崖っぷち第二王子の魔物退治

ふさふさしっぽ

第1話 父上からのお呼び出し

 父親である国王から呼び出された。


 一体何の用だろうと俺は父上がいる「王の間」に向かう。


 何の用だか知らないけどさ、早めに切り上げてもらいたいんだよね。今日は午後からフィリアとのデートが控えているんだからさ。



「失礼します。お呼びでしょうか父上」


 俺は一礼して王の間に入室した。もうすぐ五十になる父上は俺を一瞥しただけで何も言わなかった。


 あれ? 父上なんだか機嫌悪い?


「……我が国第二王子ルイスよ、お前に報告がある」


 長い長い沈黙のあと、大きなため息をついて父上はそう切り出した。


「は、一体なんでしょうか」

「ユーリア王女との婚約が破棄となった。向こうから一方的に」

「え」


 ユーリア王女は隣の国の第三王女で去年婚約したばかりだった。俺が十七、王女が十三、だったか十四だったか忘れたけど、国同士の結びつきを強めるための婚約だった。それが一方的に向こうから破棄されたって、一体何で?


「そーなんですか。何かあったんですか、ユーリア王女に」

「ルイス、お前、何も心当たりがないのか」

「ないですよ、この前贈り物を送ったばかり……」

「この馬鹿者!!」


 父上は突然立ち上がり、手近にあった花瓶を俺に向かって投げつけてきた。

 俺はすんでのところで花瓶をかわした。ガシャーンという音をたてて花瓶が砕け散る。


「ち、父上……?」


「お前が浮気ばっかりしてるからだろうが!! 何が贈り物だ! 贈り物のメッセージカードに『愛しのロアンヌへ』と書かれていたと言われたぞ!」


「げっ」


 なんてこった。痛恨のミス。俺としたことが贈り物を送り間違えてしまうとは! ちなみにロアンヌとは最近親しくなった伯爵令嬢だ。


「ユーリア王女との婚姻には我が国の未来がかかっていたというのに、お前ときたら……、それだけじゃない、お前の手の速さには辟易した! どこかしこで女に手を出し不祥事不祥事! その度に我が国の評判は落ちるばかり!」


「そう怒らないで下さい父上。騒いでるのは今だけ。そのうちほとぼりも冷めますって」


「お前の話をしてるんだろうが! 他人事みたいに言うんじゃないこの馬鹿息子! もう限界だ、幼少のころ母親を亡くしたお前を不憫に思い、少し甘やかしすぎてしまったのかもしれん」


 なんて言って怒ってるけど、今回だってなんだかんだで許されるんでしょ? そ、そうですよね、父上。今までだってそうだったし……。


 普段温厚な国王の信じられないくらいの怒りに、俺の心臓は早鐘を打つ。頬に、冷たい汗が流れる。


 許してもらえるんですよね?


「今回ばかりは堪忍袋の緒が切れた! もう許さん! お前は国外追放だ!」


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