第15話 父の妻は

 私は、グルラド様からゴガンダ様の話を聞いていた。

 ゴガンダ様は、病で長くないため、私を探すことを頼んだらしい。


「その……一つ聞いてもいいですか?」

「何かね?」

「ゴガンダ様……私の父は、私の母とどういう関係だったのでしょうか?」

「……そのことか」


 そこで、私はグルラド様に対してその質問をしていた。

 母は、一体どうして公爵家の人間と出会い、関係を持ったのだろうか。その事実をまったく知らなかった私にとって、それはとても気になることである。


「私は、父から話を聞いている。だから、どうして出会ったのか、何故関係をもったのか、君の質問に答えることはできる」

「それなら……」

「だが、その上で、君には話したくないと言っておこう。君が聞くべき話ではないと、私は思うのだ」

「……そうですか」


 グルラド様の言葉に、私は少しだけ察することができた。

 母が何をしていたかは、もう聞くべきではないだろう。これ以上掘り下げても、どちらも気持ちのいい話ではない。

 もし、私が母のことを聞けるとしたら、ゴガンダ様からだけだろう。それ以外の人とその話は、するべきではないはずである。


「……さて、君にはこの後、父と会ってもらう」

「はい……そうなりますよね」


 そこで、グルラド様は話を切り替えてくれた。

 ゴガンダ様と私が会う。それは、当然の流れである。

 彼が私を探していたのだから、その対面は避けられない。私は、父親と真正面から向き合わなければならないのだ。


「ただ、すぐに父に会ってもらう訳ではない。その前に、二人会ってもらう人がいる」

「二人ですか?」

「ああ、一人は私の妻であるサリーハだ。彼女については、心配することはないだろう。君も、問題ないはずだ」

「ということは……」


 グルラド様の含みがある言葉に、私はあることを理解した。

 もう一人は、私にとってかなり緊張しなければならない人物なのだろう。


「もう一人は、私の母であるスレイナだ。当然、父の妻であり、君にとってはあまり気が進む相手ではないだろう」

「は、はい……」


 私にとって、とても厳しい人物。それは、間違いなくゴガンダ様の妻である。

 浮気相手の娘という立場上、その人と話すのはとても怖いのだ。

 エルード様は問題ないと言ってくれた。だが、怖いものは怖いのである。

 しかも、グルラド様の言葉も気になった。彼は、なんだかとても怖がっている気がするのだ。


「父上、あまり怖がらせないでください」

「む?」

「あなたにとっては、怖い母親かもしれませんが、彼女にそうとは限らないでしょう」

「そ、そうか……」


 そこで、エルード様がフォローを入れてきた。

 どうやら、先程の言葉にはグルラド様の主観が入っていたようである。

 よく考えてみれば、母親と祖母では評価は大きく違うだろう。だから、二人の間で相違があるのは当然である。

 つまり。スレイナ様がどのような人なのかはわからないということだ。私は、一体どうなってしまうのだろうか。

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