僕は2位になる! (表)
いつでもチラシや広告は出回っているものだ。
ふと、偶然目にしただけだった。内容は夏休みにはよくあるような能力者同士の大会でバトロワ形式という本来僕が絶対に興味を持たないようなものである。
しかし、今回はわけが違った。僕は昔から追っかけているアニメがある。グッズも欠かさず収集して大切に保管していた。
僕が喉から手が出るほど欲しい、そのアニメの限定版フィギュアが大会の商品一覧にあったのだ。
欲しい。とにかく欲しい。だが僕が大会なんて勝てるわけがないしそもそも無能力者だから出場なんてできるのか…?
一応端っこに『能力の有無、ランクは問いません』と書いているから大丈夫だろう。後はうちの学校と同じ方式だから怪我も心配ない。
今更気づいたがかなり規模の大きい大会みたいだ。ということは記念受験的なノリで参加する人もいるんじゃないか…? 出てみるだけ出てみようかな。
制限時間は1時間でバトロワ形式。基本的により長い間生き残っていた人に時間に応じてポイントが与えられる。それだけではなく他の人を倒したり、配置されたロボットを倒すなどすることによって獲得できるらしい。
限定フィギュアは2位の副賞なのか……無理ゲーな気がする。でも参加申し込みだけでもしとくか。
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いきなり時間は飛んで大会当日。
無能力者でも参加できたようだ。受付ですごい驚かれたけど。
今、僕は選手控え室にいる。そこそこの広さがありびっしりと人が入っている状況だ。
周りを見渡すと屈強な男たちやそれに比べると華奢でとても戦いが強いように見えない女の子、隅っこでぶつぶつ言っている人もいる。
というか何人いるんだこれ…まだこれで全員じゃなく一部のはずなんだけど……
一人ずつフィールドの所定の位置に案内されていく。僕の番もきたようで声をかけられ、森の中へと連れてこられた。
同時に地図を渡されポイントをゲットできる場所など情報がかなり乗っていた。まず大半が僕には無理そうなものだが。
3! 2! 1!
スタート!
急にカウントダウンが始まる。どうやら大会がスタートしたようだ。
僕ができることは目立たないように移動しながら少しでも多くのポイントをゲットして長く生き残るだけだ。
まず『パズルを解くとポイントをゲット』という場所に向けて移動することにする。他の人がいたら基本的には撤退するけど。
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はーい。迷子になりましたー。詰みましたー。
何でこんなことになるんだろう毎回……別に僕方向音痴じゃないんだけどな……
今は石の壁沿いにひたすら歩いている。現在地は全く分からないけど。
すると他に何か触れる。見てみるとにボタンがついている石盤?のようなものがあった。ボタンには0〜9までの数字が振ってあり押せそうだ。おそらくパスワードのようなものだろう。
(………………押してみるか?)
どうせ迷子なんだし思い出に残ることでもしたほうがいいだろう。そう開き直り指をボタンに向ける。
そしてボタンを連打しまくる。20回ほど押したところでやめてみるともちろん何も起こらない。
(まぁそりゃそうか…ペナルティでもあるよりはマシか……ってえ?)
ゴゴゴ……
急に石の壁に割れ目が入ったと思うと扉が現れる。扉は重々しい音を立てながら開き、中には道が続いていた。
(入ってみるか)
中に入ってみるとひんやりと冷たい空気が肌に触れる。道をある程度進んでみると開けた場所にでた。
ポツンと台の上に透き通った緑の玉が置いてある。大きさはビー玉ぐらいだ。ポイントと交換できるアイテムかな? 少しは2位に近づいただろう。
玉を取ったらすぐに外に出るとーー
「ニンゲン、ハッケン。 ハイジョ、ハイジョ。」
配置されたロボットがいた。おそらく一番弱いタイプのロボットだ。
(逃げるか? いや……)
戦ってみよう。装備をしている僕ならなんとか勝てるレベルの敵だ。
確かにポイント的には大したものが得られるわけじゃない、でも少しは確実に目標に近づくことができる。それにいつも僕は逃げてばかりだ。命の危険があるからしょうがないとはいえ、こんな時ぐらいは立ち向かわかないと。
盾を出して構え、相手を見据える。
戦いの火蓋は切って落とされた。
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あの後辛勝ながらなんとかロボットに勝つことができた。さらに追加で少し強めのロボットと盾一発でやられためちゃくちゃ弱いロボットも倒し、最後まで生き残った。
ぶっちゃけ生き残れたのは運が良かっただけだ。あまり見つかることもなく、見つかったら逃げ回っていたらなんとかなった。
そしてついに順位発表だ。
2位はまず無理だろう。でも自分なりに全力を尽くして少しは近づけたと信じたい。何かの間違いで10位以内とかに入ってないかなぁ。
どんどん順位が発表されていく、10位に入っても僕の名前は呼ばれることはない。ついに2位の発表となった。
「2位の発表です! 第2位は 315ptの 上崎 光さんです!」
「ダメだったか……まぁしょうがないか」
そんなことを言いながら虚しいような悔しいような気持ちが溢れ出してしまう。表彰者が壇上に上がり賞品を受け取るのを無言で見つめ、唇を強く噛む。
そして1位の発表となる。
「ついに1位の発表です! 第1位はーー 10204ptの 斎藤 武さんです!」
「はい?」
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