ヒストリー3 〜フードの少年現る!謎に包まれたその行動〜




東エリア 4番地区 港町ロストック


《フードの少年視点》


街中を、裸足でふらふら歩く少年。少年は薄汚れたフードを被り、暑さを凌〔しの〕いでいる。


少年『はぁ、はぁ』


太陽の日差しが容赦なく照りつける。


少年『だ、誰か食べ物をくれ・・』


少年が呟くように喋っている。


街人『なんだコイツ。』


街人B『きったねぇガキだな!こっちに来るんじゃねーよ!』


街の人間は、少年を嫌がり、少年を避けながら歩いている。  


少年『食べ物がダメなら、み、水を。』


前から歩いてくる男と女、恋人同士のようだ。

会話をしているので、前の少年には気づいていない。


【ドンっ】


少年と男の肩が、ぶつかり少年は倒れた。


男『ん?なんだ?』


女『なに、コイツ、ぶつかってきた。』


少年『うぅ・・』


男『うわっ、汚ねー!前見て歩けよ!クソガキっ。』


鼻をつまみながら、女は喋る。


女『トム、せっかくお洒落してきたのに服が汚れてるよ?』


トム『あークソ!今から大事なパーティーなんだぞ!やってくれたなガキ!』


【ドスっっ】


少年『うっ』


トムが、うつ伏せに倒れた少年の横腹を蹴った。


野次馬も、集まってきた。


女『もういこうよ。このままじゃ臭い匂いまで、

うつっちゃうわ。ドルトン会場にも間に合わないわよ。』


トム『ちっ、早く野垂れ死ね!ペっ』


少年に唾を吐き、その場を立ち去った。


街人C『あーぁ、また野垂れ死にか。この7日間で、

何人目だよ。』


街人D『まだ子供だわ。可愛いそうに。』


【ガチャ】


少年が倒れている、前の店から男が出てきた。


店の男『おいおい、よりによって店の前で、

死なないでくれよ。商売に、なりゃしねぇ。』


男は少年の足を掴み、引き摺り、歩きだした。


街人A『ダリ、〝捨て場の穴〟に行くのか?』


ダリ『そうだ。このままにしてたら客も来ねーしな。』


街人A『まだ生きてるかもしれないぞ。』


〝捨て場の穴〟とは、野垂れ死んだ者や

身寄りのない遺体を捨てに行く街の役人公認の場所だ。〝捨て場の穴〟は最終的に海に繋がっている。



ダリ『関係ねーよ。ほっといても死ぬだけだ。』


店から10分程行った場所に〝捨て場の穴〟がある。

ダリは少年を引き摺り、ぶつぶつ言いながら、

その〝捨て場の穴〟に着いた。周りに人はいない。


ダリ『ふぅ、無駄な労力使わせんなよ。』


ダリは少年を、抱えて〝捨て場の穴〟投げ込もうとした。


次の瞬間、少年が呟いた。


少年『投げ込む相手、間違ってんじゃね?』


フードから覗く、少年の目がダリを睨みつける。


ダリ『う、うわっ』


ダリは慌てて、少年を離した。

着地した少年。尻餅をつくダリ。


少年『あーぁ、無理矢理引き摺るからズボンが破けたじゃねーか。手作りなんだぞコレ。』


手で服とズボンの埃を払う少年。

深く被ったフードのせいで少年の顔は見えない。


ダリ『なんで、生きてんだ・・生きてたとしても、

死にかけだったはずだ。』


少年『勝手に殺すな!んで勝手に死にかけにすんな!芝居だよバカ。』


ダリ『芝居?なんで、そんな事する必要があるんだ!』


少年『なんでって・・お前に用があるからだよ。

名演技だったろ?』


ダリ『・・ナメてんのか?』


ダリ(こいつ、さっきは、いきなり起きやがったから驚いたが、よく考えたらただのガキじゃねーか。

年は12歳、3歳ってとこか。大人相手に何もできやしねぇだろ。ここで殺して、本当に穴に捨ててやるぜ。)


ダリ『年上に対する口の聞き方、ママに教えてもらわなかったのか?』


じわりじわり、少年に近づくダリ。


少年『ダリ・アンソロージ。38歳』


ダリ『?』


ダリが足を止めた。


少年『メシア教徒。子供は2人。上は7歳、名前は

カルロ・アンソロージ。男の子。下は4歳の女の子、名前はエンヤ・アンソロージ。

妻のレイクは病気で寝たきり・・だったっけな。』


ダリの表情が変わった。


ダリ『なんでお前が、そんな事知ってる?』


少年『だから言ってんじゃん!おっさんに用があるんだって。だから、おっさんの情報なんて全部ここに入ってんだよ。』


少年が自分の頭を指でつついた。


ダリ(なんだ、コイツは・・何が目的だ、、

俺のどこまでを知ってる?、、それとも、

どっかの諜報部の差し金か?いや、

そんなわけねぇまだガキだ。) 


ダリ『で、用ってのはなんだ?』


ダリ(どっちにしても、殺すしかなさそうだ。

どこまで知ってるかは、わからねぇが

街の連中や家族に関われたら、厄介だ。)


少年『用っていうか、殺しにきた。』


ダリ『?、、、俺を殺すだと?』


少年『うん。』


ダリ『笑わせるなよ・・そんな小さい体で、どーやって俺を殺すんだ?あ?』


少年『首切りゃあ、簡単に死ぬじゃん。』


ダリ『へっ、やってみろ。』


少年は腰に隠してあった剣を抜いた。


少年『オッサンも右側の腰に、いつも護身用の

短刀持ってるだろ?早く出せば?』


ダリの表情が青に変わる。


ダリ(!?短刀の事まで・・

それにあの剣は子供が持つような物じゃねぇ。

もしかして小さい頃から訓練に訓練を重ねた、

どっかの暗殺部隊か!?それとも、ただの脅しか、、まさか、、〝覚醒者〟じゃねーよな。)


ダリも短刀を抜いて、身構えた。


少年は構えもしない。


【ゴクっ】


生唾を呑むダリ。


ダリ『なんで俺の命を狙う?俺はただの宝石屋の店長だ。命を狙われる理由なんかねぇ。』


少年『それは表向きの顔じゃん。

裏の顔は、ベラドンナの花の密輸王、

武器商人、奴隷売買、あげくの果ては

ベラドンナの実を、罪のない人に食べさせては、

暗殺をさせる、、マジ鬼だなお前は。生きてる価値なし。』


ベラドンナの花には、黒い実がありそれを食べると、幻覚を見るという。


ダリは短刀持ちながら、震えている。


ダリ『誰の依頼で殺しにきた?パブロか?それともエリベルトか?』


少年『誰だよ、そいつら知らねーわ。』


少年が一歩づつ歩きだした。


少年『って事で、殺される理由ありありだな。』


ダリ『ま、待て!金ならある!』


少年『ぷっ でたよ、金持ちあるある。』


2人の距離が縮まる。

少年が剣を頭上にかざした。


 ダリ『ひっ』


少年『あっ、そうだ。最後に、神メシアに

祈らせてやるよ。』


ダリは震えながら両膝を地面につき祈りはじめた。


ダリ『神メ、メシアよ、助けて下さい、助けて下さい。』


少年『・・・雑な、祈りだな。』


ダリ『どうか、この少年に天罰を・・!』


少年『よく言うぜ。』


その瞬間、ダリの表情が獣に変わり短刀を、少年に振りかざした。


少年は軽く短刀を、かわしてダリの首に、剣をあてた。


少年『芸のねぇオッサンだな。』


ダリ『あぁぁぁ』


絶望感のため息のような声が、ダリの口から漏れる。


言葉と同時に、剣を振り払った。ダリの首が飛び、

首のないダリの体もゆっくりと地面に倒れていった。


つづく。

















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る