プロローグ
〈2014年2月20日 午前4時38分 アメリカ合衆国ミシガン州 特区36番地 ターチィ領三等区〉
賭場で有り金をスッた堕天使が、腹立ちまぎれに水の入ったバケツを蹴飛ばした、そんな雨だった。
でなければ、この季節のミシガンで雨などあり得ない。
男はフードを目深にかぶり、ポケットに手を突っ込んで首を竦めて屋根から屋根へ渡り歩いた。
当然、傘など持っていなかった。
みぞれならまだ可愛げがあるものを、降りしきる粒はすべて凍てつく寸前の水だ。吹雪に晒されるよりずっと寒い。
せっかく飲み明かして温めた体もあっという間に冷え込んだ。忌々しいったらありゃしない。
――案件は切られるし、ほんとツイてねえ。
舌打ちするにも白濁した息が漏れ出て、自分の惨めさが余計に染みる。
久しぶりの大きな仕事だった。
だが八割がた片付いたところで、依頼主から打ち切りの報せを一方的に受けた。もちろん前金もなかった。
情報屋である男の仕事は基本、不定期だが、ここ一年は報酬5000ドルを超えるものはほとんどなくなった。
あの代行屋が取り仕切る27番地のせいだ。
特区の物流を担うあの連中は、その商売の片手間に伝書鳩もしやがるのである。
「片っ端から安請けしやがって。情報ってのは信頼関係が命なんだぞ。棄民が持ちこむカスネタになんの価値があるってんだ」
ブツブツ呟きながら、男は屋根沿いに下がる雨水のカーテンを迂回して避ける。
特にあの代行屋だ。あいつが一番よくない。
統治者らしく偉そうにふんぞり返っていればいいものを、小間使いよろしくちょろちょろ出向いては五大マフィアに高値でネタを売りつける。
奴の立場なら各一家の幹部と渡りをつけるのも容易い。なんなら当主本人に持ち込むことだってできる。
幹部子飼いの手下に会うのが関の山の自分とは、雲泥の差だ。
利用できる手数も多いぶん、得られる商品の質も高い。自分のようなはした情報屋は商売あがったりだ。
近頃ではヴァレーリ・ロバーチ両家からの依頼は皆無、ターチィ一家からのも減る一方だ。
いっそのこと、ミチピシ領へ出向いて国からの仕事でも貰おうか。
――この俺が堅気の仕事に惹かれるとはなぁ……とうとう焼きが回ったかね。
濡れぼそった鼻先を拭うついでに鼻をすすって、冷えた指先をすぐポケットの中にしまい込む。
赤茶色い煉瓦のビル角から飛び出してきた人物と、ぶつかりそうになったのはその時だ。
衝突は避けられたものの、走る奴が撒き散らした水溜りの水をもろに食らって、男は飛び出しかけた悪態を辛うじて堪えた。
情報屋としての嗅覚がなせる技だった。
ここ一帯は三等区の貧民街。
上質な絹のスーツをまとった男などまず見かけない。
しかもスーツの色は黒、胸元の
VIP専用の高級ホステスの部下がこんな雨の日に貧民街をうろついている。もうネタのにおいしかしない。
男は素早く周囲に目を走らせ、雨の中を飛び出した。
先ほど部下が飛び出したビルを左へ回り込む。ここいらは俺の庭だ。より隠れやすく、よりひと目のつかない場所がどこなのか知っている。
路地の換気扇裏に隠れながら、白い息が漏れぬよう首を竦めてじりじりと移動する。
いた。
先ほどすれ違ったのと同じ、スーツ男が七、八人、煉瓦ビルの裏口に待機させた車の周囲で待機している。
上を見れば、六階あたりで備え付け照明以外の明かりが見えた。
男は裏口から一番遠い非常階段を、ゆっくりとあがった。
雨が降っていてよかった。登るたび軋む足音が掻き消える。
先ほどと真逆の都合のいい評価をしながら、男は六階に辿り着いた。
明かりの主たちは、非常階段の男から三部屋しか離れていなかった。
段ボールに詰め込んだ何かをひたすら運び出している。テレビ報道で見るFBIの家宅捜索のようだ。
そして思ったより近い。目視情報のみと割り切っていたが、これなら盗み聞きもいけるかもしれない。
一気に階段を登った息を整えながら、男は首を引っ込め、じっと耳を澄ませた。
そして仰天のあまり全身を硬直させた。
意を決して、再びそろりそろりと角から顔を覗かせる。
スーツ男に混じって、女がいた。
間違いない。スーツ男たちの頭領、ナンバー持ち妓女ご本人だ。
これはとんでもないことだ。
風俗業を主体とするターチィ一家において、ナンバー持ち妓女は他一家の幹部と同等の存在だ。
それがこの貧民街の、築云十年の碌な暖房もないボロアパートから、何かを必死に持ち出している。
女が振り返り、毒々しいほど真っ赤な唇が動く。
一番近くにいたアジア系のスーツ男に耳打ちで指示しているようだった。
流石にこれは聞き取れなかったが、直後、女が顔を覆って漏らした声は辛うじて耳に入った。
「どうして……――、……ないと……」
隠さないと、か?
男は確信した。
ここから持ち出されたものは、あの妓女にとって都合の悪いものなのだろう。青楼の娼婦どもに持ちかければ高値で売れる。
あそこは醜悪な泥沼の闘争が繰り広げられる魔の巣窟だ。ナンバー持ちの妓女となれば、引きずり下ろしたがる女は腐るほどいる。
――待てよ。あの女、他のナンバー持ちとも仲が悪かったな。
しばし逡巡し、男は静かに踵を返した。
ネタを売り込む顧客を見定めたのだ。
どうせ売り込むなら、陰口と嫌味と派閥争いに明け暮れる安い売女どもより、金持ちで権力があって気前のいい女がいい。
同じナンバー持ちの女とか。
同僚を引きずり下ろせば、それだけ組織運営に綻びがでるという思考は、あの馬鹿女どもにはない。いい餌になるだろう。
幸いなことに、三年ほど前に一度だけ男は、先ほどの女とは別のナンバー持ちの妓女からの依頼を請け負ったことがある。
自分以外にも十人ほどが同時参加した依頼ではあったが、繋がりは繋がりだ。これに賭ける。
ビルを離れ、大通りを避けて土砂降りの路地を進む。自分がここにいたという情報は一つも残したくなかった。
若くはなかったが、息をのむ妖艶さと、綺羅星のように輝く無邪気な瞳のアンバランスさがやけに印象に残る女だった。
特区設立から数年後にきた“出遅れ”だというのに、半年と経たず最高ランク妓女に昇り詰めた紛れもない才媛だ。
ただ一点、奇妙というか、風変わりなところがあった。
自分を『メリーナ』と呼んでほしいと言ったのだ。
曰く、ロンドン塔で飼われていた雌のワタリガラスで、三年前に死んだのだという。
塔からカラスがいなくなると国が滅ぶという迷信を、未だに信じるあの国らしい古臭い風習だが……なぜあの女はそんな鳥の、しかも死んだ鳥の名前で呼ばれたがったのか。
――ワタリガラスといえば、女神『モリガン』ぐらいだが。
まあいい。
今はともかく、自分が持ち込んだネタをあの女がどう評価するかだ。
男は女へ送るメールの文面を思案しながら、数歩先の水溜りを盛大に踏み荒らした。
***
〈2014年2月21日 午後6時50分 アメリカ合衆国ミシガン州 特区27番地〉
――返信こないな……。
朝昼晩と確認しては閉じるを繰り返したメールアプリを再び閉じ、ハウンドは椅子の背もたれに後頭部を投げ出した。
数少ない友人だった。この特区で女性の友人は、彼女ぐらいだった。
彼女の性格的に、約束を齟齬にすることはないと考えたいが。
――まあ、切られても文句は言えないわな~……。
アッパー半島での争乱より三週間。
自分のうなじに埋め込まれた『失われたリスト』は、完全に失した。
五大マフィアにとって、自分は用済みの存在だ。五大に属する彼女が、仮に自分と関係を断ったとしてもなんら不思議なことではない。
そもそも友人といっても、所詮は客と妓女の関係。当てにする方がどうかしている。
それでも、多少の落胆は拭えない。
打てる手段がほとんどない現状では、尚更それが堪えた。しかも自業自得により生じた問題ともなれば、嘆く資格もありはしない。
「ハウンド、紅茶のお代わりいる?」
ノックされたドアから、はしっこそうなプエルトリコ系の少年がひょいと顔を出す。
27番地所属少年団のリーダー、ルカだ。
ハウンドは首を振った。
「いやいい。これ以上飲むとトイレから離れられなくなる」
「もうポット二つ分は飲んでるもんね。大丈夫? ほんとに手伝うことない?」
愉快そうに笑う声と裏腹に、寄ってくる少年の顔は真剣だ。熱を出してなお大丈夫と強がる弟を見るような目だった。
安易な虚勢は無意味、と判断したハウンドはなるべく正直に話すことにした。
「仕事とか依頼の話じゃない。ただこの先、27番地をどう守ったもんかと思ってな」
「まぁた一人でそういうことする……。店長も言ってたじゃん、みんなで考えようって。背負い過ぎだってば」
「統治者として最低限の務めだ」
「あのさあ」
まだ何か言おうとしたルカの頭を撫でくりまわして黙らせる。
「投げ出してもまた任せてもらえるのが嬉しくてやってるだけさ。今日もありがとな。下にニコがいるから、賄いでも食っていけ」
そう言って帰りを促すと、ルカは視線を周囲に投げ散らかし、ニット帽を目深にかぶって「また来る」とだけ言って、そそくさ出ていった。
実に思春期らしい反応だ。
軽い足音が走り去るのを聞き遂げて、ハウンドは目元を両手でこすった。そして天井を悄然と見上げ、手を下ろす。
――特区解体後の、27番地住民の保護。アメリカ合衆国への復帰と再就職支援。分かってはいたが、厳しいな。
はじめは、どうでもいいと思っていた。
所詮は死んで目的を果たすまでの巣、最低限のことができればそれでいいと思っていた。
住民の自治を認めたのだって、自分が完全に取り仕切っては身動きが取れなくなると思ったからだ。
住民を守ったのも、すでに死亡した住民の遺体・遺品を回収して回ったのも、自分の所有物が無下にされるのが気に食わなかったからだ。
棄てられ、見放されて、諦めて俯いている連中が気に食わなかった。だからその尻を蹴飛ばした。
それだけだった。
それを、何を勘違いしたのか、住民は自分を慕い始めた。
無責任極まる小娘でも五大よりマシと考えただけだろうが、統治者の責務を二度も放棄した自分を、彼らは捨てなかった。
アッパー半島で死にかけた自分を連れ戻して保護し、治療した。
現在、自分は療養中ということで、住民こと27番地商業組合は統治者代行を選出し、業務のすべてを住民だけで回している。
だがそれも自分が復帰するまでだ。
統治者代行として選ばれたカフェ『BROWNIE』の店長、ライオール・レッドウォールは委任状への署名を頼みながら、「少しだけ名をお借りするよ」と柔和に微笑んだ。
追い出さないのかと尋ねると、「追い出されてたいのかい?」と逆に尋ねられた。
その背後にいた商業組合の面々も、自分が戻ってくると信じて疑っていない風だった。
むしろまだ隠していることがあるのか、また一人で戦いにいく気なのかと問い詰められた。……一人で戦うもなにも、ただ少し凝った自殺をしようとしていただけなのだが。
見舞いに訪れる人も送られてくる品も絶えない。
少年団は護衛と称して勝手に自宅に出入りするし、爺婆どもは暇さえあれば甲斐甲斐しく世話をしてこようとする。
ここまでされては、応えないわけにいかないだろう。
けれど、現実は甘くない。
マウスカーソルを動かして、開いていた各報道機関のニュース記事を開く。
見出しはどれも『特区』、『解体』、『五大マフィア』、『企業』、『癒着』、その単語ばかりが並んでいる。
議会もすでに動き出し、世論の八割以上が特区解体を支持している。
自分たちは、派手にやり過ぎたのだ。
五大マフィアや
中でも急先鋒は大統領だろう。
野党側から選出された彼は、前任者の強引な特区設立承認を、選挙の時から強く批判し、棄民救済を公約として掲げてきた。
支持率の上昇、喧しい現野党を黙らせる口実としても、特区解体は大統領にとって絶好の機会なのだ。
国は必ず動く。
もはや特区は、犯罪者の揺り籠たり得ない。あと十年ともたないだろう。
――イーリスの提案で、徴税の一部を緊急補償基金として積み立ててはいたが、無理だな。ぜんぜん足りない。
最大の難点は、住民の大半が棄民であり、市民権を喪失していることだった。
永住権を喪失してないのがまだ救いだが、特区住民というだけで犯罪者扱いの国内で、永住権のみの棄民の就職先は限られてくる。
下手すれば、犯罪関与の嫌疑をかけられるか、特区という国外扱い地域に数年居住したと見なされて永住権を剥奪される恐れもある。
基金などあっという間に吹き飛んでしまう。
大統領は棄民救済を訴えてはいるが、楽観はできない。与野党からも世論からも、棄民にも厳罰を望む声は少なくない。
最悪、五大マフィア諸共逮捕か、国外追放だ。
となれば国外への亡命という手段も考えられるが、ここで自分の存在がネックになってくる。
リストを喪失してもなお、一応生き証人として価値を置かれている(ロバーチ一家は本国ロシアへの交渉材料として自分を残しているようだ)ものの、反米国家が欲しいのは自分であって、棄民ではない。
よくて自分への人質、もしくはそれ以下の扱いになるだろう。
そもそも亡命という行為自体が、リスクの高い行為だ。高齢者も多い27番地では、最終手段としても取りたくない。
残る手段は裏社会に潜らせることだが、金が足らない。
先日のアッパー半島の件で底が尽きた。
完全に手詰まりだった。
何より、一番の懸念があった。USSAだ。
USSAがあの策に舵を切れば、いよいよこちらが打つ手は完全に失われる。
かといって、証拠が一切ないこちらに対策のしようもないのだが――。
視界に散る無数の塵に気付いて、ハウンドはノートパソコンを閉じた。その上に額をつけ、机の端から両腕を垂れ下げる。
アメリカは嫌いだ。だが27番地のことは嫌いじゃない。
そこに住む人々も、こんな自分を慕ってくれた人々にも、なるべく良い未来を残してやりたいと思っている。
それが彼らを散々利用して投げ捨てた、自分が為すべき最低限の義務だ。
それから、彼にも。
コンコン、と控えめな、けれど重量を感じさせるノックがした。
「俺だ。入るぞ」
顔を出したのは、ニコラスだった。
「さっきルカから死ぬほど疲れてるって言われたが、大丈夫か?」
「疲れてはないけど、死ぬほど腹が減ってるのは事実」
「なに食いたい?」
そう言いながら、ニコラスが本棚の絵本を、ラルフが描いてくれたそれを手に取った。
最近のニコラスは一日に一度は必ず絵本ご飯を作ってくれる。
当初は、生きる目的を見失っていたニコラスに生きる理由を与えるために、付き合っていた。
それがいつの間にか、彼の手料理を心待ちにしている自分がいる。
つくづく自分がガキなのだと思い知らされて意気消沈するが、ニコラスから漂うソワソワした上機嫌なニオイを嗅ぐと、溜息も飲みこまざるを得ない。
ニコラス・ウェッブという男は、ともかく誰かから頼られることが嬉しくて仕方がない人物なのだ。
ハウンドはずり、と机から面を上げ、ノロノロと引き出しからメモを取る。自分自身に不貞腐れた情けない顔は見せたくなかった。
『17』と書こうとして、ぐりぐりと塗り潰して消し、普通に書く。
――教わった癖、なかなか抜けないなぁ。
そんなことを思いながら、メモを差し出す。
受け取ったニコラスの反対の手には、毛布が抱えられていた。そして「寝ろ」とも「休め」とも言わず、問答無用で毛布を自分に巻きつけてくる。
「待って、待って。自分で歩けるってば」
「知ってる」
こいつ本当に左脚義足なのかといいたくなる足取りで自分を担ぐと、ニコラスは寝室に向かいベッドに自分をぺいっと放り投げた。
受身ぐらい取れるのは承知しているし、普通に下ろすと逃げられるのを知っているからだ。(あの時は逃げたのではなく、置き忘れた携帯を取りにいこうとしただけだったのに)
ご丁寧なことに、寝室ではストーブが焚かれ、ベッドは掛布団が足元へ半分折られた状態で待ち構えていた。
受身を取って着地すれば、置き上がる間もなく掛布団をかけられた。
ふぶぅっ、と抗議するもどこ吹く風、さらに追加の毛布も被せられてベッド脇に腰かけ、ポンポンと自分の肩辺りを叩き始めた。
何があろうと絶対に寝かしつけてやるという気概を嫌というほど感じる。
ハウンドは枕に顔をうずめながらじとっと睨んだ。
「そんな恨めしそうな顔したって駄目だからな。できるまで寝てろ」
「充分寝てるよ」
「トータル五時間の睡眠は睡眠じゃない」
よく言う。自分だって来たばかりの頃は一日一時間しか寝てなかったくせに。
ぶすっと顔を引っ込めて、毛布団子を決め込んでいると、頭上から苦笑する気配がした。
「寝られない辛さを知ってるから言ってんだよ。色々と思うことはあるだろうが、少し横になってろ」
自分が今やっていることを完全に見透かされた発言だった。
ハウンドはますます顔を出せなくなった。
察しがよすぎる助手というのも困りものだ。これではどちらが上司なのか分からない。
籠城の構えを崩さぬこちらに、ニコラスは小さく噴き出したらしい。
「携帯をいじるなよ」とだけ告げて扉に向かい、立ち止まって戻ってくると、踵を返して部屋を出ていった。
毛布の隙間から顔を出す。
サイドテーブルの上にラルフの絵本と、二冊の手帳があった。
一方は焼け焦げ、もう一方はすり切れていた。
すべての元凶。
『失われたリスト』が記されていた父のダイイングメッセージ入りのものと、そのダミーに使われた恩師の日誌。
父の日誌の方には、クリップで留められた用紙が十数枚挟まれていた。
育て親の遺品だからと、ニコラスが五大の調査が済んだ後、回収してきてくれたのだ。
『ケータに頼んで、日誌の方を翻訳してもらったんだ。こっちの手帳に挟んである。お前や、お前の育て親の昔話も書いてあるそうだ。時間がある時に読んでみたらどうだ?』
伝えた時と同じく、彼らしい直球過ぎる気遣いだった。
ハウンドは父の、焼け焦げた方の手帳に腕を伸ばした。
けれど指先は触れる寸前で止まり、掌の中にしまい込んで、そのまま毛布の中へ引っ込めた。
結局、再び手を伸ばして取ったのは絵本だった。
ベッドに俯せたまま、パラリとめくってみる。
大きな黒狼が、丹念に子狼を毛づくろいしている。子狼は幸せそうにそれを受け入れている。
子供思いの狼、良き父親。
けれど、本当に?
ハウンドは絵本を閉じ、毛布の中に潜り込んだ。両膝を曲げ抱え込んで、膝に顔をうずめる。
――果たしてあの人は、カーフィラは、本当に私の記憶通りの人なのだろうか。それとも……。
自分の湿った吐息を顔に浴びながら、ハウンドは固く目を閉じた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
明けましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
次の投稿日は1月19日(金)です。
2月初めに私事の大きな行事を控えておりますので、
2月2日(金)、2月9日(金)
と、お休みを頂きます。新年早々お休みを頂いて申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
また今月末に第1節の大幅変更を予定しております。詳細につきましては別途説明いたします。
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