第8話 愚者の歴史
飛行機が函館上空を通過したとアナウンスが流れた。
そう言えば、高校の歴史の先生が山内円山遺跡に住んでいた縄文人は確実に海を渡っていたと言っていた。だから函館には同水準の遺跡が埋まっているの。それなのに、当時の函館の市長がロマンに取り憑かれて、時代遅れのジャンボジェットを就航させ様とした。
その為に空港の滑走路を延長させた。結果、現在ジャンボなんかどこの空も飛んでおらず、遺跡もなくなってしまった。日本の歴史が覆る可能性があったのに。だから、利権にまみれていたり、現状認識が出来ないような年寄りに政治を任せるとロクなことにならない。
そう怒っていた先生は、歴史が好きと言う以上に情熱を持っていた。
歴史の授業には、苦い思い出がある。5年生になり、歴史の授業が始まって間もなくの事だ。
漢字が書けない俺はこの後、小中高と日本史の授業に苦しめられた。
しかし初めの頃は4大文明や猿人辺りを習うので、漢字も少なく楽しく勉強出来ていた。
そんな中初めてのテストで事件が起きた。
採点されたテストが返却された。例に漏れず、彼女は俺の隣の席だった。
好きな子が隣にいて、テストが返却されれば点数が気にならないわけが無い。
しかし、彼女はテストの左上を三角に折り曲げて見えない様にしていた。
よせば良いのに、好奇心に負けた俺は彼女の折り曲げられたテストを広げる。そして絶句した。
彼女のテストは3点だったのだ。もちろん100点満点中の3点だ。
彼女の顔を一瞬だけ見て目をそらす。無かった事にしたかった。
しかし、俺の行動に乗っかった後ろの席の男子が、よせば良いのにその点数を読み上げた。
自分の顔中の血液が、一気に足元へ下がる様な気がした。もう彼女の顔を直視する事が出来ない。
がしかし、彼女が泣いている事だけはわかった。3点を取って泣いている彼女に対して、誰がどんな言葉をかけて励ます事が出来たであろう。
きっと彼女は、その後一日中惨めな気持ちで過ごして、家に帰ったのだろう。
その原因を作った俺が、その後友達といつも以上にから元気で笑い合っていたのは、罪悪感を忘れるためである事は明白なのだが、それは彼女の目にどう映っていたのだろうか。
もし今の記憶を持って過去に行く事が出来たなら。という事は誰でも考えるが、小学校を卒業するまでその瞬間がやり直したい出来事ナンバーワンだった。
もしやり直せたなら、一緒に家で勉強に誘う事が出来たかもしれない。そうすれば、テストの点数も上がり、仲も良くなり一石二鳥だ。
とそんな妄想を日や繰り返していた、当時の俺の図太さが羨ましくもあり、鈍感さが怨めしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます