第39話 交換条件は
エルード様は、シャルリナに運動するように促していた。
だが、いくら言っても彼女はやる気を出さないだろう。
無理やり連れ出すことはできるかもしれない。しかし、それではあまり意味がない気がする。
だから、彼女のやる気が出るようなことを言うべきだろう。そして、彼女のやる気に繋がることといえば、恐らくエルード様であるはずだ。
「シャルリナ、運動するといいことがあるよ?」
「む?」
「え? いいこと?」
そこで、私はあることを提案することにした。
この提案は、少しまずいかもしれない。ただ、言うだけならただなので、言ってみることにしたのだ。
「エルード様が、一発芸を見せてくれるよ?」
「え? 一発芸?」
「何……?」
私の言葉に、シャルリナは少し嬉しそうにした。
対照的にエルード様が表情を歪めたが、とりあえずそれは気にしない。
シャルリナは、基本的にエルード様を煽れる時に煽る。それをとても楽しみにしているような人間なのだ。
そのため、エルード様を煽れるような状況を与えることは彼女のやる気に繋がる。エルード様には少し申し訳ないが、これが一番だと思うのだ。
「その条件なら、私も少し運動したくなりますね……」
「そうでしょう?」
「ええ、お兄様の一発芸。とても見たいです」
私の予想通り、シャルリナはやる気を出していた。
これなら、彼女もきっと運動してくれるだろう。
だが、問題はエルード様である。先程から、とても怖い視線を向けてきているのだが、これを許してくれるのだろうか。
「ふん……仕方ない。それで、お前のやる気が出るというなら、この俺も一肌脱いでやる……」
「お、本当ですか?」
エルード様は表情を歪めながら、私の提案を受け入れてくれた。
それにより、シャルリナはとても笑顔になる。これは、彼女もやる気を出してくれたということだろう。
「だが、この俺にそんなことをさせるのだから、お前にもそれなりの覚悟をしてもらうぞ?」
「え? それなりの覚悟……? そんなことを言われると、やりたくなくなりますよ……」
エルード様は、とても鋭い視線をシャルリナに向けていた。それにより、彼女は怯んでしまう。
エルード様の心情を考えれば、そういうことを言いたくなるのもわかる。だが、せっかくやる気を出したのだから、あまり余計なことは言わないで欲しかった。これでは、シャルリナがやる気を失ってしまう。
「と、とりあえず、色々と話は置いておいて、早く外に出ましょう」
「む……まあ、いいか」
「はあ……まあ、こっちにも利益はありますし、とりあえず出ますか……」
私の言葉に、二人はゆっくりと頷いてくれた。
これで、とりあえず外に出られる。後は、流れでなんとかなるはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます