ヒストリー5 つづき

片付けも終わり、全員が着席した。

ジンオウも最後に椅子に座り、話し始める。


ジンオウ『じゃあ会議を始めるか!

まずは、ガキ共、今日も1日よく頑張った!』


全員の視線が、ジンオウに注がれる。


ジンオウ『そして、ノン!結果報告は

受けてるぜ!任務達成ご苦労!

やるじゃねーか!連勝中だな!ダリ•アンソロージ。なかなかな大物だったが、これで闇商売の動きも、大きく鈍るだろーな。』


ノンは少し照れかけたが、その表情をなんとか抑えた。


ジンオウ『お前らの活躍で、少しずつ、一歩一歩だが、ベルングは動く事になる。お前らは優秀だからな。その内、世界はひっくり返るぜ。世界中の〝悪〟を殲滅〔せんめつ〕してやるんだよ。』


アハト『世界をひっくり返してみせます!』


ジンオウ『おうよ!お前なら出来るぜアハト。』


レベン『先生、質問っス。』


ジンオウ『なんだ?レベン?』


レベン『世界をひっくり返すんだったらもっと上の大物を標的にしたほうがいいんじゃないっスか?悪い奴限定ッスけど。』


ジンオウ『もちろん、そうだぞレベン。しかしな、お前達の絶対に達成しないといけない本当の任務はなにか、知ってるな?レベン?』


レベン『もちろんっスよ。』


ジンオウ『言ってみろ。』


レベン『どんな状況、どんなに格好悪くても生きて帰ってこい。敵に背を向けてでも生きて帰ってこい・・っスよね?』


ジンオウ『そうだ。任務に直面して、無理だと思うなら帰ってこい。英雄になるな。泣いて、鼻垂らしながらでも、いいから生きて帰って来る事。男ってのは、失敗しても、何度も立ち上がって、挑戦するのが本当の男なんだぜ。意地とプライドと誇りの為の死なんざ、英雄でもなんでもねぇ。』


ジンオウが自分に酔いながら語る。


セイス『・・この話し、何回目?』


ディエス『50回くらい聞いたかな・・』


ノン『俺は100回くらいかな。』


ライブ『はわぁ・・眠い。』


ジンオウ『ごほんっまぁとりあえずだ、レベンの言う通りこれから先は、上級戦士や、騎士団、他にも強い奴は山ほどいる。さらに、〝エブマスター〟や

〝色彩操者〟〔しきさいそうしゃ〕

〝覚醒者〟の命も狙わないと、いけねぇかも

しれねぇ。その他にも、〝派生〟〔はせい〕された〝能力者〟もいるぞ。お前らのレベルは、まだまだ、これに比べると恐竜と蟻くらいの差があるからな。つまりはだ、バカみてーに、突っ走ったら一瞬であの世行きだ。』


ライブ『〝色彩〟かぁ・・ 完全マスター

するまでは地獄が続くだろーな。 ・・眠い。』


ジンオウ『〝力感シリーズ〟も使えりゃ、もっと心強いが、あれだけは天性のもんだからな。』


フィーア『〝力感シリーズ〟って、確か〝選ばれし者〟だけが扱える特殊能力だよね?』


ジンオウ『そうだ。人には〝五感〟ってもんが

備〔そな〕わっていて、〝力感シリーズ〟

ってのは、その先にある人智を超越〔ちょうえつ〕

した能力だ。伝説じゃ古代人は、当たり前の

ように、この能力を使えたようだが、現代人は

その能力を失ってしまった、とまで言われている。

まぁ、努力や根性で身につくもんでもねぇから

お前らは、あんま考えなくてもいい。』


レベン『深くて、神秘的な話しっスね。』


ジンオウ『あともうひとつ、言っておく事がある。』


みんなを見つめる、ジンオウの目が変わった。


ジンオウ『〝カラー〟には特に気をつけろ。』


レベン『〝カラー〟?』


アハト『食べ物の名前ですか?』


ジンオウ『任務中に噂くらいは聞いた事がある奴も

いると思うが、〝カラー〟ってのは、いわゆる、ひとつのチームを作ってる奴らの事だ。』


ディエス『チーム?』


ジンオウ『ああ。例えば、5人チームや7人、8人、

10人チームもいる。チームそれぞれに、エンブレム

があり、チームそれぞれが同じ色の服装〝ユニ〟で

構成されてるんだ。』


アハト『へぇー。』


レベン『なんかカッコいいッスね。』


フィーア『〝カラー〟のなにが、気をつけないと

いけないの?』


セイス『確かに。騎士団や、戦士のほうが、よほど怖い気がしますが。』


ジンオウ『騎士団や、戦士団体、その他の者は、大体は〝ベルング〟の直属の部隊や、公認された団体、委託団体もいる。〝ベルング〟の下にいるって事は、いくら力があったとしても、おおっぴらに、国民に対して勝手に殺しや略奪、街の制圧なんてできねー。』


ジンオウは水を飲んだ。


ジンオウ『ただ〝カラー〟はここ10年くらい前から

現れ、若者を中心にして膨れ上がった〝ベルング〟

非公認の組織だ。〝カラー〟同士も縄張り争いで、

敵対してる事もあるが国民への殺戮や、

略奪も増えてやがるんだよ。』


〝カラー〟の誕生は、〝ベルング〟に不満を持った

若者が反乱を起こして、各地に広がっていった。

さらに〝ルーシーの乱〟をきっかけに、神聖なる宗教をも巻き込み、〝ベルング〟ですらも簡単には抑えられない組織へと変貌していった。


フィーア『ひどい・・』


アハト『しかし、〝ベルング〟がいます!〝ベルング〟が動けば抑え込む事が、できるんじゃないでしょうか?』


ライブ『〝ベルング王国〟強いもんね。』


ベルングとは、分裂していた国同士の長い争いの果てに勝利し、この世界を統一した。そして初代聖王が、国号を〝ベルング〟としたのだ。つまりは世界全体が〝ベルング王国〟という事になる。


ジンオウ『それがなぁ・・〝カラー〟も、いつの時期からか強くなっちまったんだよ。〝色彩操者〟や〝覚醒者〟が現れたり、〝力感シリーズ〟を扱える奴もいるって話しだ。〝ベルング〟もなかなか手が出せなくなっちまったらしい。』


ジンオウが、また水を飲んだ。


ジンオウ『まぁ、なんだ、〝カラー〟つまりチームの強さはピンキリだが世界のどこにでも散らばってる。もし、これから先、チームに出会う事があっても出来るだけ、関わるんじゃねえ。』


全員が頷いた。


セイス『その、これから先ですが、〝カラー〟が

標的になる事はあるのですか?』


ジンオウ『今はねぇな。今はねぇとゆうかお前らが、俺が認めるくらい強くならねぇと任務はださねぇよ。』


ノン『ゼロじゃないって事か・・』


ジンオウ『安心しろー、今は100億%ない。』


ノン『なんかムカつく・・』


フィーア『できれば戦いたくないね。』


アハト『俺は任務を受けた以上は誰とでも戦う!』


ディエス『先生!セロ兄、アイン兄、ヴァン兄、ドレス姉達、遠征特別任務に行ってるけど、元気にしてるの?』


ディエスが、その話しを持ち出すと

全員が話しを止めてジンオウの方を向いた。


ジンオウ『あったりめーだろう。

あの4人は、優等生だぞ。あと半年くらいで

任務達成して、帰ってきやがるさ。』


フィーア『もう1年前だもんね。4人の、お兄ちゃん、お姉ちゃんが、遠征特別任務に行ったの。』


レベン『椅子と席も、いつでも帰ってこれるように空けてるッスけどねー。』


ジンオウ『あの4人なら、心配するなって。つねに、連絡網を張って、連絡を取り合ってるんだ。そうだな、じゃあ次の会議は、4人が帰ってきた時の

お祝い会でも考えるか!』


レベン『いいっスね。』


フィーア『あたし、料理したーい。』


ライブ『早く会いたいなぁ。』


アハト『俺が、どれだけ成長したか見てもらいたい!』


ジンオウ『待て待て、 お祝い会の詳しい内容は次の会議だぞ。とりあえず落ち着け。はい深呼吸して。』


深呼吸をする一同。


ジンオウ『よし!深呼吸終わり。じゃあ、話すぞ。

新しい任務を持ってきた。』


フィーア『うん。』


ライブ『どんな任務?眠たくないのがいい。』


アハト『これは楽しみです。』


レベン『近場がいいッス。』


セイス『はい。』


ノン『・・・』


ディエス『任務!?やる!やる!』


ジンオウ『ノン、今回は休んどけ。新しい任務執行人はライブ、フィーア、アハト、セイス、レベンだ。』


ディエス『え?先生俺の名前忘れてるよ?』


ジンオウ『ディエスは、〝色彩〟の訓練をするぞ。

自分を守れる力を、まず身につけねぇとな。』


ディエス(なんで?俺だって任務したいのになんで?)


ディエスが俯〔うつむ〕き、握り拳を作った。

ノンとセイスが、そんなディエスを見つめる。


ジンオウ『んじゃあ、任務の詳細は・・』


ジンオウが5人に、任務内容を話し始めた。


ディエス(あ〜あ、やっぱ俺って結局なんの役にも

立たないんだなぁ、なんかもう自分が嫌いだ。)


【ガチャッ】


突然ディエスがドアを開けて、外に走り出した。


フィーア『ディエス!』


レベン『ションベンっスか?』


ジンオウ『ふぅ・・やっぱ、行っちまったか。

仕方ねえ、ちょっとディエスと話してくるわ。』


ジンオウが、ドアに向かって歩き出した。


ノン『ジンオウ。』


ジンオウ『ん?』


ノン『俺が、ディエスと話してくる。今ジンオウが

行っても、ディエスも本音で話せないと思うから。』


ジンオウ『・・・わかった。

ノンに任せよう。その後に俺がディエスと話すか。』


ノンが頷き、家族亭の外に出て、ディエスを探しに行った。


つづく。

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