収支および業務忌録:記録者 砥上藍奈

バイト内容:きさらぎ駅(仮称)での迷子案内


給金:日当、一人あたり三十万


参加者:架城日華

   :砥上藍奈



 備考:春原すのはら櫟木いちぎ曰く。

   :TAKASHIは生存したものの、春原組によって管理されているとのこと。



   :後日検証けんしょうを行ったが、実物のきさらぎ駅は、すでにうらぶれて使用できない有様だった。

   :今一度、霧のなかのきさらぎ駅へ向かう試みは、今のところすべて失敗している。


   :きさらぎ駅は、黄泉平坂よもつひらさかの類いではないかと、個人的には推測すいそくする。

   :黄泉平坂とは、この世とあの世を繋ぐ道である。

   :そうして黄泉の国、根之堅洲国ねのかたすくにには、日本最古の大怨霊だいおんりょうが封じられている。

   :名を、伊弉冉尊いざなみのみこと

   :この国を生んだ、大地母神だいちぼしん

   :別名を、黄泉津大神よもつおおかみ


   :伊弉冉尊は、伊弉諾尊いざなぎのみこととともにこの国を作ったあと、子を産んだ際に火傷を負い、命を落とす。

   :その後は黄泉の国で暮らしていたが、迎えにきた伊弉諾尊が彼女との約束を裏切ったため、人の世を祟る大怨霊、死の概念そのものとなった。


   :或いはあのトンネルの先より現れたものは、その怨念の一端だったのかもしれない。



   :図らずもニッカポッカの秘密を一つ知ることになった。

   :どうでもいいことだが、すこしばかり親近感を覚えてしまった。

   :……いや、あの洟垂はなた偽善者ぎぜんしゃが調子に乗りそうなので、ここはあとで黒塗りにする。


   :秘密である。

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