第88話 ハーレイ、悩む
クラス分け試験以降、会う機会のなかったサーシャやエルシーとの再会。
それは、俺にアーニー・ライローズへ立ち向かう勇気をくれた。
Cクラスへの挑戦は、他にも俺にとって好影響が多かった。
まず、同じDクラスの学生たちから声をかけてもらうことが増えたのだ。
Eクラスの時は、そもそも昇格試験を受けようと意欲を出しているのが俺とポルフィ、そしてマイロの三人くらいだったので、そもそも興味を持たれることがなかった。
しかし、Dクラスともなると、昇格に意欲を見せる学生がチラホラ見受けられる。そんな彼らにとって、実力は遥かに上位でありながら、格下の相手をいたぶることを目的に昇格試験を受けるアーニーは厄介な存在であった。
そんなアーニーへ挑戦状を叩きつけた俺に対し、激励や心配をしてくれる者が多かった。
「頑張れよ、ハーレイ!」
「応援してるぞ!」
「あんなヤツに負けないでね!」
「任せてくれ」
みんなの声援を無駄にしないためにも、必ず勝たなくちゃな。
――というわけで、気合を入れて授業後の鍛錬に取り組むのだが……俺はひとつ悩みを抱えていた。
それは、ロバート・シャルトランを倒した時のアレが未だに使いこなせていないということだ。
アーニーも間違いなく、ロバート同様に不正を働いてくると予想される。始まる前からすでに対等な立場での戦いではないのだが、そんな逆境をひっくり返すにはあのスキルが必要不可欠であった。
「一体……どうすれば……」
消灯時間が迫る中、俺は頭を抱えていた。
――と、その時、背後に気配を感じて振り返る。
そこにあったのは学園の敷地と外部を隔てるために建てられた壁。だが、よく見てみると、壁の一部に紙が張りついていることに気づく。
「? なんであんなところに……」
気になった俺はその紙を手にしてみる。
すると、そこには何やら文字が……読んでみると、
「『今夜十一時に指定の場所へ』……?」
紙には俺の名前が書かれており、また、時間と場所が指定されていた。
それにしても……随分汚い字だな。まるで文字を書くのに慣れていないといった感じだから送り主は貴族じゃなさそうだ。
「一体誰だろう……」
消灯時間を過ぎた時間に待ち合わせなんて……まあ、抜け出すことはわけないが、念のため武器を持っていった方がよさそうだ。
――そして、約束の時間がやってくる。
俺は部屋からこっそり抜け出し、気配を殺して寮を飛びだす。
目指すは約束の場所。
そこへ近づくと、俺は何者かの気配を感じ取った。
……ひとりじゃない。
俺を待ち受けているのはふたりだ。
「誰なんだ、俺を呼んだのは」
目的地に到着すると、先行しているだろう呼びだした者へ向かって語りかける。
すると、近くの茂みがガサガサと揺れ出し、そこからふたつの影が俺の前に姿を現した。
「久しぶりだな、ハーレイ」
俺を呼びだした者の正体とは――
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