DAY 86-1
ふかふかの布団に包まれながら、ベレスは目を覚ましました。
寝ぼけ眼で辺りを見渡すと、そこはさまざまな装飾が施された、豪華で大きな部屋。
そして美味しい匂いもする、知らない場所でした。
「⋯⋯ここ、どこだ⋯⋯」
布団を剥がし、豪華そうなベッドから身を飛び出して周りを彷徨いて時間を過ごしていると、扉をコンコンとノックする音の後に、曖昧な意識の中で見た少女が現れました。
少女は白いコートに身を包んでおり、素顔もフードを被っている為、ハッキリと姿を確認する事ができません。
謎の少女は扉を静かに閉めると、ゆっくりと口を開き始めました。
「おはようベレスさん。調子はどうですか?」
ベレスは疑いながらも答える事にしました。
「⋯⋯あ、ああ、何ともない。怪我も無くなってる⋯⋯お前がやったのか?」
なんと魔族長と死に物狂いで戦った時の傷やボロボロになった服は、全て綺麗なままに戻っていました。
「⋯⋯気付いていない、か」
「⋯⋯?」
聞こえない程度に少女は囁くと、徐々に歩きながら話を続けました。
「なんにせよ、無事なら良かったです。後ほど賢者達からお呼び出しがあると思いますので、それに従って、余生をお過ごしください」
「何言ってるんだ⋯⋯? 余生って⋯⋯それに賢者も⋯⋯っ!?」
少女が移動した先の光景を見て、ベレスは驚きで言葉を失います。
「⋯⋯賢者がここを訪ねてくる前にお暇します。ではまた後でお会いしましょう」
「⋯⋯あっ待ってくれ! どういう事なんだ⋯⋯なんで私は⋯⋯!」
戸惑うベレスを見て、少女は自分の唇に指を当てて冷静を保つよう言いました。
「シーッ⋯⋯慌てないでください。後で全て分かりますよ。貴方の知りたい事も、貴方の正体も未来も全て」
少女は気にかかる言葉を投げて、この部屋を後にしました。
そんな一人残されたベレスの目の前には、先程眠っていた豪華そうなベッドと⋯⋯。
そこで眠る、もう一人の自分が居たのでした。
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