思い出し(社会人)

 会社が休みの日曜日。

 ベッドでA子が目覚めると、目の前にB子のつま先。

 逆さの向きで眠っている。


「どうしてだっけ」


 忘れているからか、新鮮な気持ちで朝日色に並んだ爪に見とれ、B子のつま先に唇が吸い寄せられる。


 そしてA子は……なんか、いろいろと元気になってきた。


 体を起こす。

 薄いシーツ越しにB子の腰、滑らかな肩先に唇で触れる。

 向かい合って横になってみる。


「――あ」

 A子は口を開いた。


 感じるB子の静かな吐息。

 次の瞬間には開かれそうなまぶた。

 見つめられれば逃れられない。

 また眠るタイミングを逃すなこれは。

 と、A子は思った。


「ま、朝だけど」


 額を寄せてじっと見る。


 これで、元通り。

 次のことは、それからでいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る