第14話 箸袋に包まれて(6月29日)

 先日、出前を頼んだ際についてきた箸を見ると、環境に配慮して紙袋を使用することとなったと記してあった。

 時世に合わせた企業努力に手を合わせて封を開けると、中はビニールでコーティングしてあり、その切れ端が顔を覗かせている。

 思わず苦笑してしまったのであるが、こうした環境保護主義の有難さには平伏せざるを得ないようである。


 再生可能エネルギーの利用拡大が叫ばれて久しいが、その雄である風力発電も太陽光発電も果たして環境に良いものなのだろうかと首を傾げずにはいられない。

 ここ五年ほどではないかと思うが、車や列車で山野を走ると海苔のように敷き詰められたソーラーパネルの群れを見かけるようになった。

 それを単純に景観上の無粋として敵視するのはあくまでも美意識の問題であり、環境問題からすれば脇に置いておくべきことなのだろう。


 しかし、果たしてこれは環境保全に繋がることなのだろうか。

 砂漠の真中や荒れ地の只中であればまだ許容されるのであろうが、山中に設ければそれもまた生態系に傷をつけ環境を破壊する行為となる。

 これを鑑みて休耕地に設ければよいという単純な思考もあるのかもしれないが、耕作地はあくまでも自然と人間の境目にある場所である。

 連句の言葉を用いて自他半と表現するのが最も似つかわしいのかもしれない。

 そのような土地をあの無機質な四角で埋めてしまえばどのような問題が起きるのか。

 世の中は回り持ちとはよく言ったものであるが、人間と自然が回り持ってきていたものを考えればどうしても悪い方向に思考が流れてしまう。


 とはいえ、昔の生活に戻ることも今更難しい。

 だからこそ単純な思考ではなく、叡智を結集するべきなのだろうが、その折り合いがこの箸袋に込められたものなのかもしれない。

 そう思うと、六月というのにどこか肌寒い想いがして、私は慌てて味噌汁を啜るのであった。


【今日の出来事】

◎全日空 今年のボーナスカットで労使合意

 昨年から旅客業は厳しいとは分かってはいるものの、それを象徴すると言っても過言ではない。

 労働者側も背に腹は代えられぬということであろうが、給与が減ることによる消費の冷え込みを考えれば一般にも関係してくる事案である。

 金持ちだからたまにはと僻んでいては、桶屋になることすらできない。

◎今年の阿波踊り屋内で実施

 迷走という言葉をこれほどに感じたのも珍しい。

 踊る阿呆に見る阿呆というが、政治が踊らされるような阿呆であっては困る。

◎天草市で草食恐竜の化石発見

 まだまだ身近にこうした太古からの贈り物が眠るかと思うと、胸のすく思いがする。

 暗い時世であるからこそ、こうしたことが清涼剤になるのだろう。


【食日記】

朝:ヌク

昼:カップヌードル~おだしが決め手の鶏南蛮そば、梅と昆布のおにぎり、鶏唐揚げマヨネーズ手巻き、野菜ジュース

夕:鶏唐揚げ、日本酒3合

他:おーいお茶1、タリーズブラック1

 この季節からブラックコーヒーと緑茶を並行して飲むようになるのだが、抹茶入りの爽やかなラベルのものを見かけてつい手に取ってしまった。

 酒も同じであるが、こうした一期一会は何とも楽しい。

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