第20話:巨大クジラと巨大サメ

「アリステア殿」


「分かっています、ネコヤシキ殿、この者達の食糧ですね。

 確かにこの周囲にはキングアイスタイガーの食糧になる獣がいません。

 北方全体がとても厳しい環境になり、弱い獣は生きて行けなくなりました。

 かと言って、南も魔物が発生しているようです」


「遠く離れた南の事も分かるのですか」


「瘴気も、瘴気から生まれる魔物も、とても嫌な気配がしますからね。

 古代竜なら属性に関係なく分かりますよ。

 普通の竜でも、竜魔術で身体能力を強化すれば分かります。

 ネコヤシキ殿も試してみてはどうですか」

 

「ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン」


「おっと、サクラ殿が怒っておられますな。

 申し訳ない、今は食糧の話しが先でしたな。

 陸の上は食糧が少ないですが、海なら美味しい食べ物がたくさんありますぞ。

 クジラにサメ、イカやタコ、マグロにブリと捕り放題です」


「ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン、ニャーーーン」


「分かりました、直ぐに行きましょう、サクラ殿。

 サクラ殿とネコヤシキ殿はまだ狩に適した場所が分からいので、転移も超高速移動もできないでしょうから、我に捕まってください。

 我が連れて行って差し上げましょう」


「ニャッ」


 サクラが任せたと言っている。

 巨大な古代氷竜に対して完全な上から目線なのには笑ってしまう。

 それを受け入れる古代氷竜はサクラに恩を感じているのだろうか。

 などど考えながらも、俺とサクラは古代氷竜に乗って掴まった。

 とは言っても俺もサクラも幽体である。

 実際に身体で掴んでいるわけではない。

 幽体で掴んでいる気持ちになっているだけだが、それが大事なようだ。


「では行きますぞ」


 古代氷竜の言葉通り、一瞬で海の上に移動していた。


「あの巨大なのがクジラの群れです。

 それを追っているのがサメの群れです」


 古代氷竜の言う方角には、確かに巨大生物が群れをつくっている。

 クジラは全長30メートル体重200トンくらいに思える。

 一瞬でそう思えるのは、古代氷竜の知識を得ているからだろう。

 そのクジラの群れを追っているサメは、全長20メートル20トンくらい。

 サメを1匹狩るだけで、俺なら食べきるのに20年はかかるとおもう。

 クジラなら200年は毎日食べ続けなければいけなくなる。

 まあ、俺の分は少しだけもらって、大半はサクラとトラに食べてもらおう。


「くっ、くっ、くっ、くっ、とても美味そうだ。

 サクラ殿のお陰で何百年ぶりに食欲がわいてきた。

 皆殺しにして魔法袋に保管しておこう」


「おい、それは止めておけ。

 動物を狩る時には全滅しないように気をつけなければいけない。

 できるだけメスや子供は狩らない。

 オスも1頭は残して繁殖できるようにしておく。

 これが最低限のルールだぞ」


「ふむ、そんな事は気にした事がなかったが、ネコヤシキ殿の記憶を得て色々知ることができたから、本能に任して狩るわけにはいきませんな。

 クジラもサメも滅ぼすわけにはいきません。

 これから何百年生きるか分からないが、二度とクジラやサメが食べられなくなっては困りますからな。

 では、手本を見せますから、ネコヤシキ殿とサクラ殿も同じように竜魔術を使って狩りをしてください」


 古代氷竜アリステア殿はとても親切だった。

 強大な身体を使って狩るのではなく、俺やサクラだけになってもクジラやサメが狩れるように、竜魔術を使って狩りのお手本を見せてくれた。

 しかも俺達にも実際に竜魔術を使った狩りをやらせてくれた。


 更に狩ったクジラとサメを保管できるように、空間魔術で亜空間を作り、そこに獲物を保管する方法まで教えてくれた。

 よくラノベやアニメに出てくる魔法袋と言う奴だった。

 俺とサクラは完全にマスターするまでたくさんの魔術を使った。


「ケケケッ、カカカッ、ニャニャニャッ、ケケケッ、カカカッ、ニャニャニャッ」


 ただ、獲物を前にして狂喜乱舞して嬉しそうに鳴くサクラがちょっと怖かった。

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