と急所を狙う系の物理アタッカーあたりがいいと思うんですけど先生はどう思いますか?」


「……いいと思います」


 なんか色々ちゃんと考えてらっしゃるようなのでそれでいいんじゃないかと思います。少女、完全にパーティメンバーの扱いになっているやん。


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