第111話 告白
ソフィの言動により、学園のランチタイムは騒然となった。
マシューとか関係なく、男子も女子も大騒ぎするものだからソフィはすっかり怯えてしまっているようなので、そのまま手を掴んで食堂を脱出。行くあてもなくさまよい続け、ようやくたどり着いたのは――
「で、ここまで戻ってきたのかい?」
「はい……」
学園内の教会だった。
「まったく……目立つことはするなと言っておいたのに」
「ごめんなさい……」
シュン、と首を下げて謝罪するソフィ。どうやら、心から申し訳なかったと思っているらしく、その反省はシスター・セイナにも届いたようだ。
「まあ、やっちまったもんは仕方がない。――で、周りにはどう説明しておいたんだい?」
「彼女とハーレイは幼馴染で、とても親しい間柄であると。先ほどの発言は、あまりにも強引にマシュー・グルーザーが迫るため、仕方なくやった――ということをエルシーたちが説明して回っています」
あとからやってきたサーシャが、火消し活動について報告する。
あの場にいた学生の大半は、大声でソフィにプロポーズをするマシューの様子を見ているから、すんなり受け入れてくれているとのことだった。
「それにしても……マシュー・グルーザーの暴走にも困ったものだね」
「愚弟がいろいろすいません」
自分に強大な権力がついていることを理解しているからこそ、あのような振る舞いができるのだろう。――仮に、俺が同じようなことをしても、きっと元親はマシューのように手厚くしてはくれないはず。
そのマシューだが、今回の件に関してかなり怒っているらしいとサーシャから情報が伝えられた。
他の学生たちはそれほど気にしていないが、マシューからしてみれば大勢の前で恥をかかされたって感覚なのだろう。今さらその程度のことで他の学生からの評価が変わるわけがないのだが、ヤツからしてみれば大事件ということらしい。
「やれやれ……人間ってのは本当に分からねぇ生き物だな」
呆れたように呟いたのは、教会内の清掃に精を出すセスだった。
ちなみに、セスは俺が人間の言葉を教えてからも独学でいろいろ習得したらしく、「はい」や「分かった」、或いは「そう」、「違う」というように、極力短い言葉で自分の意思を表すくらいはできるようになっている。これにはシスター・セイナも感心していた。
話を戻して――マシューは恐らく、まだソフィをあきらめてはいないだろう。
シスター・セイナもそのことは重々承知しているらしく、しばらくはソフィの外出を制限するという。
それを聞いて落ち込むソフィだが、彼女の安全のためにも、そうした方がいいだろう。
とりあえず、事態の報告はこれにて終了。
俺は本来の任務である、ガステン・ドーマンとの接触を試みることにした。
結局、その日は午後から休学し、一度寮へと戻った。
それから改めて、ガステンのもとを訪れ、言語スキルを駆使して情報を聞きだす作戦を実行に移す。
「さて……情報によれば、ここら辺で花壇の手入れをしているはずなんだけど」
並木道を歩きながら、俺はガステンを捜す。
しばらく辺りをうろついていると、何やら物音が聞こえた。
直後、
「――――」
かなり小さいが……今のって、悲鳴か?
「誰かが襲われているのか!?」
ふと、脳裏に負傷したガインさんの姿がよぎる。
嫌な予感がした俺は、急いで声のした方向へと駆けだす。
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