第49話 「誰か! パトラを助けるんだ」無情にもオーガはパトラの頭上に……

「剣で斬り落としただけだと、またそこからアンデットとして増えていってしまうんだ。それに冒険者の数も圧倒的に足りない」




「それなら、魔法使いを中心に編成を組み直して……」




「それがダメなんだ。魔法使いの数も絶対的に足りない。このままだと冒険者は全滅してしまうぞ」




「わかったわ。冒険者は全部住民を避難誘導にまわって! 人が生きていれば復興はできます。ロックさんも逃げてください」




「いや、その必要はなさそうだ」


 俺の見つめる先で従魔たちは、アンデットたちを倒し骨に帰していた。




「えっ!?……まさか……ロックさんの職業の影響で……!?」




 俺の従魔たちはアンデットをどんどん倒していた。


 もちろん、一撃でというわけではないが、かなり善戦をしている。




 聖獣使いのスキル聖獣化のおかげか、従魔たちの物理攻撃がアンデットたちに効いているのだ。




「これなら……冒険者のみなさんにロックさんの従魔をサポートするように伝えてください。無理に倒す必要はありません。できる限り従魔たちが長く戦えるように、囲まれて孤立しないようにしてください」




 リッカさんの指示に先ほどの冒険者が戦場に戻って行く。


「リッカさん俺も行ってくるよ」


「ロックさんご武運を」




 ラッキーはラッキーで戦ってくれているようなので俺もオーガへと向かっていく。


 どれくらい魔物の数がいるのかわからないが……もともと死体置き場にまとまっていた魔物ばかりなので、王都全体に被害があるわけではないようだ。




 ここで封じ込められれば何とかなりそうだ。




 剣を抜き、俺と従魔たち全部に重ね掛けで補助魔法を発動する。


 目の前に一匹のゴブリンが飛び出してくる。




 こんなところにゴブリンが?


 どうやら、集めていたのは強い魔物だけではなく雑魚も集めていたようだ。




 いいだろう。


 全部俺たちが倒してやる。




 ゴブリンを一撃で切り付けるとそのまま骨に帰っていった。




 今まで敵認定されていなかったが、1匹倒したことで他の魔物たちから正式に敵と認定されたようだ。 ゴブリン、オーク、オーガ……なかなかな数を集めたらしい。




 これだけいれば王都を転覆させることもできただろう。


 ただし、俺たちがいなければな。




 俺たちが魔物を狩り、冒険者がサポートと住民の避難をさせる。


 形勢が逆転した頃、王国騎士団たちがやってきた。




「遅すぎるだろ! お前ら騎士団が一番最初に王都を守らなきゃいけない…えっ?」




 何も言わず、騎士団は俺たちに向けて矢を放ってきた。




「みんな矢が飛んでくるぞ! 逃げろ!」




 不意打ちを受けた冒険者たちは避けきれず矢に倒れる者もいたが、従魔たちは大丈夫なようだ。途中からガーゴイルくんが風魔法で防いでくれている。




「いったい何をする!! 俺たちは味方だぞ」


 王国騎士団の奴らの様子がおかしい。


 完全に正気を失っている。




 だが、その中で騎士団長のマーカスだけは騎士団に指示をだしていた。




「騎士団の敵は目の前にいるぞ! 仲間たちよ! 今こそ王国騎士団の力を見せるんだ」




「パパーどうする?」


「全員殺さずに気絶させろ」




「それなら僕に任せてよ」


 ガーゴイルくんが風魔法で騎士団を空中に持ち上げ背中から落下させる。


 鎧を着ているが、かなりの衝撃のはずだ。




「やった……のか?」


 ガーゴイルくんが不安げにそう呟く。




 騎士団たちはそのまま起き上がりまた襲い掛かってくる。


 なんかそんな気はしてた。




「気絶は無理か」


 住民たちの避難はすでにある程度すんでいる。


 俺たちも一端避難をするべきか。




 魔物と騎士団を相手にしていては数的にも、かなり不利だ。


 オーク相手に思いっきり斬り付け、骨に帰す。




 倒してはいるが、騎士団が増えたことで多方向からの攻撃が増えている。


 撤退するなら早めに決断をしないといけない。




「パパー! 危ない!」




 パトラが俺を庇い、2人して横に転げる。


 考え事をしていて背中側を油断をしていた。




「パトラありがとう」


「パパーぼっーとしないの」




 パトラはお姉さんのような口調で俺に言ってくる。


 成長が早いもんだ。




 俺に斬りかかって来たのは、ミサエルだった。


 ミサエルの目も焦点があっておらず、どこを見ているのかわからない。




 ミサエルは転がったパトラに狙いを定め思いっきり蹴りつけた。




「痛いっ!」


「だからー前に怪我するって言ったのにー」




 パトラはまったく平気な顔をしている。


 蹴りつけたミサエルの方が怪我をしていたようだ。




「何をするんだ。この蟻め! あれ? ここはどこだ?」


「ミサエル俺たちがわかるのか?」




「あぁ魔物使いだろ。それよりこれはどういうことだ! 王都が襲われているじゃないか!」




 なぜだ?


 ガーゴイルくんの魔法には効かなかったのに、パトラを蹴りつけたミサエルは戻った。


 両方痛みは与えたが……もしかして接触か!?




 聖魔法で洗脳を解けるかも知れない。




「従魔たち怪我をしないように、王都騎士団を直接殴れ! 近接が苦手な者はアンデットたちに攻撃をするんだ!」




 俺は従魔たちに指示を出す。




「おい魔物使い説明しろ!」




「王都をアンデットが襲い、騎士団の連中が混乱して味方を攻撃しているんだ。お前に構っている暇はないから。後の詳しいことは避難して住民に聞いてくれ」




「誰が避難なんてするか。俺は王国騎士団の一員だぞ。この国を守るんだ。雑魚はお前に任せるからな。俺は大物を倒しにいく」




 ミサエルは剣を抜き、オークやゴブリンの間をすり抜け、オーガに向かって走り出し斬り付ける!なるほど、こいつら攻撃を受けるとオートで敵と認識するようになっている。




 自分たちで自滅するように仕組まれているなんて、作った奴の性格は相当悪そうだ。




 ミサエルの剣によってオーガには薄皮一枚切れただけだったが、オーガはミサエルを蹴飛ばし、転がったところを踏みつぶそうとする。




「弱いんだからー逃げてなよー」




 パトラはミサエルを庇うように腕を十字に組み、オーガの攻撃を受ける。


「ダメだパトラ!」




 パトラの足が地面に食い込む。


 なんとか一撃は耐えられたが、オーガはもう一度足を上げ、再度踏み潰そうとする。




 十字に組まれていたパトラの両手がだらっと下がる。


 助けなければ、だが、目の前には敵意むき出しのアンデットたちがどんどん襲ってくる。


 急いで斬り付けオークやゴブリンを骨に帰す。




 ダメだ!




 あっ……間に合わない。




「誰か! パトラを助けるんだ」




 俺の声が響き渡る中、ラッキーが、オレンジアントたちが、シャノンが、ガーゴイルくんがパトラの元に急ぐが誰も間に合わない。




 盛大な音と共にオーガの足はパトラのいた場所へと踏み降ろされた。


 先ほどのようにパトラが耐えている様子はなかった。




 オーガが足を上げた後には……パトラとミサエルの姿はなくなっていた。


「パトラ―!」


 俺の声はただ虚しく木霊するだけだった。



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ミサエル「俺たち騎士団はこの国のために戦っているんだ」

騎士団長「貴族って裏で荒稼ぎして領民苦しめてたりしてるよな」

ミサエル「うちは……貧乏貴族だから……俺もこんなところに」

騎士団長「世の中金じゃないよな」


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