SS17 エッチではありません

「良い子の皆さんに、プレゼントを配っちゃいますよっ」


「ヒュウ! 可愛いよ、ミニスカサンタ一葉ちゃん! 一家に一人来てほしー!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!



   ◆   ◆   ◆



「ワタシのカンフーでやっつけちゃうアルヨー!」


「あっあっ、チャイナ服姿はエッチが過ぎます義姉さん! チラリと覗く太ももがとてもエッチです!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!



   ◆   ◆   ◆



「義姉さんサンタを、良い子の元までお届けしますー」


「あはっ、トナカイ衣装の一葉ちゃんも可愛いー! 私のソリを引いちゃって!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!



   ◆   ◆   ◆


「ほいっ、ストレッチー」


「あっあっ、ブルマに体操着はエッチッチです! エッチッチ体操始まっちゃいます!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!



   ◆   ◆   ◆


「フレー、フレー、義姉さんっ、兄さんっ」


「あーっ、チアガールいいねぇ! 応援ありがとー!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!




   ◆   ◆   ◆


「ぴょんぴょん、私を捕まえてごらーん?」


「あっあっ、バニーガールはあまりにエッチです義姉さん! お胸もお尻も御御足もエッチです!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!


   ◆   ◆   ◆


「お茶をお持ち致しました、お嬢様」


「うんうん、メイド一葉ちゃんはグッと大人っぽさが増すね!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!



   ◆   ◆   ◆



「あ、あなたの精を吸っちゃうからっ……!」


「あっあっ、いけませんサキュバスはいけません義姉さんそれはもうエッチがエッチです!」


 ──パシャァパシャァパシャァ!!


 凄い勢いでシャッターを切る一葉ちゃんの前で、私はヒクつく笑みを浮かべる。


 私と一葉ちゃんは、お互いが持ってきた衣装を着て交互に撮影し合ってるんだけど……。


「では義姉さん、私は次どれを着れば良いでしょう? ちなみに義姉さんには、この旧スクール水着を……」


「ちょ、ちょっと一旦待ってもらえるっ?」


 いそいそと次の衣装を取り出す一葉ちゃんに、流石に待ったをかけた。


「あぁ、そろそろ休憩挾みましょうか? 飲み物はこちらに」


「ありがと……」


 手渡してくれたペットボトルを受け取り、口をつける。


 なんだかんだ結構動くんで、ちょうど喉が乾いてたとこだからありがたい。


「……ふぅ」


 一息ついた後で……改めて。


「バランスが取れてなくない……?」


 途中からずっと思ってたことを一葉ちゃんに尋ねた。


「……?」


 一葉ちゃんは、何のことだろう? とばかりに首を捻る。


 それから、はたと何かに気付いたような表情になって。


「日本のプライマリーバランスが赤字である、というお話ですか?」


「という話ではなくて」


 むしろなんで急に政治の話が始まると思ったの……?


「その……衣装選定のバランス的なやつ? 私と一葉ちゃんでちょーっと違わないかなーって」


「ふむ……」


 一葉ちゃんは、私の言葉を吟味するように顎に指を当てる。


「私はキュートだったりせくしぃだったり色んな衣装を着ているのに、義姉さんはずっとエッチだというお話で合っていますか?」


「……一応ね」


 言い方はともかくとしてね。


「つまり……」


 と、一葉ちゃんは私の言いたいことを察してくれたみたい。


「義姉さんは、私のせくしぃな姿をもっと見たいと!」


 と、一葉ちゃんは私の言いたいことを察してくれてなかったみたい。


「そっちじゃなくてぇ……! いや、そっちもちょっと見たくはあるけどぉ……!」


 こうなれば、仕方ないので……。


「私の衣装、エッチじゃないやつはないの……?」


 ついに、直接的な表現を用いることにした。


「ないです」


「ないの!?」


 それに対してハッキリ言い切られて、思わず驚きの声が出る。


「いやほら、もうちょっとこう、可愛い系とかそういうの……」


「それはちょっと……」


 私としては普通のことを言ったつもりなんだけど、一葉ちゃんはなぜかとても難しい顔となっていた。


「仕様上難しいかと」


「何の仕様に弾かれてるの!?」


「それは……」


 と、なぜか一葉ちゃんは少し恥ずかしそうに視線を外し。


「義姉さんが、エッチだからです」


「義姉さんはエッチじゃないですよ!?」


 なんか、とんでもないことを言い出したよね……!?


「今の私がエッチだとしても、それは衣装がエッチだからだよね!?」


「いいえ、義姉さんはエッチです」


「そんな、私の存在そのものがエッチみたいな……」


「はい、義姉さんはいつもエッチです。義姉さんはいつでもエッチです」


「私はどっちかっていうと、清純派っていうか……」


「義姉さんはとてもエッチです」


「さっきからなんで直訳っぽい喋り方になってるの……?」


 というのはともかくとして……。


「義姉さんは、エッチではありません!」


 改めて強く主張すると、一葉はちゃんは「ふぅ……」と溜め息を吐いた。


「これでは埒が明きませんね……」


 なんだろう、なんか私が変なこと言ってるみたいな空気になってない……?


「こういう場合は、第三者に意見を求めるに限ります」


 えっ、第三者って……ここにいるのは私と一葉ちゃんと、後は……。


「兄さん、義姉さんはエッチですか?」


 やっぱりそうなるよねぇ……!?


 ていうか、仮にも私の『旦那様』に対してのその質問は別の意味を帯びてきちゃわない……!?


 ……ま、まぁ。

 秀くんがどう思ってるのか……ちょっとだけ、興味はあるかもだけど?



   ◆   ◆   ◆


   ◆   ◆   ◆



 はっはっはっ、妹よ。


 ……こっちに飛び火してきませんように、ってさっきから全力で気配を消していた兄の切実な祈りは届いていませんでしたかそうですか……!





―――――――――――――――――――――

投稿間隔が空いてしまいまして、申し訳ございません……!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る