何この神アイテム!?

悲鳴が聞こえたであろう場所が視認できる距離まで近づく。

少し走ると森に入る前の場所に荷馬車がとまっていて近くに狼がいる。

そのあたりから悲鳴が聞こえたのかもしれない。


やはりさっきの悲鳴は狼による襲撃を受けた人間によるもののようだ。

人数は3人だが、一人は怪我をしているようだ。


赤い髪の女の子が左腕を押さえていてそばには大きな剣が落ちている。

悲鳴はこの女の子のものだったのだろうか。


もう一人、剣を持った小柄な女の子が狼と戦っているが、狼は3匹残っていて戦況は芳しくないようだ。


ここから見える限り4匹ほどの狼の死体があるがこれは二人いた時のものも含めてであって一人で3匹を相手にするのは厳しいのだろう。


その後ろでは商人らしき小太りの男が剣を持っているが、小柄の女の子の後ろにある荷馬車らしきものに隠れてようとしている。


馬は無事なようだ。


そう状況を観察する俺であった。


こりゃどうしようかな。


とは言っても、手伝うしかないが、こんな人数だと高級魔法は使えなさそうだ。

下手すれば人間まで巻き込んでしまうから。


とりあえず【鑑定】を発動させ、敵のステータスを見よう。


─────────────────

森狼(フォレストウルフ) レベル 15


ランク:C


体力: 70/70

魔力: 10/10

STR:20

INT:20

AGI:40

DEX:2


スキル:

【威嚇】【吼える】


─────────────────


─────────────────

森狼(フォレストウルフ) レベル 15


ランク:C


体力: 70/70

魔力: 10/10

STR:20

INT:20

AGI:40

DEX:2


スキル:

【威嚇】【吼える】


─────────────────


─────────────────

森狼(フォレストウルフ) レベル 20


ランク:C


体力: 100/100

魔力: 10/10

STR:30

INT:25

AGI:70

DEX:2


スキル:

【威嚇】【吼える】


─────────────────

なかなか強いな、こいつら。


特に最後の森狼(フォレストウルフ)だが、スキルを見るところ、そんな大したものじゃなさそう。


記述欄によると、《威嚇》は気の弱い獲物の攻撃力と防御力を下げるスキルで、《吼える》は獲物の攻撃力を下げつつ自分の攻撃力を上げるスキルだ。


どっちも魔法を使う人には効かない。


《吼える》で攻撃力UPがかなりキツイけど、攻撃さえかわせばうまく対応できるだろ。 それはそうと、今すぐなんかしないと、3人が死んじゃうだろ。


一人は怪我してて、もう一人はかなり疲れてるみたい。 商人らしき小太りの男は剣を持ってるけど、その怯えてる姿を見ると、戦うのが苦手なんだろうなってわかる。


やっぱりこの人たちを助けられるのは、俺だけだ。


森狼(フォレストウルフ)の1匹が動き出す。 怪我してる赤髪の女の子の喉元目掛けて八重歯をむき出しで攻撃してくる。


赤髪の女の子は狼の攻撃を見たけど、反応することはできなかった。 自分の運命を受け入れてるかのように、彼女はそっと目を閉じた。


「リサ!」


それを見たもう一人の女の子は怪我してる女の子の名前を呼んだけど、リサと呼ばれる女の子との距離を縮める前にもう1匹の森狼(フォレストウルフ)に遮られた。


悔しさで歯を食いしばり、小柄な女の子は剣を構えて攻撃を防いだ。


………今だ!


【アイスの槍】


氷でできた槍を頭の中でイメージして、赤髪の女の子を襲いかかっている森狼(フォレストウルフ)目掛けて手を伸ばすと、槍を放つ。 氷の槍は雷撃と同じ速度で空中を飛び、瞬く間に森狼(フォレストウルフ)に命中する。


勢いとともに氷の槍に命中した森狼(フォレストウルフ)が吹き飛ばされ、木に衝突する。 その後他の魔物と同じように黒い霧になって消え去り、魔石を落とした。


それを見た商人らしき男と女の子たちは呆気に取られたけど、彼らの様子を気にせず、そのまま次から次へと氷の槍を飛ばして、森狼(フォレストウルフ)を絶命させる。


それを終え、溜息をつく俺。 今日はかなりの魔力を使ったなぁ。


まあでも、この人たちを助けてよかった。


と、そんなことを思って、踵を返して、歩き出そうとしていた。 が、女の子の呼び声に引き止められた。


「おい! あそこにいる青年!」


女の子は周囲を見回した後、敵がいないのを確認したらこっちに向かって手を振る。 呼び出されてるみたい。


しょうがないと俺が荷馬車らしきものに近づくと、小柄な女の子が話しかけてくる。


商人らしき男も荷馬車から出てきたみたい。 怪我をしてた女の子は自分で手当てをしてる。 命に別条はなさそうだ。


「助かったよ、援護してくれてありがとう」


女の子がそう言ってきた。


「いえいえ。ちょうどこの辺にいる魔物を狩るところだったし」


とりあえず真実を言おう。 すると俺の言葉に、女の子は困惑気味に首を傾げる。


「魔物を狩ってたの? でもその服装からすると冒険者じゃなさそうに見えるけど、違うの?」


まあ、そりゃそうだよなぁ。 服装は村人一式だもんな。


「いや、冒険者試験を受けようと思ってたけどお金が足りなくて、仕方なく魔石を集めてギルドで売ることにしたんだ。冒険者じゃないよ、俺」


「そうなの? まあ、どっちにしても、君は私たちの命の恩人だよ。受けた恩を返したいからちょっと待っててね」


そう言うと、小柄な女の子は振り向き、商人らしき男に話しかける。


「おーいアンズさーん!」


商人らしき男はアンズというみたい。 小柄な女の子と少し話したらこっちに話しかけてくる。


「君が助けてくれたのかね、礼を言うよ。援護してくれてありがとう」


そう言うと、アンズは深く頭を下げる。 それを見て苦笑する俺。


「いえいえ。頭を下げないで。他の誰だって助けただろう。」


「さあな。しかし、俺たちを助けてくれたのは君である事実に変わりない。感謝するよ」


と、アンズはまた頭を下げると言う。 するとまた頭を上げて、俺を見やる。


「俺の名前はアンズ、見ての通り商人をやってるんだ」


「どうも、俺は楓と言います」


「カエデくんか? 珍しい名前だな」


逆に俺みたいな名前を持ってる人を知ってたらびっくりするわ。


「それでお礼なんだけど、これ、君にあげる」


そう、アンズは言うと、どこからかカードらしきものを取り出して俺に手渡した。 それを受け取った俺はしばらくそのカードを見る。


カード? なんでこれをくれたんだろ?


「これは?」


俺が聞くと、アンズは答える。


「それがねぇ、俺のカードなんだ。そのカードを武器屋や鍛冶屋に持っていきな。冒険者になろうとしてるんだろ?君は? その装備じゃ将来の冒険者に相応しくないと思っててさ。そのカードを店長に見せたら武器も服装も、全てのものを半額で買えるようになるんだ」


……………………


何、この神アイテム!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る