生徒会長との邂逅 (裏)

聖内学園の生徒会長 藤桜 鈴は生徒会の仕事がひと段落し、ベンチで一休みしていた


(あら、あれは…)


すると、偶然噂の転校生の斎藤武を見かけたため話しかけに行った


「急に失礼します、斎藤武さんですか?」

 

「あぁ、はい、そうですけど、僕に何か用ですか?」

 

「私、この学校で生徒会長を務めている 藤桜 鈴と申します、斎藤さんの噂は私の耳にも届いていたので、話しかけさせていただいたんですが…、迷惑でしたか?」

 

「生徒会長⁉︎あ、いえ迷惑なんてとんでもないです!」

 

「そうですか、それなら良かったです」


「それと、この前は大変だったみたいですね、生徒会長としても謝罪させてもらいます」

 

「い、い、いえ!全然大丈夫です!」


「それなら、これから改めてよろしくお願いします」


そうして、自然な流れで手を出し、握手を求める

一見それは、友好の証としての握手に見えるだろう

しかし、それは違う

彼女はある目的のため握手をするよう自然に誘導したのだ



$ $ $ $ $


彼女、藤桜 鈴は世にも珍しいSランク能力者で9つの能力を持つ複合能力者ーーーではない


彼女は誰にも自分の本当の能力を見せたことがない、見た、もしくは使った相手は全員既にこの世にいないからだ


彼女の本当の能力は「能力を奪う」能力だ


条件は相手の体に触れること、奪った能力は相手は使えなくなり、自分はその能力を使えるようになる

奪って使うことが出来る能力は10個までだが、奪った能力を捨て、空きを作り、新しい能力を奪うこともできる


彼女の恐ろしい所はこれを隠しきっている所だ、ただでさえSランク能力者の力を持ってるのに、完全な初見殺しの能力をバレずに持っている


彼女と闘い、体を触れられずに倒すことが出来る人などこの世にほとんど居ないのにも関わらず、知らないとなれば尚更だ


武と握手したのは能力を奪い、もし今持っているものより強力だった場合は自分のものとするためだ


武という不穏分子を排除することもできるので彼女としても好都合だった



$ $ $ $ $



「はい、よろしくお願いします」


相手が自分の手を取る、相手の体に自分が触れた瞬間能力を発動させる

だがーーー

 

「つっ!」


(能力が使えない…!?)


当たり前なことに能力なんて持っていない武には能力は使えない

予想外のことに驚きを隠しきれず、声に出てしまう


「ど、どうしましたか?」


その声には他の感情は含まれておらず、純粋に自分のことを心配していた


「いえ、なんでもないです、それじゃあ生徒会の仕事があるので、私は行きますね」

 

「あ、はい、わかりました」

 

「では」


表情を取り繕い、焦りながらもこの場を去る



誰もいない、静寂が包む生徒会室の中に入り、自分の席に座り込む


(どういうこと…?)


能力を持っている限りは絶対に防げないバズなのに…

「能力を無効化する」能力でも持っているの?いや、彼には能力自体は効くことは確認されている

もし、任意で発動するんだとしたら彼は私の能力を知っているか勘づいた事になる


(まさか無能力者…?いやそんなことは関係ない)


彼女藤桜 鈴は全ての人間のことを見下している

幼少期、名門の生まれではあったが周りには媚びる人間や親の威光で偉そうにしている人間しかいなかった為、天才的な頭脳を持っていた彼女は無意識のうちに人を見下すようになった


彼女が誰よりも早く「能力を奪う」能力を持っていることを自覚し、その強力さを知ったことがそれに拍車をかけた


誰も自分に敵わない、その事実がよりその考えを強固なものとした

そして、彼女は誰にもそのことを気づかせなかった


そんな彼女にとって今回の出来事は自分の価値観を揺るがすのに十分な衝撃を与えた


初めての正面から戦っても勝てるかわからない相手、初めて自分と対等以上の相手を見つけたのと同時に、彼女は他人に興味を持った


「へぇ彼、面白そうじゃない、フフッ」


初めて他人に興味を抱いた彼女が何をするのかーー


「フフフッ、アハハハハッ!」


辺りに狂ったような笑い声が響く…





 



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