第21話 悲しければ
ゴガンダ様との話し合いを終えて、私はエルード様とともに部屋の外に来ていた。
彼が、後どれくらい生きられるかはわからない。だが、できることなら、もう少し頑張って欲しい。
ただ、純粋に、一秒でも長く生きて欲しかった。理屈などなく、私は彼に生きていて欲しいと思っているのだ。
「……大丈夫か?」
「え?」
「これを使え」
「あっ……」
部屋を出てから、エルード様は私にハンカチを渡してくれた。
涙を流している私の顔は、ひどいことになっている。拭うことすら放棄していたため、きっと大変なことになっているのだろう。
「ありがとうございます……」
「……」
私は、ハンカチで自分の涙を拭いていく。
だが、拭っても、また涙が流れてくる。私の涙腺は、少しおかしくなってしまっているようだ。
「……大丈夫ではないようだな」
「すみません……」
「謝る必要はない。それだけ、お前が悲しんでいるということだろう」
「はい……」
エルード様は、私が悲しんでいるから涙を流していると思っているらしい。
恐らく、それは正解だろう。最初はわからなかったが、今はゴガンダ様が死んでしまうという悲しみで泣いているはずだ。
この涙を止めることは、中々できないだろう。そんなにすぐに、感情を整理することはできないのである。
「この際、好きなだけ泣いた方がいいのかもしれないな……」
「好きなだけ……ですか?」
「ああ、その方が気も楽になるだろう」
「まあ、確かにそうですね……」
エルード様の言葉に、私は頷いた。
この際、たっぷりと泣いた方がいいのはその通りだろう。
だが、このまま泣くというのは、少し辛い。だから、少し手助けをしてもらいたい。
「あの……エルード様、胸を貸してもらえますか?」
「胸? そうか……わかった」
私の言葉の意図を、エルード様はすぐに汲んでくれた。察しが早くて、本当に助かる。
申し訳ないが、彼には私の感情を受け止めてもらう。一人で泣いていると、折れてしまうので、そうしてもらいたかったのだ。
「それじゃあ、失礼します」
「ああ……」
私の体は、エルード様の胸にしっかりと受け止められる。
彼の胸の中で、私はゆっくりと涙を流していく。
エルード様は、特に何も言わなかった。それが、とてもありがたい。私は何も考えず、彼の胸で泣いていいのだ。
「む……」
「え?」
そんな風にしていると、エルード様が少し気まずそうな声をあげた。
その声色から、何が起こったかは大体わかる。恐らく、誰かが来てしまったのだろう。
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