第37話 交流
翌日の仕事終わりに早速モンスター村を訪れて農業の指導に入る。
村のモンスターには前日に提案をし終えているので、俺が到着した時にはすでに準備万端であった。どこかで拾って来たのだろう、ボロボロのスコップや鍬を手にしていた。
「それじゃあまずは地面を耕すところから始めよう」
「「「おおう!」」」
俺の呼びかけに息の合った返事をするなんとも素直なモンスターたち。そこまでヤル気を出してくれるなんて、こっちとしても教え甲斐があるよ。レヴィング家で関係書類を漁り読んだよかったな。
モンスターたちは俺の指示に従い、道具を器用に使って村の外れに用意しておいたという土地をならしていく。もともとパワーは人間以上なので、思っていたよりも早く済みそうだ。あとは大きな岩を取り除きながら平坦に整えればとりあえず下地は完成だ。
和気藹々と楽しみながら作業を進めるモンスターたち。さて、しばらく俺の出番はなさそうなので、その合間にもうひとつの依頼――ソフィに言葉を教える教師役としての仕事を進めるとしよう。
――と、思っていたけど、
「あれ? ソフィは?」
肝心の生徒――ソフィの姿が見当たらない。他のモンスターに混じって土いじりをしているわけでもないようだけど。居所について、セスにたずねてみると、
「そういやまだ泉から戻ってないな」
「泉?」
「あいつのお気に入りの場所で、この村からすぐ近くにあるんだ。凄く透明感のある綺麗な泉なんだよ」
「へぇ……じゃあ、俺がソフィを呼んでくるよ。その泉も見てみたいし」
「すまねぇな」
一旦その場を離れ、ソフィのいる泉を目指して歩き出す。と言っても、セスの言った通り、村からは目と鼻の先の距離にあるのですぐわかった。
「おおっ! たしかにこれは凄いな! 水の底がハッキリとわかる!」
俺は興奮を隠しきれず泉へと駆け寄る。このまま口に含んでもまったく抵抗感を覚えないだろうと泉の水。思わず飛び込みたくなる衝動さえ湧いてくる――と、
チャプン。
水面に広がる波紋。魚でもはねたのか? 俺が音のした方へ目を向けると――魚などではなかった。
そこにいたのはソフィアだった。
「ここにいたのか」――と、声をかけようとして、俺の思考は停止した。ソフィアは水浴びをしていた。まあ、これだけ綺麗な泉なのだからしょうがない。
――問題なのはその格好だ。
一糸まとわぬ生まれたままの姿……ようは全裸なのだ。そして、全裸を見られたというのにまったく隠す素振りがない。慌てたり悲鳴をあげたりもない。ただ、俺がアワアワと動揺している様をカクンと首を傾げながら眺めているだけだったのだ。困ったような表情こそしているが、体を隠すような素振りは見せない。
も、もしかして……この子には羞恥心がない?
でも、最初に会った時は服を着ていたのよな。てことは羞恥心がある? ただ希薄なだけなのか? いやいや、そんな根本的な問題じゃないぞ。
これは前途多難だな……。
とりあえず、服を着てもらって、それから言葉や常識を教え込んでいくとしよう。
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