第161話 両親への報告

 エルフ族の怪しい動きを調査するため、騎士団の一員としてトーネスの森を訪れることになった。

 その前に――両親にこのことを報告する必要がある。

 もちろん、その両親とは元叔父夫婦の方だ。


 移動には騎士団が馬車を用意してくれたので、それを利用することに。

 屋敷へたどり着くと、使用人たちが迎えてくれたが……みんなビックリしていた。

 それはそうだろうな。

 本来なら、俺はまだサーシャたちと夏のバカンスを満喫しているはずだし。


 俺が帰ってきたことはすぐに父上の耳に入り、執務室へと呼ばれた。さすがに、何か異常事態が発生したと察したようだ。


「一体、何があったんだ?」

「実は――」


 俺は父上にこれまでの経緯を説明し、エルフ族との通訳としてトーネスの森に向かうことを告げた。


「…………」

 

 父上は、しばらく無言。

 何かを思案するように俯き、しばらくしてからゆっくりと顔を上げた。

 そして、


「おまえ自身の考えを聞きたい」


 静かにそれだけを告げる。

 対して、俺はすぐに今回の件に関する自分の考えを伝えた。


「俺は……騎士団の力になりたいです」

「そうか」


 一度大きく息を吐き、イスから立ち上がった父上は俺を真っ直ぐと見据えて、


「――なら、存分に暴れてこい!」


 力強くそう言った。


「ち、父上……」

「OKを出したのが信じられないか?」

「い、いや、そういうわけじゃ……」

「私としてはむしろハーレイがそうやって自分がやりたいことをしっかり見つけてくれたことが嬉しくてね」


 そう語った父上の言葉は少し震えていた。

 ――思えば、俺はずっと父上に助けられてばかりいた。

 本家にいた頃は、マシューやロレインにバカにされ、家に居場所なんてなかった。どこにいても安らぐ瞬間なんかなくて、いつもビクビクしていた。

 でも、今は違う。

 父上の言ったように、俺は自分でやりたいことを見つけられた。

 この言語スキルを使って、誰かの役に立ちたいと、そう本気で思っている。今回のトーネスの森への遠征は、そのスタートだ。

 そんな俺の決意を父上は応援してくれるという。


「おまえも重々承知しているとは思うが……決して緩やかな道じゃない。険しく、時に心をへし折ろうとするくらい危険な道のりだ」

「覚悟はできています」


 間髪入れずに答えると、父上はどこか安心したような笑みを浮かべた。


「なら、俺から何も言うことはない。――ただ、これだけは忘れないでくれ」

「な、なんでしょうか」

「必ず……生きて帰ってこい」


 その言葉を耳にした時、まるで雷にでも打たれかのような衝撃を受ける。


「はい。絶対に生きて帰ってきます」


 両親はもちろん、サーシャたちにもまた会いたいしな。

 こうして、実家への報告が終わると、その日はそのまま屋敷に止まることとなった。


 気持ちも新たに、俺は自分の役目を果たすためにトーネスの森へ挑む。

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