第15話 赤い実がはじけなかった。ラッキー「成長しただろ?」ドヤッ

 キッドは完全に白目を剥いて伸びていた。




「ラッキーがやってくれたのか?」


『どうだロック!私だってやればできるんだよ。ちゃんと弾け飛ばなかったぜ』




 ラッキーはどや顔で俺にそう言ってきた。


 確かに弾け飛ばなかったが……勇者を一発で仕留めるって規格外すぎるだろ。


 俺たちがどれほど無謀だったのかを改めて感じた。




 ラッキーが本気で襲ってきていたら間違いなく全滅だった。




「キッドを確保してください」




 リッカさんの号令で冒険者たちがキッドを確保する。手には力封じの手錠をされ、首には魔力封じの首輪をされた。


 あれならもう逃げることはできないだろう。


 キッドはそのままギルドの奥の小さな部屋へ連れていかれた。




 あそこには確か犯罪者を一時的に収容する牢屋があったはずだ。


 もう刑はほぼ確定といったことだろう。




「ラッキーありがとうな」




『なにいいってことよ。さっさと終わらせて肉食べようぜ』




「あぁあと少しで終わるからもうちょっと待っててくれ」




 ラッキーは大きなシッポを振って応えてくれる。




 あっついでに箱庭から鞄を出して返してしまおう。荷物だけ取り出せるのか?


 心の中でパーティーメンバーの荷物よ出てこい。


 そう思うと腕輪からそれぞれの荷物が飛び出してきた。




 本当便利だな。




 リュック内にあった回復薬をとりだし怪我をした冒険者に配ってやる。


「ロックさんが配ってくれているこれはもしかして……聖女様が作った回復薬なのか!?」




 俺は曖昧な笑みでそのままスルーする。


 なぜか冒険者の中でカラが作ったことになっているが、カラはここ1年くらい回復薬なんて作っていない。




 聖女なんて言っているが、戦闘時の回復だけで回復薬の作成は俺に全部ぶん投げている。


 ただ、聖女が作った回復薬だと思っていた方が男性冒険者にとっては嬉しいだろうからこのまま余計なことは言わない。




 偽薬効果というのがあるように気の持ち様でもし傷が早く回復するならそれにこしたことはない。




 あとの荷物はアイザックへと渡す。荷物の一番上にラッキーと遊んだ胸当てが置かれており、よだれがべっとりつき噛み痕でボロボロになっていたが見なかったことにしておく。




 荷物が戻ってこなかったことを考えればそれくらいは安いものだろう。


「それじゃあ荷物は返したからな」




 アイザックは俺から奪い取るように荷物を受け取る。


 勇者の荷物は……俺の中でパーティーメンバーになっていなかったせいかあいつの荷物だけでてきていなかったようだ。




 冥途の土産にくれるって言っていたし問題はないだろう。




「ロック……ごめんなさい……」


 エミーから謝罪をされる。


 エミーは最後まで俺のことをパーティーから外すのを拒否してくれたが、結局最後助けてはくれなかった。もちろん許すつもりはないがでも……。




「いいよ。エミー」


 エミーに対して優しく答えたせいかアイザックが勘違いし声をかけてくる。




「ロック! やっぱり勝負はなしだ。仕方がないから俺がまたパーティーを組んでやるよ。10階層で置いていったのは仕方がないだろ。あれは必要な判断だ」




 アイザックが上から目線で俺に声をかけてきた。仕方がないで殺されそうになったらまた次も同じになりかねない。それにアイザックは明らかに俺に殺意をもっていたはずだ。




「悪いな。もうお前らとパーティーを組むことはない。俺はお前らと一緒に強くなるためにどうしたらいいかを考えてやってきていた。でも先に手を離したのはお前たちだ。一度壊してしまった物を直すのは難しいんだよ」




「えっロック私は? 私のこと助けに来てくれたってことは私とパーティー組みたいからじゃないの? 私も裏切られた仲間だよ」


 カラがなぜか私は大丈夫みたいな感じで俺の横にたっていたが予想外だったといった感じで声をかけてきた。




「カラなんでそうなるんだ?」


カラの発言にまったくもって意味がわからない。




「だって、私もアイザックやエミーとはもう組めないし1人で冒険者なんて嫌だよ」




「カラ……お前を助けたのは幼馴染だからだ。でもだからと言ってパーティーを今後も組むつもりはない。カラも俺が辞めるのに賛成していただろ? お前がアイザックやエミーとパーティーが組めないように俺もお前とは組めない」




「そんな……くそアイザック。お前のせいだぞ。昔から口ばっかりでお前が勝手にあんなの連れてきたりするから」




「はぁ? お前だってロックを使えないって言ってただろ。自分だけが被害者面してるんじゃねぇよ」




 幼馴染がお互いを罵り合っているのを見ているのはあまりいい気分ではなかった。


 それに彼らは今からまたパーティーを組んで俺と勝負をするはずだ。




「アイザック、カラもうやめよう。全部私たちがいけなかったのよ。滅火のダンジョンでわかったでしょ? ロックは私たちに沢山力を貸してくれていて道だって最短ではなく最善を選んでくれていた。それなのに私たちはなにも聞くことはなかった」




 言い争いをしていたアイザックとカラは下を俯いたまま何も言わなくなった。


 一度壊してしまったものはもう元には戻らない。


 それが目に見えないものならなおさら修復は難しくなってくる。




「それじゃあ勝負の話をしましょうか」


 リッカさんが俺たちに提案してきた勝負は俺の予想をこえたものだった。


 おい。これ大丈夫なのか? 


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ラッキー「残念だ……」

ロック「どうした? もうすぐ冒険だっていうのに」

ラッキー「ロックと初めて遊んだ大切な胸当てがなくなってしまった」

ロック「そっそうか。それは残念だな」

ラッキー「寂しくて仕方がないからこの下から★をいれて」

ロック「理由がメチャクチャ」


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