DAY 50-2
「⋯⋯全ては予言通り、という事なのだな⋯⋯知っておる。が、その前に他の魔族は去れ、二人と話がしたい」
そう言うと、周りにいた魔族たちは一つ返事でこの場を去っていった。
「パパ⋯⋯?」
「ベレス、お前がここへやって来る事は既に分かっていた」
「な、なんでそんな事⋯⋯既に分かってたって⋯⋯!?」
「貴方? まさか⋯⋯」
「ああ、グシオン。お前の元へ渡されたというあの本を読んだのだ」
「⋯⋯! そう、ですか⋯⋯では彼女が渡した本はやはり⋯⋯」
「な、なに、どういうこと?」
「そう、アレはまさしく予言の書であった。ベレスよ、お前がここへ来る事も書かれていたのだ。だから今回の事も、我だけは分かっていた」
言葉を失いそうな衝撃だった。
まさか、私が過去にやってくることが予言通りだったなんて、信じられなかった。
「⋯⋯未来の事、全部載ってるの⋯⋯?」
「残念ながら全てではない。だが⋯⋯どうやら我らは、勇者によって終わりを迎えるらしいな⋯⋯今まで信じてはいなかったのだが」
「そんな⋯⋯」
「グシオンよ、そう落ち込む事はない。未来から大きくなった娘がきたのだ、僅かに希望はあるという事だろう。してベレスよ、お前がここへ来たのは何の為だ?」
「⋯⋯魔王城を、魔族から、取り戻す為です⋯⋯」
パパにも、私の現状を全て話した。
ママと違って険しい表情をしながら、私の言葉を玉座から受け入れていたと思う。
だから、少し躊躇いを感じながら話した。
「我の配下が、お前を弄んだ、という事か⋯⋯」
「うん⋯⋯」
「しかし、未来を変えてしまえば今のベレスの存在が危うくなってしまう。我々にはどうする事も出来んな⋯⋯ああ、煩わしい事よな」
「ベレス⋯⋯貴方はどうしたいのかしら?」
ママが静かに問いかける。私の答えはもう決まっていた。
「そいつらに負けないくらい強くなりたい⋯⋯私、弱くて何も出来なくて⋯⋯助けられてばっかりだったから」
「力を欲する、か。ベレスよ、お前には今何が出来る?」
「今は⋯⋯光魔法が撃てる」
「⋯⋯そうか」
「⋯⋯?」
光魔法が扱える事を伝えると、パパはボソボソとなにやら呟き始めた。
「⋯⋯うむ。娘の頼みならば聞くべきだな。では、我の力の半分を使って、お前を鍛え上げてやろう」
「っ! ダメです、あなた。そんな事をしては勇者との戦いが!」
「構わない、それも予言の通りだ」
「パパ⋯⋯」
「ふはは、ベレスよ。大きくなっても、パパと呼んでくれるのだな。このハニバル・クレアーレ・ヴェルム、お前に賭けよう」
パパは空から杖を呼び出し、私に向けてかざした。
そのかざした空間から裂け目が生じ、私だけを飲み込もうとし始めた。
焦る私はパパとママを見つめたが、二人は冷静に、私を見送っていた。
その表情を見て、私の中で少し勇気が湧いた。
そうだ、もう私の近くに二人は居ない。
突然の別れなんてもう慣れただろ。
この空間は、パパが残してくれた私への祝福だ。
何もない暗闇から迫り来る影を、全部倒せばいいんだよね。
「ウオオオラァァーッッ!!」
暗闇の中で、私の魔法だけが光を灯す。
成し遂げてみせよう、どれだけの時間をかけてでも、私はこの空間で強くなって、戻ってみせる。
「ベレス、お前の為ならば我の命など惜しくない⋯⋯なあ、グシオン、アーガルミット。娘の為に世界を捨てる覚悟で居なければ、次を託す事など出来ないのだ」
「唐突なスパルタだけれど、ベレス⋯⋯ずっと元気で居てね⋯⋯」
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