第105話 教会へ
学園に蔓延る闇を炙り出すため動き始めた俺たち。
それを察知したゾイロ騎士団長は、増援としてリザードマンのセスとハーフエルフのソフィをこっそり学園内へと潜り込ませていた。
――しかし、それを実現できたのはゾイロ騎士団長だけの力ではない。
騎士団だけでなく、学園内にもこの闇を払おうと動きだした者たちがいた。
そのうちのひとりが……教会にいる。
俺には、ゾイロ騎士団長に協力し、あのふたりを学園内に招き入れた人物に心当たりがあった。俺だけじゃなく、サーシャも勘づいているようだ。
とにかく、俺たちはまずその人物に会うため教会へと向かう。
すでに授業が終わり、学生たちは自由な時間を過ごしているため、この教会近くに人の気配はほとんどなかった。
扉を開けて中へ入ると、礼拝堂にある長椅子に人影を発見する。まるで俺たちを待ち構えていたかのようだ。
その人物は俺たちが入ってきたことに気づくと、ゆっくりと立ち上がってこちらへと振り向く。――そこにいたのは、俺が想像していた通りの人物だった。
「やっぱり、あなただったんですね……シスター・セイナ」
「なんだ。勘づいていたのか」
そう言って、こちらに鋭い眼光を飛ばすシスター・セイナ。
彼女は元騎士団の人間であったが、戦場で生死の境をさまようほどの大怪我を負う。なんとか一命はとりとめたものの、左腕には後遺症として麻痺が残り、それが原因で騎士団を去ることとなった。
騎士団ともつながりがある彼女のなら、ゾイロ騎士団長の提案を断るはずがないだろう。特に、あの人は元々ゾイロ騎士団長が率いていた分団の所属。普通の騎士よりも一緒に仕事をしていた期間が長いときている。可能性は大いに考えられたわけだ。
「あんたが騎士団長の言っていたハーレイ・グルーザー?」
「は、はい」
「ふーん……シャルトラン家とライローズ家の仕掛けたイカサマを蹴散らして勝利したって聞いたからどんな豪傑かと期待して待っていたんだけどねぇ」
短い緑色の髪を揺らしながら、シスター・セイナはこちらへと近づいてくる。
……念のため、嘘看破のスキルを発動させておくか。
「うん? ――なるほど。今発動させたのが言語スキルってわけね」
「!?」
まだ何もしていないのにバレた?
どういうことだ?
「『なんでバレたんだ?』って顔をしているな」
「えっ?」
こちらの思考も読まれた?
ますます謎が深まる……。
「そう怖がらなくていい。これがあたしのスキルみたいなものだからね」
「シ、シスターもスキルを?」
「こう見えて元騎士だからね。魔法が使えない分、こっちで補うしかないでしょ?」
魔法を扱えない騎士のほとんどが、スキルを取得している。
スキルは魔法ほど使い勝手がいいわけじゃないから、どうしても下に見られがちなんだよなぁ。使いようによってはいろんなことができるので無限の可能性があると言って過言じゃないと個人的には思っているんだけど。
ともかく、シスター・セイナのスキルは特定条件下でのみ、相手の考えを読み取れるものらしい。それってかなり有用だよなぁ……特に騎士という立場なら。条件次第だけど、相手の攻撃を先読みできるわけだし。
「さて、メンツも揃ったことだし、作戦会議といくか」
「メンツって……まだエルシーとポルフィとマイロが別行動をしています」
「その三人ならもう来ているよ」
「えっ?」
どうやら、すべてシスター・セイナの計画通りらしい。
それにしても……作戦って、一体何をする気だ?
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