第49話 可愛い麻沙美先輩



「…………」



 気まずいというか、嬉し恥ずかしというかな雰囲気が流れいてる。

 行為を終えてから、麻沙美まさみ先輩は終始無言なのであった。

 枕に顔を埋めて、ぐりぐりと顔を横に振る姿は、ちょっと可愛いと思えてくる。

 そんな感想を抱いた瞬間、麻沙美先輩がバッとこちらに顔を向けてくる。



「今、可愛いとか思っただろ……」



「え、いや、思いましたけど……、思っちゃ駄目なんですか?」



「~~~~~~っ!!」



 僕がそう返すと、麻沙美先輩はペチペチと背中を叩いてきた。

 素肌に直接なので、地味に痛い。

 でも、そんな仕草もまた可愛いと思えた。



「やめるんだ! そんな微笑ましいものを見るような目で見ないでくれ!」



「いや、そんなこと言ったって無理ですよ。麻沙美先輩、可愛すぎますし」



 はっきり言って、これ程までに可愛い麻沙美先輩は、今まで見たことがない。

 映像に残して、あとで伊万里いまり先輩にも見せてあげたいくらいだ。



「それより麻沙美先輩、もう大丈夫ですか?」



「……まだ、少しヒリヒリする」



「それは……、なんと言うか、すいません」



「謝らないでくれ! 私がやらせたんだからな!?」



 そうなのだが、やはり男としてはどうしても思う所がある。

 もう少し優しくできなかったか? とか一度止めた方が良かったんじゃ? とかだ。



 麻沙美先輩の破瓜の痛みは、中々にキツイものだったらしい。

 シーツを掴んで歯を食いしばる姿は、正直見ていて痛々しいものであった。

 当然、僕はやめることを提案したのだが、麻沙美先輩はそれを良しとしなかった。

 僕が果てるまで続けないと、舌を噛んで死ぬとまで言われたので、続けざるを得なかったのである。


 そんな状態で耐え忍ぶ麻沙美先輩の姿は非常にいじらしく、僕は思わず自分からキスをしにいってしまった。

 それに応えるように開かれた唇は僅かに震えており、それがまた愛おしくて堪らず、僕はむさぼるように唇を味わった。

 その時の胸の高鳴りを思い出し、僕は再び麻沙美先輩のことを抱き寄せる。



「と、藤馬君!?」



「麻沙美先輩、本当に可愛いですよ」



「や、やめろ! 背中がかゆくなる! 耳元でそんなことを囁かないでくれ!」



 本当に、なんでこんなに愛おしいのだろうか。

 つい先程までは愛情と同じくらい同情の念もあったハズなのに、今はそれが完全に消えてしまっている。

 仲直り〇ックスなんて言葉があるが、本当に〇ックスにはそのような効果があるのかもしれない。



「……伊万里はその、どうだったんだ?」



 暫し無言で抱き合っていると、麻沙美先輩がそんなことを聞いてくる。



「どうって言いますと?」



「だから、〇ックスだよ。初めてのときは、どうだったんだと思って……」



「それは……、言わないとダメですか?」



「言ってくれ! 気になるんだ……」



 こういうのって、普通他の人と比べられるのって嫌だと思うんだけど、麻沙美先輩らしいというか……



「伊万里先輩は、あまり痛みがなかったみたいです」



「なん……、だと……。じゃあまさか、二回戦も……」



「その……、はい……」



 つい先日のことだが、やはり思い出すと恥ずかしくなってくる。

 求められての行為だったが、僕としても満更ではなかったからな……



「……よし、藤馬君。二回戦といこうか」



「駄目ですよ! そんな状態の麻沙美先輩とはできません! さっきまだヒリヒリするって言ってたじゃないですか!」



「そうなんだが……。ぐぬぬ……」



 いつものように伊万里先輩に対抗心を燃やす麻沙美先輩も、今なら可愛く見えてしまう。



「大丈夫ですよ。僕はとっても満足できましたから」



 そう言って、麻沙美先輩の頭を優しく撫でる。

 外国の血が混じってフワフワな髪の毛は、とても触り心地が良かった。



「これ、言ったことは秘密にしておいてくださいね? 実は伊万里先輩、二回目は途中で気絶しちゃったんですよ」



「そ、そうなのか?」



「はい」



 本当は僕も伊万里先輩もしっかり果てた上でなのだが、それは言わなくていいだろう。



「……じゃあ、他には? 他には何をしたんだい?」



「それは、最初に説明したじゃないですか……」



 行為の最中も、麻沙美先輩はどんなプレイをしたかなど、詳細な説明を求めてきた。

 伊万里先輩とした行為は、余さず自分もしようと思っていたのだろう。



「じゃあ、私は量で伊万里を上回ってやろう」



 そう言って麻沙美先輩は僕のホールドから逃れ、布団に潜り込もうとする。



「ちょ、麻沙美先輩、ナニをするつもりで……」



「問答無用だ。今日はまだたっぷり相手をして貰うからな!」



「ちょ、アッーーーーーーーーーーーーーー!!!」





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