第11話 成長した証
私は、お姉様とともに廊下を歩いていました。
とりあえず、自由の身になれて、とてもいい気分です。やることを見つけろと言われましたが、それは気にしなことにします。私は、嫌な現実からは目をそらすことにしています。
その方が、精神衛生上いいんですよね。都合の悪いことは忘れる。それが、一番いいんです。
「シャルリナ、とりあえずよかったね」
「ええ、これでしばらくはゆっくりできそうです」
「うん、まあ、聖女の仕事も大変だったんだから、しばらくはゆっくり休めばいいと思うよ。そういうことなら、私もエルード様に言ってあげるよ」
「おお、それはありがたいですね」
お姉様の言葉に、私はとても嬉しくなりました。
彼女からお兄様に進言してもらえば、その意見はほぼ通ります。これで、しばらくは怠惰な生活ができそうです。
「あ、でも、引きこもってばかりでは駄目だよ。ちゃんと太陽の光を浴びないと、体に悪いよ」
「はあ、それじゃあ、窓でも開けておきますかね」
「……え?」
「え?」
私の言葉に、お姉様は目を丸くしていました。
何故、こんなに驚いているのでしょうか? 別に、変なことは言っていないと思うんですけど。
「シャルリナ……成長したんだね」
「え?」
「少し前のシャルリナなら、カーテンは閉めて過ごしていたよね。それが窓を開けられるようになったなんて……」
「え? なんですか? その感動した目は? お姉様の中の私の評価、どれだけ低いんですか?」
お姉様は、私の成長に感動しているようです。
でも、これくらいのことで感動してもらうのは複雑な気持ちです。それだけ、お姉様の私の評価は低かったということだからです。
他の人なら大丈夫なんですけど、お姉様からの評価が低いのは辛いんですよね。胸にグサッと刺さってきます。
「エルード様も、このことを聞いたら感動すると思うよ……」
「ええ……お兄様も?」
「それだけ、今の言葉はシャルリナが成長したって思えるものだったんだよ。きっと、シャルリナにはわからないとは思うけど……」
よくわかりませんが、お姉様やお兄様の中では、これは成長であるようです。
こういうことを言われると、むしろ頑張らないといけないと思います。もしかして、そういう認識がいけないんでしょうか?
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