第13話 年の離れた兄

 私とエルード様は、ラーファン家の現当主であるグルラド様と対面していた。

 彼は、私の兄である。信じられないことだが、それは紛れもない事実なのだ。

 私は、グルラド様と対面してかなり緊張していた。彼が、私を歓迎してくれていることはわかっている。だが、それでもこの緊張は収まらないだろう。


「さて……まずは、少し重要な話をさせてもらいたい」

「じゅ、重要な話ですか……?」


 グルラド様は、とても重苦しい空気で私に話しかけてきた。

 ただでさえ緊張しているのに、重要な話などと言われると、さらに緊張してしまう。

 だが、私という複雑な立場にある人間がやって来て、重要な話になるのは当然のことである。だから、これは仕方ないことなのだろう。


「私のことは、お兄ちゃんと呼んでもらって構わない」

「え?」

「何?」


 グルラド様の言葉に、私もエルード様もとても驚いていた。

 一体、彼は何を言っているのだろうか。恐らく、エルード様もそう思ったはずである。


「……父上、一体何を言っているのですか?」

「いや、この場を和ませようと思って……」

「そうですか……おかしくなったかと思いましたよ」


 どうやら、グルラド様は冗談であんなことを言ったらしい。

 しかし、あまりに唐突なことだったので、私もエルード様もかなり動揺してしまった。なんというか、思っていたよりもお茶目な人なのだろうか。


「まあ、冗談は置いておいて、私は本当に君の緊張を和らげたいと思っているのだ」

「は、はい……」

「君は、このラーファン公爵家の一員だ。そんな君が、私と話す時に緊張する必要はない。もっと気楽に話してくれていいのだ」

「気楽に……ですか」


 グルラド様に気楽と言われたが、それは中々難しい。

 貴族の気楽に話すというのが、どういう風なのかわからないからだ。

 私は、平民として育ってきた。だから、貴族のことはほとんどわからない。ゲルビド子爵家に仕えていたが、それでもよく知らないのだ。


 私が気楽に話せた人といえば、今は亡き母である。だが、母と話すようにするのは、流石に違うだろう。

 平民と貴族の気楽に話すとは、意味が違うはずである。だから、どうすればいいかよくわからないのだ。


「えっと……とりあえず、まだ気楽に話すのは難しいので、少しずつ慣れていくということでいいですか?」

「ああ、それで構わない。ゆっくりと慣れていってくれ」


 私の言葉に、グルラド様は笑顔を向けてくれた。

 これから、私は貴族として暮らしていく。その中で、貴族としての振る舞いを学んでいけばいいだろう。

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