第53話 騎士団長とギルド長の和解 なぜ俺がここに?

 地下から出ると、騎士団の人たちが率先して片付けなどをしていた。


 もう、新しいアンデッドなどはでていないようだった。


 街の中にいたアンデッドは全部倒せていたようでこれで一安心だ。




 とりあえず、俺の仕事はこれで終わりだろう。 


 あとは……シャノンとパトラに他の仲間たちの手伝いをするようにと伝え、一度報告のために冒険者ギルドへ行く。いつも通り受付に行くと、装備を着込んだままのリッカさんがいた。




「リッカさん、今回の事件について報告したいことがあってきました」


「ロックさん! ちょうどいいところに! 急いでギルド長室へ来て下さい!」




 俺はリッカさんに腕を引っ張られ、半ば連行されるようにギルド長室へ連れて行かれた。


 そこには、騎士団長のマーカスとギルド長のタイタスさんが、静かにテーブルを挟んで座っていた。




 いつもは顔を合わせただけで、喧嘩が始まる2人なのに……その静けさが余計に異様なものに感じてしまう。




 はたして俺が入っていいものなのか。


 そう思いリッカさんの顔を見ると、リッカさんは俺に片目でウィンクをしたあと、背中を押しギルド長室へ入れて扉を閉めてしまった。




 可愛くウィンクしていったが、俺に押し付けて逃げたな。




「よく来たなロックくん。忙しいところ悪かったね」


「先ほどはすまなかった。見苦しい姿を見せた」




 2人して同時に話しかけてくるので対応に困る。


 とりあえず、適当に流して今回のことの顛末を報告しておく。




 騎士団長は俺にボコボコにされたのでもっと怒っているかと思ったがそうでもなかったので一安心だ。操られていた時の記憶を聞くと、うっすらと覚えているらしい。




 まるで他人の人生を見ているような、いまいちはっきりとしない感覚だったそうだ。




 騎士団長が自ら操られていた理由についても確認をしてみたが、今の現状では明らかな理由はわからないという。


 操られたのは仕方がないとはいっても、騎士団全員が操られていたのは問題がある。




 もし、操られてたのが国の大臣だったら……この国は完全に乗っ取られていた。


 なんとしても、原因の究明と対策をとらなければいけない。




 それからしばらく、マーカスはいつ洗脳されたのかはわからないが、リディアとの出会いを話してくれた。


 ことの発端は1ヶ月以上前に遡るとのことだった。




 マーカスが、全体の訓練が終わり、1人で訓練をしている時にその女が現れたとのことだった。その女は、初めて見たはずなのに、なぜか昔から知っている友人のような気になってしまったという。




 それから、何度か訓練場で会っていたが、マーカスは知らない女が訓練場に入っていることにすら違和感を抱かなかったそうだ。




 そして、時々自分が記憶を無くしているのではないかという症状が出始めたそうだ。その頃から、なぜかタイタスを見るだけで感情を抑えられない程のイライラを感じるようになっていた。




 元からライバルのような意識はあったので、好きではなかったそうだが、それ以上に怒りが込み上げてくるようになった。




 そのうち、リディアから強い魔物の死体を集めるように言われ、それが国を発展させるために必要だと説明を受けたそうだ。




 今までも強い魔物の素材は武器にしたり、売り払ったりするのに買い取りや、討伐をして得ていたことはあったが、リディアに言われてから、より強い魔物へ執着するようになった。




 魔物を買い集めるのに、騎士団にあてがわれた予算を使い切ったため、今度は冒険者から奪うという暴挙に走ったという。




 今ならそれがどんなにおかしいことかわかるが、その当時はまったくわからなかったそうだ。


 自分の意識であって自分の意識ではない行動をしているようだったそうだ。




 マーカスは俺とタイタスに頭を下げ謝罪をしてきた。




 タイタスは本当に予想外だったようだが、その謝罪を受け入れ、詳しい調査は今後騎士団と冒険者も協力していくことで約束した。




 リディアについては、冒険者ギルドで国中に情報を共有して探すということだった。だが、あのような感じでは見つけるのは難しいかもしれない。


 ドモルテでさえ、リディアが本気で逃走した際の魔力の追跡はできないとのことだった。




 マーカスは最後にもう一度、俺たちに謝罪をすると席を立ち出ていった。


 まだ、国の中では瓦礫の撤去などをしているので、それの指揮に戻るとのことだった。




 彼も何かしらの責任は取らされるかも知れないが、今はやるべきことが山積みだ。




 マーカスが出るのと入れ替わるようにリッカさんが慌ててやってきた。




「大変です。元勇者のキッドが脱走しました。奴隷の首輪をつけたままですので、そう遠くへは逃げられないとは思うんですが」




 俺たちはそれから、並行してキッドの捜索をしたが、街の復興で手一杯の中で大規模な捜索もできず、途中で川に入ったのかラッキーの鼻でも追いかけることはできなかった。




 キッドの逃亡が偶然なのか……。


 それからしばらくは街の復興のために手伝うことになった。


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ドモルテ「魔石使い放題だ。これで好きなだけ研究ができる」

パトラ「ドモルテさん、申し訳ないですーこれお願いしますー。それが終わったら、あれをお願いしますー」

ドモルテ「えっ? いやこれは……」


ロックがいない箱庭の中は結構忙しい感じだった。


少しでも面白ければ♥よろしくお願いします。

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