第14話 霧に隠された甘い花の島

 霧の中を進む。

 神津島で耳にした情報通り、霧がよく発生するというのは本当らしい。

「これ、方角合ってるんですかね――――あ、」

 視界が開けると、少し先に満島が現れた。

 島自体が一つの森になっているかのように、青々と生い繁った木々が島を覆っている。一ヶ所入り江がある以外は、絶壁になっているようだ。

 吸い寄せられるように、入り江に近づいていく。


 ボートから一歩足を踏み出す。

 象牙色の砂浜には、ちらほらと星の形をした砂が見える。

「もっと南に行かないと生息していないはずじゃ……?」

「どうしました?」

「いや。ここの砂、採取しておこう」

 発見された舟からは、場所を特定できるような付着物は見つからなかった。役に立つかはわからないが、念のためポリ袋に入れる。

「うわぁ、花の香りですかね?」

 警戒心なく歩き回る安東に、少し心配になってくる。

 息を吸うと、ひどく甘い匂いが鼻腔いっぱいに広がって、肺にまで充満するようだ。


「――――誰?」

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