第25話 もう止まらない。ジューシーなサクッと唐揚げ

「ロックさん私たちも急ぎましょ。食事は途中でもできますし」




「大丈夫だよ。アイザックたちは俺たちに絶対に勝てないから。一度宿に戻って食事をしながらこれからのことを話そう。それよりもシャノンの訓練をしないとね」




「それはありがたいですが本当に大丈夫ですか?」




 シャノンは心配してくれるが問題ない。


 アイザックたちが買い込んでいた荷物を見て俺は確信をした。




 だって俺たちが行く新緑のダンジョンは日帰りでも行けるのだから。




 宿屋に戻ってもう一度聖獣の箱庭に戻る。


『お腹が空いたよー、ロックー』




 ラッキーは今すぐにでも死にそうな声をかけてくる。


 すぐできるからちょっと待ってて。




 さて、今日は唐揚げを作ろう。短時間でできて、なおかつ美味しく熱々でお腹がいっぱいになる。そんな幸せフードだ。




 最初に鶏モドキの肉を適当な大きさに切る。ラッキー用は少し大きめだ。




 それに調味料とスパイスをよく混ぜ最後にコーンの粉をまぶして油で一気に揚げる。


 そうするとほら、もう鼻をくすぐる油の良い匂いがしてくる。




 あとはこれを2度揚げしてあげれば大丈夫。


 匂いに惹かれてラッキーが調理しているすぐ側で鼻息を荒くしている。




「ラッキー近すぎるよ」




 俺の注意を聞かずにラッキーがさらにコーンの粉に鼻を近づけると鼻息でコーンの粉が飛び散ってしまいラッキーの鼻先が真っ白になってしまった。




「ラッキーさん鼻真っ白になってますよ」


「パパーラッキーの鼻真っ白ー」




 本当にふざけているから。




『ロックーくしゅん』


「だから言ったのに俺の言うこと聞かないからだよ」




『だってもう美味しいっていう匂いがしてるから』




「もうすぐだからねちょっと待ってね」




 本当ならここでキャベッツの千切りでもつけられれば良かったんだけど。入ってきていないなら仕方がない。




「さぁどうぞ。熱いからゆっくり食べるんだよ」


 ラッキーは思いっきり一口で食べてしまう。熱くないのか?




『うん。これは美味いぞロック。もっとくれ』


 どうやらラッキーには熱耐性があるようだ。




「沢山作っているから大丈夫だぞ」




「パパーラッキーさんばっかりずるいですー私もおかわりしまするー」


 パトラも唐揚げを気に入ってくれたようだ。




「シャノンは大丈夫か?」


「あっふ、あふっでおいしょうです」




「ごめんね。ゆっくり食べて大丈夫だよ。まだまだあるし」




 それからしばらくはみんなが満足するまで唐揚げを揚げ続けた。


 うちの元パーティーメンバーも唐揚げ好きだったけな。




 もう一緒に食事をすることはないだろうけど。




 みんな唐揚げをお腹いっぱい食べると満足そうな顔をしている。


 この顔を見てしまうと美味しいものをまた食べさせてあげたいって思ってしまう。


 そのためにはしっかりと稼がないとな。




「さて、それじゃあこれからの予定を発表するよ。アイザックたちを徹底的に負かしてお金を稼がないといけないからね」




 新緑のダンジョンは普通に行けば片道2日から3日かかる距離にある。


 本来なら1週間かけてやるのが普通の依頼だ。




 でも、それは正規の道を行けばだ。




 正規の道は王都クロントから出て商業都市のウィリーを通っていかなければいけない。


 商業都市ウィリーまでは歩いて1日半そこからさらに歩いて1日はかかる。


 馬車で行けばもっと早いが、ウィリーから先はどのみち歩いて行かなければならない。




 でも、新緑のダンジョンは直線距離で行くとおよそ半日かからずに着くことができる。


 その途中には森や沼、それに川などもあり非常に歩きにくいが実際の直線距離は近いのだ。




 だがアイザックたちはそれを確認していないのだろう。


 もし確認していたとしてもあのメンバーが道なき道を行くとは思えない。


 人はそう簡単に変わらないのだ。




 それに持っていた荷物などを見たところだいぶ野営の物が多く食料は少なかった。


 食料は商業都市の方が少し安いのでそっちを選択したんだろう。




 あとアイザックが向かった方向だ。


 あっちは乗り合い馬車がある方向だ。彼らがゆっくり馬車で旅をしている間に俺たちは全部回収してしまおう。




 森の中で何かトラブルにでも巻き込まれない限り負ける要素はない。




「さて、みんなご飯も食べてお腹いっぱいになったことだしそろそろ行こうか」


 俺たちはそのまま宿を後にした。




 俺は街を出てからシャノンと、ラッキーの背中に乗り森の中を駆けていく。


 森の中でも魔物の気配はするがラッキーに喧嘩を売ってくる魔物はいなかった。




 でも、しばらく走って行くと大きな泣き声が聞こえる。




「なんの声でしょう?」


「わからないけど行ってみるか?」




 ラッキーにそっちに向かってもらうとそこには大きな石像が大声で泣いていた。


「ラッキー戻るぞ」


 触らぬ石像に祟りなしだ。




 でも俺たちの気配はすでに石像に見つかっていたようだ。


 石像がこっちを見ている。




 俺たちが見なかったことにして向きをかえると、石像が猛ダッシュで走ってきた。


 なんてこった。不用意に近づくんじゃなかった。


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ラッキー「なるほど、なるほど」

ロック「どうした?」

ラッキー「スカイバードは非常食ってことだな」

スカイバード「そんな担当ばっかり嫌すぎる」


ドラドラふらっとにて漫画版最新話更新!

7月5日2巻が発売します。

ぜひお気に入りの書店さんでお手にとって頂ければと思います。

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