第11話 木精

 少しの沈黙の後、伊崎は説明を続けた。

「血中や臓器から、微量ですがアルコールが検出されました。これは当初の検査で判明していましたが、死因に繋がるような数値ではありませんでした。飲酒の形跡もなく、エタノールは死後産生されますから。ただ、死後産生されるエタノールというのは、腐敗によって産生されるものなんです。……ご覧の通り、腐敗はまだ始まってすらいません。それで詳しく調べてみたところ、体内で生成される以上のメタノール、そしてホルムアルデヒドが検出されました。――さらに不可解なのは、皮膚細胞から一番多く検出されたという点です」

「えっと、つまりどういう……?」

 理解できていないのは自分だけなのか、という表情で安東がこちらを見てくる。

「――――メタノールはアルコールの一種で、ホルムアルデヒドの原料でもある。ホルムアルデヒドの水溶液がホルマリン」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る