くるみ(高校生)

 昼休みの教室。

 机を挟んで昼食をとる二人。


 A子「ほら見て」

 と左手の拳を右手のひらで押し、ゴリゴリ鳴らす。


 B子「おー。つよそー」

 A子「ふっふっふ……じゃーん」

 と手を広げる。


 B子「わっ、くるみだ。かたまり初めて生で見た」

 視線の先、A子の手のひらにはくるみが二つのっていた。


 A子「殻ね。これをこすり合わせて音を出してたんだ。昨日おばちゃんから送られてきて、面白そうだから持ってきた」

 B子「私もゴリゴリしたい」


 A子「いいよ。ほい」

 と、B子の手のひらにくるみをのせる。

 B子「おぉ……これが……じゃあやってみる」

 と、さっきのA子の真似をしてゴリゴリと音を鳴らす。


 B子「きもち~」

 A子「うん、つよそうつよそう」

 B子「へっへっへー、これから覚悟しやがれー……みたいな。でも手が小さくてくるみ見えちゃうし、ちょっと不自然かなぁ」

 A子「大丈夫、かわいい方向でつよそう。木の実好きの小動物っぽい」

 B子「えっ」


 A子「まだ家にあるからそれあげるよ」

 B子「あ、ありがと……。そういえばこれ食べられるの?」

 A子「うん。今は割れるような道具ないから食べられないけど」

 B子「そうなんだー」

 ためすように手で挟んでみるB子。


 A子「でも金づちとかなら学校にあるかも――」

 ふいにバキッと音がきこえる。


 B子「あ、割れた」

 両手を合わせて指を組んでいるB子。


 A子「えっ……。えっ、ホントに」

 B子「たぶん……」

 手を広げるB子。

 殻が割れて砕けている。


 A子「どうやったの」

 B子「ぐーってやって、押しつぶした」

 A子「……そっか。たぶんB子は、つよく見せる必要ないと思う」

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