サクヤ編第3話 アリシアVSサンダー
入学式の次の日、ほうきに乗って学園へ登校していると、魔法剣道場で身に覚えのある声がする。
「この声……」
声がする方へと行ってみると、そこにはサンダーが汗だくになりながら何度も剣を振っていた。
私はサンダーのもとへと降りた。
「サンダー、何やってるの?」
「サクヤか。昨日ヴァーミリオン先輩に魔法剣士の練習に付き合わされてな、それでいろいろあって今日は朝から素振りをやらされている」
「災難だったね」
「ああ。サクヤ、転移魔法とか使えないか?逃げてえんだけど。というかほうきに乗せてくれないか?」
「サンダー、何サボろうとしてんだ。素振りまた百回増やされたいのか」
その声にサンダーはビビっている。
一体誰かと目を向けると、ヴァーミリオン先輩であった。
「少女よ、君も新入生かい」
「はい。サクヤと申します」
「君も魔法剣士にならないか?」
「いえ、結構です……」
「まあともかく、サンダー、ひとまず素振りはもう良い。放課後、アリーが直々に稽古をしてくれるそうだから楽しみにしておけよ」
「アリー?」
「じゃ、そういうことで。授業に遅刻すんなよ」
ヴァーミリオンが去ったと同時、サンダーは剣を置き、汗だくになって荒い息をたてていた。
「サクヤ、あと何分で遅刻だ?」
「十二分だよ」
「そうか。なら少しここで休憩しとくから、サクヤは授業遅刻しないように先に行っててくれ」
「分かった。ちゃんと来てね」
私はほうきにのり、校舎へと向かった。
しかし一時間目が始まっても、サンダーが来ることはなかった。それから二時間目三時間目と、そして放課後までサンダーは現れなかった。
どうせあの場所で眠っているだろうと、私はそこへ向かう。そこではやはりサンダーが横たわって平然と清ました顔でそこにいた。
「サンダー、もう終わっちゃったよ」
「ん?ああ、忘れてた、というか寝ちゃってたわ」
「おいおいサンダー、お前のクラスの担任から授業に出ていないと聞いたが、こんなとこでサボっていたのか」
知らない女性の先生が、サンダーに向けて話しかけている。
その先生は水々しい髪色をし、腰には紫色の剣を下げている。こんなにも美しい専制がいるのかと、私は彼女を見て思った。
「おや、自己紹介がまだだったな。私はアリシア=コウマ。この学園の教師であり、魔法剣士の顧問だ。そしてサンダー、お前に稽古をつけてやる相手でもある」
「この人が……アリー」
「ヴァーミリオンの奴。まさか他人と話している時でもその名で呼んでいるのか。まあいい」
アリシア先生はアリーという呼び方を聞き、呆れているようだった。
「とりあえずサンダー、お前の今の実力を見せてくれ。勝ったら魔法剣士をやめても良いぞ」
「まじすか」
急にやる気を出したサンダーは隣に転がっている剣を構え、アリシア先生へ向けた。
「本当にやめても良いんですよね」
「私に勝ったらだがな」
アリシア先生は紫色の剣を抜き、構えることなく下げている。
「電撃を纏い、動きが雷の如く速い速度まで達せるというのはある学者の論文で実証されている。アリシア先生、もう追い付けませんよ」
電撃を纏うサンダー、次の瞬間、姿が見えなくなった。と思えば、アリシア先生の横に立ち、剣を振るった。それを紙一重でアリシア先生は剣で防ぎ、弾いた。
再び、サンダーは消えた。
「雷の速度で動いているということか」
「ええ。雷魔法は得意なんでね」
サンダーは何度も攻撃を仕掛けるが、それらは全てアリシア先生に剣で弾かれている。
「化け物ですか……」
「さて、そろそろ終わりにしようか」
アリシア先生は振り返ると、勢いよく剣を振り下ろした。その瞬間、サンダーへ剣が直撃したのか、その地面に倒れ込んだ。
「終わりだな。良い勝負だったよ」
雷の速度で動いていたサンダーを、一蹴したアリシア先生。
強すぎる彼女にサンダーは驚愕していた。それは私も同じことだ。
この人強ええええええええええええ。
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